ひつじ書房 日本手話で学びたい! 佐野愛子・佐々木倫子・田中瑞穂編 ひつじ書房 日本手話で学びたい! 佐野愛子・佐々木倫子・田中瑞穂編
2023年7月刊行

日本手話で学びたい!

佐野愛子・佐々木倫子・田中瑞穂編

定価1,700円+税 A5判並製 184頁

ISBN978-4-8234-1210-3

ひつじ書房

Fighting for our rights to study in Japanese Sign Language
Edited by SANO Aiko, SASAKI Michiko and TANAKA Mizuho


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【内容】
手話話者の権利を訴えた『手話を言語と言うのなら』(2016)が刊行されて7年が経つが、日本手話を第一言語とするろうの子どもたちが学ぶ環境は依然として厳しい状況のままである。札幌聾学校において日本手話で学ぶ権利を求める訴訟が起こる中、国内外のろう・聴の研究者がともにその専門的見地からろう教育における自然言語としての手話の重要性を訴える。
執筆者:オードリー・クーパー、菊澤律子、クリステル・フォンストロム、佐々木倫子、佐野愛子、ジム・カミンズ、杉本篤史、田中瑞穂、デボラ・チェン・ピクラー、戸田康之、富田望、ポール・ドゥディス、松岡和美、明晴学園、森壮也

【目次】

この本を読んでくださる方へ

序章 日本手話をないがしろにし続けるろう教育 ―札幌聾学校訴訟まで― 田中瑞穂・佐々木倫子・佐野愛子
1. 日本のろう教育の流れ
2. 隠された当事者の声
3. 札聾の二言語教育
3.1 聴能主義下の日本手話クラス
3.2 二言語で学ぶ子どもの成長
3.3 成長する二言語教育
4. 暗転する二言語教育

第1部 ろう教育における「手話」

第1章 日本手話とはどういう言語か 森壮也
1. はじめに
2. 日本手話
3. 日本手話と手指日本語(日本語対応手話)
4. まとめ

第2章 ろう児の発達における日本手話の重要性 松岡和美
1. はじめに
2. 日本手話と日本語対応手話(手話アシスト日本語)
3. 動画に見られる違い
4. ろう教育におけるろうコミュニティの手話の重要性
5. おわりに

第3章 日本手話と日本語対応手話の特徴と違い 菊澤律子
1. はじめに
2. 「日本語」「日本語対応手話」「日本手話」の共通点と相違点
2.1 「日本語」「日本語対応手話」「日本手話」の概要
2.1.1 「日本手話」の言語としての構造と特徴
2.1.2 「日本手話」と「日本語対応手話」の違い
2.1.3 「日本手話」と「日本語対応手話」の違いが認識されづらいのはなぜか
3. 誰もが輝ける社会につながる教育の実現を!

第2部 ろう教育で用いられるべき言語

第4章 札幌聾学校の授業言語について ジム・カミンズ(訳 佐野愛子)
1. 札幌聾学校における方針転換
2. 自然手話の能力と他の学力との関係
3. さいごに

第5章 自然手話とろう教育
 デボラ・チェン・ピクラー,ポール・ドゥディス,オードリー・クーパー(訳 松岡和美・佐野愛子)
1. はじめに
2. 自然な手話言語への早期アクセスはろう・難聴児に対する公平な教育機会への第一歩である
3. 自然手話+同じ地域の音声言語に基づく書記言語のバイリンガル教育環境は、着実な学力の発達を支えるものである
4. 音声言語に対応させた手指システムは、言語処理・理解の面で自然言語としての手話と比べて不十分であり、ろう・難聴児の教育に使用されるべきではない

第6章 スウェーデンのバイリンガル教育から クリステル・フォンストロム(訳 佐野愛子)
1. はじめに
2. なぜ自然手話のバイリンガル教育がろう児に不可欠なのか
3. 手話は本当に本物の言語なのか
4. 日本語対応手話と日本手話はどう違うのか
5. スウェーデン手話を授業言語とするスウェーデンのバイリンガルろう教育の経験とはどのようなものか

第7章 米国におけるアメリカ手話を用いたろう教育 富田望
1. はじめに
2. 手話を言語として認めた国
3. アメリカにおけるアメリカ手話を用いたろう教育の普及の現状
4. 自然言語である手話言語を
5. 聾学校での日本語対応手話が日本手話児に与える影響

第8章 明晴学園のバイリンガル・バイカルチュラルろう教育 学校法人 明晴学園
1. はじめに
2. 明晴学園の教育課程
3. 乳幼児教育における言語環境
4. 日本手話による教科学習
5. 自己肯定感を育てる教育
6. 手話科の成果
7. 第三者の評価およびまとめ

第9章 バイリンガルろう教育を阻むもの 佐々木倫子
1. はじめに
2. 従来型のろう教育の限界
(1) 「手話は言語ではない」とする誤解
(2) 「手話はひとつ」とする誤解
(3) 「聾学校では手話で教えている」という誤解
(4) 「手話は使っていれば自然に育つ」という誤解
(5) 「テクノロジーがろう児をなくす」とする誤解
(6) 「手話言語法制定が手話を社会で確立する」という誤解

第3部  権利としての日本手話

第10章「日本手話」と明記した手話言語条例 戸田康之

1. はじめに
2. 「朝霞市日本手話言語条例」の施行
3. 手話通訳を「日本手話」で
4. 「日本手話」を使用するろう通訳者の有効性について
5. 手話言語として「日本手話」を獲得するろう児たち

第11章 ろう児が日本手話で学ぶ権利について 杉本篤史
1. はじめに
2. 言語権とは
2.1 国際人権法における言語権概念の受容と発展
2.1.1 宣言
2.1.2 日本国が批准した条約
2.2 国際人権法における言語権概念(小括)
2.2.1 第1言語(L1:First Language)に関する権利
2.2.2 民族継承語(HL:Heritage Language)に関する権利
2.2.3 ある地域で広く使用されている言語(CSL:Commonly Spoken Language)に関する権利
2.2.4 言語権を保障するための国や自治体の責務
3. 言語権と日本の国内法制
4. ろう児が日本手話で学ぶ権利について
4.1 日本国憲法における根拠
4.2 日本の締結する国際人権条約上の根拠
4.3 「L1 を剥奪されない権利」の重要性

提言 これからのろう教育のあり方について 佐野愛子・佐々木倫子・田中瑞穂
1. 日本手話に堪能なろう者を、幼児児童生徒もしくはその保護者から希望の出たすべての教室に配置する体制を整えること
2. 日本手話に堪能なろう者の教員免許取得に向けた支援・養成の対策を早急に講じること
3. すでに教員免許を持っている現職の聾学校教員に対し、日本手話の運用能力を高め、バイリンガルろう教育の専門性を高められるような研修の取り組みを強化すること
4. 聾学校における教育課程に「日本手話」の学びを位置付けること

執筆者一覧


【編者紹介】
佐野愛子(さの あいこ)立命館大学教授。トロント大学大学院オンタリオ教育研究所にてM.A.(第二言語教育)、北海道大学にて博士(学術)取得。専門はバイリンガル教育・英語教育。
佐々木倫子(ささき みちこ)桜美林大学名誉教授。国立国語研究所日本語教育センター日本語教育指導普及部長、桜美林大学教授・言語教育研究所長などを歴任。米国アメリカン大学大学院にてM.A.(言語学)取得。専門はバイリンガルろう教育・日本語教育学。
田中瑞穂(たなか みずほ)もと札幌聾学校教諭。北海道教育大学にて修士(教育学)取得、現在北海道大学大学院博士課程在籍。専門はバイリンガルろう教育。


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