ひつじ書房 現代日本語の逸脱的な造語法「文の包摂」の研究 泉大輔著 現代日本語の逸脱的な造語法「文の包摂」の研究 泉大輔著
2024年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第203巻

現代日本語の逸脱的な造語法「文の包摂」の研究

泉大輔著

A5判上製函入 定価6,800円+税 368頁

ISBN978-4-8234-1215-8

ひつじ書房

A Study of Japanese Deviant Word Formation “Sentential Compounds”
IZUMI Daisuke



【内容】
「振り込め詐欺」「かまってちゃん」「いいねボタン」「話しかけるなオーラ」という語の特異性はどのように説明できるだろうか。本書では語の内部に“文”相当の要素が含まれる現象を「文の包摂」と名付け、実例を豊富に取り上げる。それらの形式的・意味的特徴を記述した上で、引用、命名、表現効果などの観点から成立原理を説明する。逸脱表現研究のみならず、日本語史研究・他言語研究の新たな地平をも拓く、実証的かつ挑戦的な研究書。〈日本学術振興会助成刊行物〉


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【目次】
まえがき

I 序論

第1章 「文の包摂」という逸脱的な造語法
1.1 研究の目的
1.2 研究の背景
1.3 研究の立場
1.3.1 研究対象の捉え方
1.3.2 研究の枠組み
1.3.3 研究の射程
1.4 研究の方法
1.5 研究の対象とする範囲
1.5.1 前項
1.5.2 後項
1.6 第1章のまとめおよび本書の構成

第2章 先行研究における「文の包摂」
2.1 「句の包摂」と「文の包摂」
2.2 「文を包摂する合成名詞」の諸特徴
2.2.1 「文を包摂する合成名詞」の形式的な特徴および意味的な特徴
2.2.1.1 後項となり得る名詞および接尾辞の形式的・意味的な特徴
2.2.1.2 前項となり得る「文相当の要素」の形式的・意味的な特徴
2.2.2 「文を包摂する合成名詞」の音韻的な特徴
2.3 「文を包摂する合成名詞」の形成を可能とする基盤
2.4 「文を包摂する合成名詞」の使用を支える基盤
2.5 「文を包摂する合成名詞」の調査資料
2.6 第2章のまとめ


II 本論 1 「文の包摂」の記述的な考察(総論)

第II部のはじめに

第3章 「文の包摂」の出現状況の調査
3.1 調査方法
3.1.1 コーパスの選定
3.1.2 コーパスでの検索方法の検討
3.1.3 コーパスでの検索および用例の収集・集計の手順
3.2 調査結果
3.3 第3章のまとめ

第4章 「文の包摂」の諸特徴の記述
4.1 後項の意味的な特徴
4.1.1 言語活動を表す形式
4.1.1.1 (a)言語を用いた情報伝達に関する事柄や行為
4.1.1.2 (b)言語を用いた諸行為の結果として生じた産物
4.1.2 心情・思考・意向を表す形式
4.1.2.1 (a)心情(感覚・認識・願望など)を表す形式
4.1.2.2 (b)思考(見解・判断・論説など)を表す形式
4.1.2.3 (c)意向(主義・理念・方針・方法など)を表す形式
4.1.3 性状を表す形式
4.1.3.1 (a)状態(事態・様相・態度など)を表す形式
4.1.3.2 (b)性質(性向・機能・決まりなど)を表す形式
4.1.3.3 (c)程度(度合・階級など)を表す形式
4.1.3.4 (d)時間(期間・時機など)を表す形式
4.1.3.5 (e)類型(系統)などを表す形式
4.1.3.6 (f)類型(集団)などを表す形式
4.1.4 活動・出来事を表す形式
4.1.4.1 (a)活動を表す形式
4.1.4.2 (b)出来事を表す形式
4.1.5 変化・作用・働きかけを表す形式
4.1.6 具体物(物体・人物)を表す形式
4.1.6.1 (a)物体(物品・札・文書・食料・施設など)を表す形式
4.1.6.2 (b)人物(人・職業・役職・神仏など)を表す形式
4.1.7 語種に関する特徴
4.2 前項の諸特徴
4.2.1 引用された言葉
4.2.2 構造的な特徴
4.2.3 表記的な特徴
4.2.3.1 引用を表す記号
4.2.3.2 その他の記号
4.3 前項の文末形式と後項の意味的な関連性
4.3.1 (a)命令形
4.3.2 (b)意志推量形
4.3.3 (c)「だ」かつ「終止形」
4.3.4 (d)「な」
4.4 第4章のまとめ

第II部のおわりに


III 本論 2 「文の包摂」の記述的な考察(各論)

第III部のはじめに

第5章 後項「発言」の記述的考察
5.1 はじめに
5.2 用例の収集
5.3 「X発言」の形式的な特徴および意味的な特徴
5.3.1 前項が「語」である「X発言」
5.3.2 前項が「句」である「X発言」
5.3.3 前項が「文相当の要素」である「X発言」
5.4 おわりに

