ひつじ書房 昭和前期における口演童話の変遷 教育、ラジオへの展開と戦争協力 中村美和子著 昭和前期における口演童話の変遷 教育、ラジオへの展開と戦争協力 中村美和子著
2024年4月刊行

昭和前期における口演童話の変遷

教育、ラジオへの展開と戦争協力

中村美和子著

A5判上製カバー装 定価7200円+税

ISBN978-4-8234-1224-0

装丁:白井敬尚形成事務所

Changes in Modern Japanese Storytelling in the Early Showa Period: The Development into Education and Radio and the War Effort
Miwako Nakamura

ひつじ書房




【内容】
子どもを集めて物語を聞かせる口演童話は、20世紀前半の日本で人気のあった児童文化で、ラジオ登場前は児童出版以上のマスメディアだったといわれる。口演童話は若い教師たちの話しかた研究に重宝され、口演童話家たちはラジオ初期のタレントとして活躍した。発展の過程でたくわえられた技術・人脈は、戦時体制が進むなか積極的に活用される。本書は語られた話材の分析をとおし、昭和前期の口演童話の展開をたどった歴史書である。


【目次】

はしがき
凡 例

序章 口演童話による教育と文化伝承 
 第1節 問題設定と研究対象
 第2節 分析のための二つの視角―教育文化と戦時文化政策
  1 児童文化としての口演童話
  2 「教育文化」と口演童話
  3 「戦時文化政策」と口演童話
  4 二つの視角の関係
 第3節 用語の定義
  1 口演童話
  2 童話
  3 教室童話
  4 放送童話
  5 口演童話・童話・教室童話・放送童話の関係

第1章 先行研究と課題設定、本書の構成 
 第1節 口演童話に関する先行研究
  1 史的研究のはじまり
  2 沿革史『日本口演童話史』の登場
  3 『日本口演童話史』を受けた研究の展開
 第2節 本書の課題設定
  1 教育界における口演童話の受容
  2 口演童話家の初期ラジオ放送における番組協力
  3 戦時下のラジオ放送における童話の語り
  4 日本少国民文化協会童話部会の展開
 第3節 本書の構成

第2章 口演童話の創始と1920年代までの展開 
 第1節 口演童話の創始
 第2節 巖谷小波の「桃太郎主義」
 第3節 幼児教育における「桃太郎主義」と口演童話
 第4節 研究会による口演童話の普及
 第5節 口演童話の大衆化にともなう問題

第3章 教室童話の展開 
 第1節 教師による久留島童話の受容
  1 金沢嘉市と童話
  2 金沢嘉市と久留島武彦
  3 帝劇家庭娯楽会における久留島童話
  4 台本への書きこみに関する分析
  5 口演童話の型式
 第2節 教室童話研究会が目ざした「教育としての童話」
  1 教室童話が提唱された背景
  2 教室童話研究会のあゆみ
  3 「教育としての童話」―理念と脚色技術
  4 金沢嘉市の教室童話台本の分析
  5 教室童話にもとめられた「指導精神」

第4章 口演童話家のラジオへの進出 
 第1節 東京放送童話研究会結成の背景
  1 ラジオ初期の子ども番組の展開
  2 口演童話とラジオ
 第2節 東京放送童話研究会による放送童話の研究
  1 関屋五十二の功績
  2 研究会のメンバー
  3 研究会の展開
  4 東京放送童話研究会の台本の特徴
  5 東京放送童話研究会の台本分析
  6 放送童話の確立

第5章 教育の戦時体制下におけるラジオ番組「幼児の時間」 
 第1節 世界に先がけた「幼児の時間」
 第2節 1925–1945年における子ども向け教育番組
 第3節 幼児向け番組の指導方針と編成
  1 幼児生活の指針
  2 「幼児生活の指針」の立案
 第4節 「幼児の時間」「戦時保育所の時間」の台本分析
  1 放送童話台本の概要、分析の視角
  2 放送童話台本の分析
 第5節 放送童話による戦時下の幼児教育

第6章 国史劇にみられる少国民錬成の要素 
 第1節 国史劇の背景
  1 学校放送から国民学校放送への移行
  2 教科「国民科国史」と国史劇
  3 国民学校放送における国史劇
  4 偉人・英傑の放送童話の系譜
 第2節 国民科国史と国史劇
  1 国民科国史の番組の位置づけ
  2 1941年度の制作方針と国民学校放送以前の国史の番組
 第3節 額田六福作の国史劇シリーズ
  1 国史劇シリーズの概要
  2 国史劇シリーズの制作方針
  3 国史劇シリーズの放送実績
 第4節 国史劇台本にみる少国民錬成
  1 分析に用いた放送童話台本について
  2 天皇への忠義の表現
  3 日本人の誇りの表現
  4 台詞の効果と子どもたちへの配慮
 第5節 国民学校放送の国史劇シリーズによる報国
  1 教育と娯楽の協働
  2 少国民錬成のための国史劇

第7章 日本少国民文化協会童話部会の「童話報国」 
 第1節 日本少国民文化協会における童話部会の位置
  1 童話部会に寄せられた期待
  2 童話部会のおもな活動
  3 防空対策関連事業
 第2節 幼児向け話材「ハイハイうさ子ちやん」
  1 台本の概要
  2 童話台本の分析
 第3節 高学年向け話材「闘ふドイツ少年」
  1 台本の概要
  2 制作のもととなった新聞記事
  3 台本にふくまれる要素
 第4節 口演童話の効果

結章 結論と本書の意義、今後の課題 
 第1節 四つの課題からみた口演童話の展開
  1 人間形成を意図した教室童話の「指導精神」
  2 口演童話家による放送童話の確立
  3 放送童話による戦時下の保育と教育
  4 日本少国民文化協会童話部会による国策への協力
 第2節 子どもの育ちを意識した口演童話の歴史
  1 昭和前期における口演童話
  2 教育文化と口演童話
  3 口演童話家が伝えた「生活の仕方」
 第3節 今後の課題

参考文献
参考資料
あとがき
事項索引
人名索引




著者紹介
中村美和子(なかむら みわこ)
1960年、東京都生まれ。1984年、立教大学経済学部経済学科卒業。2020年、お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科博士後期課程修了。博士(社会科学)。専攻は教育文化・児童文化史。現在、お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所特別研究員(通称:みがかずば研究員)。
おもな業績に、「ラジオ番組『少国民の時間』による戦争協力」(『人間文化創成科学論叢』25、2023)、「国民学校放送における国史劇の活用―人気劇作家を起用した『国民科国史』の番組制作」(『メディア史研究』50、2021)、「教室童話が意図した『教育としての童話』の語り―金沢嘉市の童話台本の分析から」(『子ども社会研究』23、2017)など。


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