ひつじ書房 近現代日本語における外来語の二層の受容 石暘暘著 近現代日本語における外来語の二層の受容 石暘暘著
2024年6月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第206巻

近現代日本語における外来語の二層の受容

石暘暘著

A5判上製函入 定価7,400円+税 296頁

ISBN978-4-8234-1242-4

ひつじ書房

The Adoption of Abstract Loanwords in Modern and Contemporary Japanese: A Two-layer Adoption
Yangyang Shi



【内容】
本書は、近現代日本語の外来語、特に抽象的な外来語の受容プロセスを探求するものである。1960・70年代前後の、既に借用されていたにもかかわらず、あらためて原語から借用しなおす「再借用」という現象を解明することで、日本語の外来語受容の内実である二層性を明確にする。これまでには見られなかった視点で日本語語彙史・外来語史を精緻化し、言語変容と社会の複雑な関係性を深く探求する一冊。


【目次】
はしがき

序章 外来語史研究における課題
1. 研究背景
1.1 日本語語彙史における語種の問題
1.2 借用語史における外来語史区分の現状
2. 先行研究
2.1 量的な側面についての研究
2.1.1 語種の一種としての外来語の計量調査
2.1.2 外来語の変化に着目した計量調査
2.2 質的な側面についての研究
3. 問題の所在
4. 研究の目的と方法
4.1 研究の目的
4.2 調査方法
5. 本書の構成

第1章 近現代における外来語「センス」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における「センス」の変遷
3.1 日本語への受容初期(20世紀初頭–1930年代末)
3.2 変化の開始(1940年代初–1960年代半ば)
3.2.1 「優れたさま」という意味の出現
3.2.2 各意味の使用分野
3.3 変化の進行(1960年代半ば–1970年代末)
3.3.1 複合語「ハイセンス」の登場
3.3.2 「遂行する能力」という意味の登場
3.3.3 各意味の使用分野
3.4 変化の安定期(1980年代以降)
4. 英語 “sense” の意味
5. 外来語「センス」の変遷プロセス
5.1 意味の日本語化
5.2 使用分野の日本語化
6. おわりに

第2章 近現代における外来語「システム」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における「システム」の変遷
3.1 日本語への受容初期(1870年代半ば–1940年代末)
3.2 受容の進行(1940年代末–1960年代初)
3.2.1 前期の意味の定着進行
3.2.2 分野拡張の結果―意味④の登場
3.3 変化の開始(1960年代初–1970年代末)
3.3.1 意味変化の発生―意味⑤の登場
3.3.2 意味④の一般化
3.4 変化の進行(1970年代末以降)
4. 英語 “system” の意味
5. 外来語「システム」の変遷プロセス
5.1 専門用語としての借用
5.2 日本語化の発生 「システム」の一般化
5.3 日本語化の進行
6. おわりに

第3章 近現代における外来語「ポイント」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における「ポイント」の変遷
3.1 日本への受容初期(1880年代半ば–1950年代半ば)
3.1.1 受容初期の前期(1880年代半ば–1920年代初)
3.1.2 受容初期の後期(1920年代半ば–1950年代半ば)
3.2 受容の進行(1950年代半ば–1980 年代末)
3.2.1 抽象的な意味の急増
3.2.2 各意味の使用分野
3.3 変化の開始(1990年代以降)
4. 英語“point” の意味
5. 外来語「ポイント」の受容・変容プロセス
6. おわりに

第4章 近現代における外来語「イメージ」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における「イメージ」の変遷
3.1 日本語への受容初期(1910年代初–1950年代末)
3.2 受容の進行(1960年代)
3.2.1 抽象的な意味の急増
3.2.2 各意味の使用分野
3.3 変化の開始(1970年代初–1980年代末)
3.4 変化の進行(1990 年代以降)
4. 英語 “image” の意味
5. 外来語「イメージ」の受容・変容プロセス
5.1 日本語「イメージ」の各意味と原語の関係
5.2 外来語「イメージ」の受容と変容のプロセス
6. おわりに

