ひつじ書房 中島敦 意識のゆらぎから複数の世界へ 石井要著 中島敦 意識のゆらぎから複数の世界へ 石井要著
2024年5月刊行

中島敦 意識のゆらぎから複数の世界へ

石井要著

A5判上製 定価6000円+税

ISBN978-4-8234-1226-4

ブックデザイン:坂野公一(welle design)

ひつじ書房

Literature of Nakajima Atsushi and the Fluctuation of Consciousness: Not Just One, Modes of the World and Existence
Kaname Ishii




【内容】
中島敦は、英国作家オルダス・ハックスレイのエッセイから、生物学者ユクスキュルの環世界論をはじめ、“人間”の認識・思考・存在のあり方を根底から揺さぶる科学的知見を受け取っていた。理想的な国民の“人間性”が喧伝される戦時下の時代状況において、中島敦が捉えていた“人間”の姿とはどのようなものだったのか。本書では、中島敦が受容していた科学的知見を視座として、存在と世界のあり方を問い直す中島敦文学の新たな一面を浮き彫りにする。


【目次】
凡例

序章 戦時下の異邦人、中島敦―環世界・南洋・ヒューマニズム
一 世界は一つではない
二 南洋呆けと意識の変容
三 中島敦と同時代の作家たち
四 同時代言説
五 本書の方法と構成


第一部 中島敦文学における意識の変容・存在のゆらぎ

第一章 オルダス・ハックレイと中島敦―英文学からの〝出発〟
はじめに
一 相対主義の果て
二 雑誌『形成』と“作家”以前の中島敦
三 「私」を諷刺する
四 「北方行」再読
五 「過去帳」のゆくえ
おわりに

第二章 中島敦文学における〈私〉の臨界点―人間・動物・石
はじめに
一 動物・非人間・「蛮人」
二 認識の相違は世界の相違
三 存在に優劣を設けること
四 変身のモチーフ
おわりに

第三章 虎であるとはどのようなことか―「山月記」論
はじめに
一 動物の生きている世界
二 動物をどのように描くか
三 語りえないものを越えて?
おわりに

第四章 憑依する動物たち―「狐憑」論
はじめに
一 「狐憑」の問題系
二 「狐憑」の想像力
三 「狐憑」と狂気
四 憑依する動物たち
五 ロゴスの不可能性
おわりに

第五章 「木乃伊」における転生の語り―意識の彼方、狂気の手前で
はじめに
一 「木乃伊」の語り
二 言語による分節と意識の構造
三 前世の記憶と遺伝
四 怪奇の表現戦略
おわりに


第二部 戦前・戦中の言説空間と中島敦の試み

第六章 中島敦文学における科学的世界像―全集未収録資料に触れて
はじめに
一 科学教育と合理性
二 中島敦の交友関係から見えてくる科学観
三 神秘への接近
四 理解の(不)可能性をめぐって
おわりに

第七章 人間のいない世界―中島敦文学における〈絶滅〉の問題系
はじめに
一 中島敦と絶滅
二 絶滅という一回性の出来事
三 人間のいない世界
おわりに

第八章 文字は生きている―「文字禍」論
はじめに
一 文字の霊とは何か
二 言霊に関する同時代言説
三 権力と文字
四 物質としての文字言語
おわりに

第九章 自意識が筋になるとき―「光と風と夢」論
一 取り入れられた論争
二 南洋のスティヴンスン
三 スティヴンスンのアイデンティティ
四 スティヴンスンの変化
五 自意識が「筋」になる
六 生き延びを反復する生

第一〇章 歴史に空白は残せるか―「李陵・司馬遷」論
一 「李陵・司馬遷」の問題系
二 「李陵」―歴史上の人物の心理を描き出すこと
三 「司馬遷」―歴史を書く機械
四 「司馬遷」―憑依する/される歴史家
五 「私」と歴史との関係
六 物質としての歴史
七 書くことへのためらい


終章 中島敦文学における意識と人間―戦後の評価軸を再考する
一 まとめに代えて
二 戦後の中島敦評価を越えて


初出一覧
あとがき
索引


著者紹介
〈略歴〉一九九三年東京都生まれ。女子学院中学校・高等学校教諭。早稲田大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修士課程修了。のち、渋谷教育学園幕張中学校・高等学校教諭、女子学院中学校・高等学校教諭をつとめながら、早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程を修了。博士(学術)。
〈主な著作〉「自意識が筋(プロット)になるとき―中島敦「光と風と夢」論」(『昭和文学研究』二〇二二・三)、「憑依する動物たち―中島敦「狐憑」論」(『日本近代文学』二〇一九・一一)、「中島敦文学における〈私〉の臨界点―人間・動物・石」(『国語と国文学』二〇一九・九)、「人間のいない世界―中島敦文学における〈絶滅〉の問題系」(『昭和文学研究』二〇一九・九)ほか。



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