ひつじ書房 物語の言語学 語りに潜むことばの不思議 甲田直美著 物語の言語学 語りに潜むことばの不思議 甲田直美著
2024年2月刊行

物語の言語学

語りに潜むことばの不思議

甲田直美著

A5判並製 定価2400円+税

ISBN978-4-8234-1202-8

ブックデザイン:大崎善治

ひつじ書房

Narrative Linguistics: The Wonders of Language in Narrative
Koda Naomi




【内容】
「物語」、「語り」という観点から、言語学と隣接領域をわかりやすく解説した画期的な書。物語、神話、マンガ、うわさ、都市伝説、ナラティブ・ケアなどの豊富な事例から具体的に、音声、文字、翻訳、文法、談話分析、さらには物語論、文体論、会話分析を幅広く、楽しく学ぶ。構造主義、シナリオ術、サブカルチャー、ケアと自己物語などを通して、文化、芸術、メディア、フィールドワークなど、人類と文化を考える裾野を広げる。


【目次】
本書の構成

序章 物語と人間
1. 身近にあふれる物語
2. 物語と人類の歴史
3. 物語と語り―いくつかの用語の解説
4. 物語と集団形成
5. 物語の影響力とメディアの多様性
6. 物語研究の広がりと本書の概観

第I部 物語から描く言語学の世界

第1章『星の王子さま』に見る世界の言語―比較・対照言語学
1. 『星の王子さま』と翻訳
2. 世界の『星の王子さま』
3. 類型論と系統論
4. 世界における各言語の使用人口
コラム 世界の文字の分類

第2章 物語と談話の法則―文法論
1. ことばの運用能力
2. 言語学の諸分野
3. 「桃太郎」の言語学
4. 言語の単位

第3章 音と耳から考える物語―音声学
1. 物語の音声
2. 朗読における音声の特質
3. 朗読の魅力
4. 昔の音声を再現する
4.1 天草版『平家物語』に見る当時の発音
4.2 紫式部は源氏物語をどう読んだのか―平安朝に遡る

第4章 物語の翻訳―意味論
1. 翻訳と日本語の特徴
2. さまざまな源氏物語
3. 翻訳における等価性
4. 理解の多様性

第5章 物語と時間―談話分析
1. 時間性
1.1 コマ割りと時間の流れ
1.2 カメラワーク
1.3 時間の重要性
1.4 物語と説明文
1.5 絵と時間
2. シンデレラ物語の描き方
3. 物語におけるテンスとアスペクト
4. 物語の時制の日英対照
コラム 物語、昔話、神話、伝説
コラム 言語研究とインターネット

第6章 構造主義と神話研究―音韻論
1. 構造主義とは
2. 音韻論的対立と意味
3. 神話の構造分析
4. 作品の構造を読み解く
5. 神話研究から見た構造主義の特質
6. 構造主義の限界
コラム ソシュールと一般言語学

第7章 物語作品の享受と分析―文体論
1. 言語学と文学との乖離
2. 文体論研究の位置づけ
3. 文体論の観点
4. データの電子化と文化の定量化
5. コーパスと文体論
6. 情動とデータサイエンス
コラム NDC 分類とC コード―本の話

第II部 物語の技巧と文化

第8章 物語の技巧―物語論
1. 表現技巧を扱う物語論
2. 口承による物語と文字による物語
2.1 「声の文化」と「文字の文化」
2.2 作中世界と語りの重層性
3. 物語論
3.1 叙法
3.2 人称
3.3 遠近法
コラム 『グリム童話』に見る伝承と作品

第9章 物語の共通性―物語の類型論
1. 物語の類似性
2. 世界の昔話の類型化
3. 日本における話型分類
4. 物語文法
5. プロップの昔話の考察
6. なぜ世界の物語には共通性があるのか
6.1 物語の伝播
6.2 食物探索の旅立ち
6.3 物語の記憶
6.4 神話と深層心理
コラム 国家と神話、そしてアイデンティティ

第10章 ドラマ・アニメの構造とシナリオ術―シナリオ術
1. キャンベルによる神話研究
2. 神話をベースにしたヒーロー、ヒロインの旅
3. キャラクターの重要性
4. 物語の提示の順序と放送回
5. 動機付け
6. 物語の革新性

第11章 マンガ、遊び、サブカルチャー―文化論
1. 娯楽作品の影響力
2. 物語と遊び
3. サブカルチャーと文学
3.1 ことばの遠近
3.2 サブカルチャーの位置づけ
4. 物語と絵
4.1 マンガ
4.2 挿絵
4.3 絵巻
4.4 物語における絵のはたらき
5. コンテンツと技法

第12章 マンガと視点現象―マンガ学
1. 視点現象の分解
2. コマの移動と立脚点
3. 共同注意と同一化技法
4. フキダシと叙法
コラム ジェンダーと物語

第III部 物語をとおして「わたし」を知る

第13章 雑談と「もの」語り―会話分析
1. 真実と虚構
2. 語りの構成要素―ラボフによるナラティブ研究
3. 会話分析の重要性
4. 会話分析の基本概念
4.1 ターン構成単位
4.2 会話転写に用いる記号
5. 語りの達成は共働作業である
6. クライマックスと語りの達成

第14章 自己を語る、ケアの物語―語用論
1. 自己物語とアイデンティティ
2. 世界の理解にも物語が作用する
3. 臨床場面へのナラティブ・アプローチ
4. ブルーナーによる物語的思考の強調
5. ナラティブ・ターンと支配への問い直し
6. ガーゲンの言語観
7. 相対的真理と語用論
8. 社会構成主義の限界と問題点
コラム 物語を検証する

第15章 コミュニケーション・ツールとしての物語―コミュニケーション論
1. グルーミング(毛繕い)としての物語
2. うわさの分類
2.1 流言
2.2 ゴシップ
2.3 都市伝説
3. 話の拡散とソーシャルネットワーク
4. 物語の悪用
コラム 保存のための物語

付章 物語のフィールドワーク
1. 民話を採集する
2. 物語を分析するツール
2.1 フィールドノート
2.2 録音録画機材
2.3 文字おこしとデータの加工
2.4 Praat
2.5 文書整理のためのソフト
3. 物語を比較・対照する
コラム 方言に見る言語変化


言及した主な作品名
参考文献
索引
あとがき



著者紹介
甲田直美(こうだ なおみ)
東北大学大学院文学研究科・教授
2000年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。日本学術振興会特別研究員(DC,PD)、滋賀大学教育学部助教授、文部科学省在外研究員(Faculty Scholar, Department of Psychology, University of Massachusetts)を経て現職。
主著に『談話・テクストの展開のメカニズム─接続表現と談話標識の認知的考察─』(風間書房,2001年)、『文章を理解するとは─認知の仕組みから読解教育への応用まで─』(スリーエーネットワーク,2009年)、『認知語用論』(くろしお出版,2016年,共著)などがある。



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