第5章 近現代における外来語「パターン」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における「パターン」の変遷
3.1 日本語への受容初期(1930年代初–1960年代末)
3.2 受容の進行(1970年代)
3.2.1 抽象的な意味の急増
3.2.2 各意味の使用分野
3.3 変化の開始(1980年代)
4. 英語“pattern” の意味
5. 外来語「パターン」の受容・変容プロセス
6. 抽象的な外来語の再借用
7. おわりに

第6章 近現代における外来語「モード」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における「モード」の変遷
3.1 日本語への受容初期(1930年代–1960年代)
3.2 受容の進行(1970年代)
3.3 変化の開始(1990年代)
3.4 変化の進行(2000年代)
4. 原語 “mode” の意味
4.1 仏語 “mode” の意味
4.2 英語 “mode” の意味
5. 外来語「モード」の受容・変容プロセス
5.1 仏語・英語から専門用語としての借用
5.2 英語から新しい意味の借用
5.3 日本語内で分野の拡張
5.4 意味の日本語化
6. おわりに

第7章 近現代における外来語「インプット」の変遷
1. はじめに
2. 先行研究
3. 日本語における外来語「インプット」の変遷
3.1 日本語への受容初期(1970年代半ば–1980年代半ば)
3.2 変化の開始(1980年代半ば–1990年代半ば)
3.3 変化の進行(1990年代半ば以降)
4. 英語 “input” の意味
5. 外来語「インプット」の受容・変容プロセス
5.1 専門用語としての借用
5.2 日本語化の発生
6. 「インプット」における受容現象 一般化の挫折
7. おわりに

第8章 近現代における外来語受容の歴史
1. はじめに
2. 近現代日本語における外来語受容の二層構造
2.1 日本語内で自然に増加するタイプ
2.2 原語からの再借用で急増するタイプ
2.3 近現代における外来語受容の二層構造
2.4 二層の受容が起こる社会要因
2.4.1 近代以前の外来語受容の状況
2.4.2 近代における外来語受容の状況
2.4.3 戦後の外来語受容の状況
3. 受容の転換期 「再借用」現象の位置づけ
4. 近現代日本語における外来語変容の発生 日本語化
5. 日本語語彙史上の新しい画期 1960・70 年代
5.1 従来の外来語史の時代区分
5.2 本書での外来語史の時代区分
5.3 日本語語彙史の画期としての1960・70 年代

終章 本書のまとめと課題
1. 本書がめざしたもの
2. 本書のまとめ
2.1 個別の抽象的な外来語の受容・増加過程
2.1.1 近現代における外来語「センス」の変遷
2.1.2 近現代における外来語「システム」の変遷
2.1.3 近現代における外来語「ポイント」の変遷
2.1.4 近現代における外来語「イメージ」の変遷
2.1.5 近現代における外来語「パターン」の変遷
2.1.6 近現代における外来語「モード」の変遷
2.1.7 近現代における外来語「インプット」の変遷
2.2 近現代における外来語受容の歴史
2.2.1 近現代日本語における外来語受容の二層構造
2.2.2 二層の受容が起こる社会要因
2.3 受容の転換期 「再借用」現象の位置づけ
2.4 近現代日本語における外来語変容の発生 日本語化
2.5 日本語語彙史上の新しい画期 1960・70 年代
3. 本書の意義
3.1 外来語の受容の仕組みの解明
3.2 日本語語彙史にある新しい画期の提案
3.3 社会言語学の解釈と語史研究の関連性の提示
4. 今後の課題


参考文献
調査資料
既発表論文との関係
後記
刊行によせて 大木一夫
索引


◎著者紹介
石暘暘(せき ようよう)
中国河南省出身。2021年3月東北大学(日本・仙台)文学研究科言語科学専攻分野国語学研究室博士後期課程修了。武漢大学(中国・武漢)外国語言文学学院日文系講師。
専攻:語彙史、外来語史。
主な論文:「近現代日本語史における外来語の再借用現象」(『文芸研究』第191集、2023)、「近現代における外来語「システム」の変遷」(『国語学研究』第60号、2021)、「20世紀後半の外来語使用急増の一過程―外来語「パターン」の増加過程を例に―」(『文化』第84巻1・2号、2020)。


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