第6章 後項「感」の記述的考察
6.1 はじめに
6.2 用例の収集
6.3 前項が「語」「句」である「X感」の形式的な特徴および意味的な特徴
6.3.1 旧来的な合成名詞「X感」
6.3.1.1 形式的な特徴
6.3.1.2 意味的な特徴
6.3.2 臨時一語的な「X感」
6.3.2.1 形式的な特徴
6.3.2.2 意味的な特徴
6.4 前項が「文相当の要素」である「X感」
6.4.1 形式的な特徴
6.4.2 意味的な特徴
6.4.2.1 心内発話の引用により感想を表現する用法
6.4.2.2 想定引用により対象の様相を描写する用法
6.4.3 音韻的な特徴
6.5 おわりに

第7章 後項「程度」の記述的考察
7.1 はじめに
7.2 用例の収集
7.3 「X程度」の形式的な特徴および意味的な特徴
7.3.1 前項が「語」である「X程度」
7.3.2 前項が「句」である「X程度」
7.3.3 前項が「文相当の要素」である「X程度」
7.4 おわりに

第8章 後項「攻撃」の記述的考察
8.1 はじめに
8.2 用例の収集
8.3 「X攻撃」の形式的な特徴および意味的な特徴
8.3.1 前項の形式的な特徴
8.3.2 前項の意味的な特徴
8.3.3 「X攻撃」の意味的な特徴
8.4 おわりに

第III部のおわりに


IV 本論 3 「文の包摂」の理論的な考察

第IV部のはじめに

第9章 「文の包摂」の文法的な成立基盤
9.1 形態的な基盤
9.1.1 統語的な引用と語形成的な引用
9.1.2 実物表示とイコン記号
9.1.3 構成要素としての機能の獲得
9.2 構文的な基盤
9.3 第9章のまとめ

第10章 「文の包摂」の語彙的な成立基盤
10.1 語彙的な側面の並行性
10.1.1 命名の単位としての「文を包摂する合成名詞」
10.1.1.1 語の命名機能
10.1.1.2 普通名詞としての「文を包摂する合成名詞」
10.1.1.3 固有名詞としての「文を包摂する合成名詞」
10.1.1.4 名前の構造
10.1.2 語彙の構成要素としての「文を包摂する合成名詞」
10.1.2.1 語彙と語彙項目
10.1.2.2 語彙体系における語彙項目としての「文を包摂する合成名詞」
10.2 語形成プロセスの並行性
10.2.1 複合名詞の形成プロセス
10.2.2 原概念の形成(第1段階)
10.2.3 命名概念の形成(第2段階)
10.2.4 命名概念の複合名詞化(第3段階)
10.2.4.1 造語成分の配列・結合
10.2.4.2 類推的創造
10.2.5 社会化と語義の確立(第4段階)
10.3 第10章のまとめ

第11章 「文の包摂」の音韻的な成立基盤
11.1 音韻的な特徴
11.1.1 連濁
11.1.2 合成語アクセント
11.2 第11章のまとめ

第12章 「文の包摂」の表現効果的な成立基盤
12.1 表現効果(a)「リアリティ性」
12.1.1 「リアリティ性」の諸特徴
12.1.1.1 リアルで具体的な描写
12.1.1.2 被引用者の人物像の具体化
12.1.1.3 定型表現と結びつく場面の喚起
12.1.2 「リアリティ性」の発現基盤
12.1.2.1 「リアリティ性」の発現基盤①:「引用の性質」(実物表示)
12.1.2.2 「リアリティ性」の発現基盤②:「話し言葉に特有の表現形式」
12.1.2.3 「リアリティ性」の発現基盤③:「社会・文化的な背景知識」
12.2 表現効果(b)「主観表示性」
12.2.1 「主観表示性」の諸特徴
12.2.2 「主観表示性」の発現基盤:「引用の性質」(話し手投写)
12.2.3 「主観表示性」と関連する表現効果(視点交錯性および関係表示性)
12.3 表現効果(c)「新奇性」(娯楽性・インパクト性)
12.3.1 「新奇性」の諸特徴
12.3.2 「新奇性」の発現基盤:「逸脱性」
12.4 まとめ

第IV部のおわりに


V 結論

第13章 「語」と「文の包摂」
13.1 「文の包摂」の通時的・通言語的普遍性
13.2 「語」とは何か

第14章 本研究のまとめと今後の展望
14.1 本研究の概要
14.2 本研究で明らかになったことと今後の展望
14.2.1 「文を包摂する名詞」の記述的な考察
14.2.2 「文を包摂する名詞」の理論的な考察


参考文献
辞書・事典・データベース類
既発表論文との関係(初出一覧)
謝辞
索引



著者紹介
泉大輔(いずみ だいすけ)
 略歴
立教大学国際化推進機構日本語教育センター教育講師。国立国語研究所共同研究員。明治大学国際日本学部兼任講師。宮城県仙台市出身。専門は日本語学、語彙論。東北大学卒業後、民間企業で勤務した後、東京外国語大学大学院に入学。東京外国語大学大学院博士後期課程修了(博士)。
 主な著書・論文
『日本語の大疑問2』(分担執筆、幻冬舎、2024)、「「感」の形式的特徴と意味・用法に関する包括的考察」(『日本語・日本学研究』(9)、2019)ほか。


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