ひつじ書房 農村青年の文学 昭和初期の農村アマチュア作家と宮沢賢治 牧千夏著 農村青年の文学 昭和初期の農村アマチュア作家と宮沢賢治 牧千夏著
2023年12月刊行

農村青年の文学

昭和初期の農村アマチュア作家と宮沢賢治

牧千夏著

A5判上製 定価7200円+税

ISBN978-4-8234-1209-7

ブックデザイン:坂野公一(welle design)

ひつじ書房

Literatures of rural youth: rural amateur writers and Kenji Miyazawa in the 1920s and 1930s
Maki Chinatsu




【内容】
本書は、農民文学および産業組合という観点から、1920-30年代に農村の人々が地域や個人を主体とした独自の文化を生んだことを明らかにする。宮沢賢治を中心に地方のアマチュア作家や投書家の表現、および産業組合の関連から賀川豊彦や平塚らいてうを扱った。農村の人々のなかには、仕事や雑事に明け暮れる日々のなかで、頭をひねって原稿用紙に向かった人がいた。本書は、彼らの表現が地域の暮らしから生まれたことを、浮かび上がらせようとする。


【目次】
凡例

序章
0 はじめに
1 農村文学のあゆみ
2 書き続けられた農民文学研究
3 宮沢賢治は農村アマチュア作家
4 農村で思想・経済・文化をつなぐ産業組合
5 本書の構成

第1部 農村青年の文化活動

第1章 岩手県における経済的・教育的な階層とその役割
0 はじめに
1 宮沢賢治の階層とその役割
2 花巻農学校の生徒の階層
3 おわりに

第2章 岩手の教員による教育論―新教育運動と「農民芸術概論綱要」
0 はじめに
1 「農民芸術概論綱要」の先行研究
2 「農民芸術」を講義した岩手県国民高等学校
3 「農民芸術概論綱要」における個性と芸術
4 岩手の教育
5 国家主義との距離
6 おわりに

第3章 農学校教師の詩―『春と修羅 第三集』と気象学
0 はじめに
1 「春の雲に関するあいまいなる議論」
2 「県技師の雲に対するステートメント」
3 おわりに

第4章 農民の詩―『春と修羅 第三集』と渋谷定輔『野良に叫ぶ』
0 はじめに
1 「水汲み」
2 「〔西も東も〕」の改稿
3 擬人法評価の難しさ
4 おわりに

第2部 中央文壇との関係

第5章 文壇における農民文学論争
0 はじめに
1 農民文学論争の時代区分と特徴
2 小牧近江によるプロレタリア文学派
3 中村星湖による郷土芸術派
4 生田長江の文明批評派
5 6年以後の農民文学論争
6 おわりに

第6章 農民文学論争と「農民芸術概論綱要」の関係
0 はじめに
1 文明批評派と農民芸術論
2 アナキズム系郷土芸術派と農民芸術論
3 農民文学論争と農民芸術論
4 おわりに

第7章 『赤い鳥』と『注文の多い料理店』の擬人化表現
0 はじめに
1 宮沢賢治の擬人化表現
2 『赤い鳥』と『注文の多い料理店』との比較
3 描写の質を比較する
4 おわりに

第3部 産業組合の文化運動との関わり

第8章 産業組合における思想的・文化的展開
0 はじめに
1 産業組合主義の成立
2 産業組合主義の趣旨と宣伝
3 産業組合主義の思想的・文化的展開
4 おわりに

第9章 産業組合に惹かれた作家―賀川豊彦・平塚らいてう・宮沢賢治
0 はじめに
1 産業組合と左翼運動
2 彼らのとった過程
3 おわりに

第10章 農村青年の希望―賀川豊彦「乳と蜜の流るゝ郷」と『家の光』
0 はじめに
1 なぜ『家の光』が注目されてきたのか
2 農民読者の共感
3 農民読者の同情
4 おわりに

第11章 地域志向の農本主義―「ポラーノの広場」と『家の光』
0 はじめに
1 「ポラーノの広場」における農本主義
2 『家の光』にみる国家主義的農本主義
3 『家の光』にみる農民の農本主義
4 おわりに

第12章 『北方詩人』と詩「産業組合青年会」―東北詩壇の地域志向
0 はじめに
1 地方詩壇の活況
2 地方詩壇と宮沢賢治
3 「産業組合青年会」
4 『北方詩人』と「産業組合青年会」
5 おわりに

第13章 『北方詩人』における同人の交流―東北アマチュア詩人の同人誌活動
0 はじめに
1 『北方詩人』と福島詩壇
2 同人と『北方詩人』の系譜
3 『北方詩人』の特徴
4 おわりに

終章 主体的な農村文学
1 農村の人々の表現を評価する方法
2 農村の人々の表現が示す可能性

謝辞
参考文献
初出一覧
索引



著者紹介
〈略歴〉1986年愛知県豊川市生まれ。愛知教育大学卒業後、名古屋大学大学院文学研究科博士前期課程修了。愛知県立知立東高等学校教諭を経て、名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程および日本学術振興会特別研究員(DC-1)。満期退学ののち、現在、長野工業高等専門学校リベラルアーツ教育院准教授。博士(文学)。 〈主な著作〉「もの足りない農本主義――宮沢賢治「ポラーノの広場」における産業組合と『家の光』――」(『日本文学』62(6) 、2013) 、「創始期の農民文学論争 ―― プロレタリア文学・郷土芸術・文明批評―― 」(『国語と国文学』 95(6)、2018)、「気象学のつくる詩学――宮沢賢治『春と修羅 第三集』の表現分析――」(『日本文学』67(12)、2018)、「産業組合における社会思想的側面の研究」(『協同組合奨励研究報告』46、2020)ほか。



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