ひつじ書房 副詞から見た日本語文法史 川瀬卓著 ひつじ書房 副詞から見た日本語文法史 川瀬卓著
2023年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第194巻

副詞から見た日本語文法史

川瀬卓著

定価7200円+税 A5判上製函装 256頁

ISBN978-4-8234-1174-8

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

Historical Studies of Japanese Adverbs:
The History of Japanese Grammar from the Perspective of Adverbs
Kawase Suguru

ひつじ書房


【内容】
本書は、アスペクト、否定、モダリティ、行為指示や感謝・謝罪における対人配慮などの、日本語の文法現象と関わる副詞をいくつか取り上げ、副詞を視点として日本語文法史に迫ることを試みたものである。個々の副詞の歴史変化を記述するとともに、それを通して、副詞に見られる文法変化のありようを示し、日本語の歴史の時代的動向についても論じる。語史研究の先にある、副詞の歴史的研究の新たな可能性を実践的に示した書。〈日本学術振興会助成刊行物〉

【目次】
はしがき
凡例


序章 副詞の歴史的研究における課題
1. はじめに
2. 副詞概観
2.1 副詞とは
2.2 副詞の下位分類
2.3 副詞の動的性質
3. 副詞の歴史的研究と日本語文法史研究
3.1 副詞の歴史的研究の方向性
3.2 副詞から文法変化の問題に迫る
3.3 副詞から日本語の時代的動向を見出す
3.4 副詞の語史と日本語文法史
4. 副詞を視点とした日本語文法史へのアプローチを目指して
4.1 本書の目的
4.2 扱う副詞群の特徴
4.2.1 擬声語の副詞
4.2.2 不定語と助詞によって構成される副詞
4.2.3 定型的前置き表現
4.3 本書の構成
5. 補説 近年の研究動向の概観
5.1 副詞の歴史的研究の活発化
5.2 方法論の面で注目される語史研究
5.3 まとまった語群を扱うもの
5.4 意味変化のあり方の提示や類型化を目指すもの
5.5 日本語の時代的動向に関連づけようとするもの
5.6 おわりに


I 副詞の歴史と文法変化

第1章 「そろそろ」の史的変遷
1. はじめに
2. 動きの様態を表す「そろそろ」
3. 近世における「そろそろ」の変遷
3.1 「と」の脱落
3.2 変化の進展を表す用法
3.3 事態発生時が近づいていることを表す用法
4. 用法派生の過程
4.1 動きの様態から変化の進展へ
4.2 変化の進展から事態発生時の近づきへ
5. 近代以降の「そろそろ」
6. まとめ

第2章 叙法副詞「なにも」の成立
1. はじめに
2. 現代語における「なにも」の2 つの用法
3. 「なにも」の歴史概観
3.1 否定との結びつきの推移
3.2 叙法副詞「なにも」の出現
4. 叙法副詞「なにも」の成立過程
4.1 「なにも」の述語の偏り
4.2 非存在文における「なにも」
4.3 さまざまな形式との共起
5. まとめ

第3章 近世における「どうも」の展開
1. はじめに
2. 現代語における「どうも」
3. 近世における「どうも」
3.1 近世前期・後期上方語
3.2 近世後期江戸語における用法の拡張
4. 「どうも」の諸用法の関係
4.1 〈不可能〉の内実
4.2 「話し手の期待の非実現」から「話し手の期待通りでない事態の生起」へ
4.3 背後の事情を見出すことによる〈推定〉への移行
5. まとめ

第4章 「どうやら」の史的変遷
1. はじめに
2. 「どうやら」の歴史変化
2.1 近世前期
2.2 近世後期
2.3 近代以降
3. 「どうやら」の歴史変化の背景
3.1 〈推定〉の発生と変化の一般性
3.2 〈感覚的描写〉の衰退と類義語の影響
3.3 「どうか」の史的変遷との関係
4. まとめ


II 副詞の歴史と日本語の時代的動向

第5章 「ひょっとすると」類の成立と呼応の分化
1. はじめに
2. 「ひょっと」の史的展開
2.1 「ひょっと」の音象徴的意味
2.2 「ひょっと」と仮定・可能性想定との結びつきの発生
2.3 「ひょっと」から「ひょっとすると」類へ
3. 仮定・可能性想定の呼応の分化
3.1 古代語と現代語での呼応のあり方の違い
3.2 「ひょっとすると」類と「もしかすると」類の歴史的関係
4. 副詞の呼応の分化と日本語の時代的動向
5. まとめ

第6章 「どうぞ」の史的変遷と行為指示表現の歴史
1. はじめに
2. 現代語における「どうぞ」
3. 「どうぞ」の歴史的変遷
3.1 中世末から近世前期
3.2 近世後期
3.3 近代以降
3.4 「どうか」との関係
4. 歴史変化の背景
4.1 配慮表現における前置き表現の発達
4.2 行為指示表現における運用基準の変化
5. まとめ

第7章 前置き表現から見た行為指示における配慮の歴史
1. はじめに
2. 本章の問題意識と方法
2.1 敬語史から配慮表現史へ
2.2 歴史語用論と日本語史
2.3 現代語の行為指示に見られる配慮表現
3. 〈恐縮・謝罪〉の前置き表現の歴史
4. 〈状況確認〉の前置き表現の歴史
4.1 近世までの文学作品における〈状況確認〉
4.2 定型的前置き表現「よかったら」類の成立と定着
4.3 書簡における〈状況確認〉
5. 前置き表現の歴史から見えてくること
5.1 前置き表現の定型化と標準語
5.2 「 よかったら」類の成立と定着から見えるストラテジーの変化
6. まとめ

第8章 感謝・謝罪に見られる配慮表現「どうも」の成立とその普及
1. はじめに
2. 問題の整理
3. 「どうも」の配慮表現への変化
3.1 「どうも」の対人的使用と「恐縮」
3.2 「恐縮」からの変化
4. 感謝・謝罪に見られる配慮表現「どうも」の確立と普及
4.1 総合雑誌『太陽』
4.2 明治・大正期SP 盤落語レコード
4.3 国定国語教科書
5. 配慮表現「どうも」の歴史と関連する問題
5.1 古代語と近代語の相違
5.2 日本語における配慮と「恐縮」
5.3 配慮表現の地域差
6. まとめ


III 副詞の歴史的研究から日本語文法史研究へ

第9章 副詞から見た古代語と近代語
1. はじめに
2. 副詞の発達
2.1 認識的モダリティと関わる副詞
2.2 対人配慮を表す前置き表現・副詞
3. 呼応の分化
3.1 仮定と可能性想定
3.2 事態非実現の叙述と未実現事態の希求
4. 副詞の歴史と日本語文法史
4.1 形式の分析化と文法的意味の分化
4.2 個々の事情の異なり
5. おわりに

第10章 副詞の歴史から見えてくること まとめと今後の展望
1. はじめに
2. 本書全体の振り返り
2.1 個々の副詞の歴史から見えてくること―第Ⅰ部
2.2 個々の副詞の歴史から見えてくること―第Ⅱ部
2.3 複数の副詞の歴史を見渡して見えてくること
3. 副詞の形成に関する問題
3.1 前置き的・注釈的な従属節との連続
3.2 不定語と助詞によって構成される副詞の形成と歴史変化
4. 副詞の歴史的研究のこれからに向けて


調査資料・使用テキスト
参考文献
あとがき
索引




【著者紹介】
川瀬卓(かわせ すぐる)
1981年生まれ。福岡県福岡市出身。九州大学大学院人文科学府博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。弘前大学人文学部講師、同人文社会科学部講師を経て、2019年4月より白百合女子大学文学部准教授。
主な論文に「叙法副詞「なにも」の成立」(『日本語の研究』7(2), 2011)、「副詞「どうぞ」の史的変遷―副詞からみた配慮表現の歴史、行為指示表現の歴史―」(『日本語の研究』11(2), 2015)、「副詞から見た古代語と近代語」(野田尚史・小田勝編『日本語の歴史的対照文法』和泉書院, 2021)などがある。


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