ひつじ書房 話し言葉における受身表現の日中対照研究 陳冬姝著 ひつじ書房 話し言葉における受身表現の日中対照研究 陳冬姝著
2023年1月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第192巻

話し言葉における受身表現の日中対照研究

陳冬姝著

定価6400円+税 A5判上製函装 248頁

ISBN978-4-8234-1151-9

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A Japanese-Chinese Contrastive Study of Passive Expressions in Spoken Language
CHEN Dongshu

ひつじ書房


【内容】
日本語の受身文と中国語の“被”構文に関して、統語的・意味的観点から多くの知見が蓄積されているが、ほとんどは書き言葉を中心とするものであった。本書では、これまで重点的に論じられてこなかった話し言葉における日中受身表現の使用傾向に注目し、その非対称性、述語動詞の類型分布、主語の選択傾向、使用頻度の差などを調査・比較し、意味的機能・談話的機能のどちらをより重視するかという点を軸に、日中受身表現の使用の共通点・相違点の全体像を示した。

【目次】
まえがき

序章 イントロダクション
1. はじめに
2. 本書の位置づけ
2.1 機能的構文論による分析
2.2 使用傾向の全体像の解明
2.3 話し言葉の重視
3. データの収集方法
4. 本書で取り扱う諸概念
5. 本書の構成

第1章 先行研究の整理
1. 日本語の受身文
1.1 受身文の統語的・意味的類型
1.1.1 直接受身と間接受身
1.1.2 昇格受動文と降格受動文
1.2 主語の有情・非情
1.3 動作主の特徴
1.3.1 動作主の標示形式
1.3.2 動作主の明示・不明示
1.4 受身文の談話的特徴
2. 中国語の“被” 構文
2.1 被動の範囲
2.1.1 古代中国語の被動の範囲
2.1.2 現代中国語の被動の範囲
2.2 “被” 構文における被害・中立
2.3 “被” の意味変化
2.4 主語の有情・非情
2.5 “被” 構文の談話的特徴
3. まとめ

第2章 述語動詞からみる日中受身表現の意味的機能
1. はじめに
2. 先行研究
2.1 日本語の受身文の述語動詞
2.2 中国語の“被” 構文の述語動詞
3. 本章の目的
4. 量的調査
4.1 調査方法
4.2 日中受身表現の述語動詞の異なり語数
4.3 日中受身表現の述語動詞の出現数の順位
4.4 他動性と述語動詞の分類
4.4.1 対象への働きかけ性
4.4.2 対象の変化
4.4.3 述語動詞の分類結果
5. 日本語の述語動詞
5.1 強い働きかけ+変化有り類
5.1.1 “被” 構文に対応する場合
5.1.2 “被” 構文に対応しない場合
5.2 強い働きかけ+変化無し類
5.2.1 語彙レベルの迷惑
5.2.2 文脈レベルの迷惑
5.3 弱い働きかけ+変化無し類
5.3.1 感情・態度類
5.3.2 感覚・思考類
5.4 その他
6. 中国語の述語動詞
6.1 強い働きかけ+変化有り類
6.1.1 結果補語無しの“被” 構文
6.1.2 被害の意味との親和性
6.1.3 日本語の「言う」類と中国語の“说” 類の受身表現
6.1.4 心理的・生理的変化を表す述語動詞
6.2 強い働きかけ+変化無し類
6.3 弱い働きかけ+変化無し類
6.3.1 感情・態度類
6.3.2 感覚・思考類
6.4 その他
7. まとめ

第3章 主語の選択からみる日中受身表現の談話的機能
1. はじめに
2. 先行研究
2.1 日本語の受身文と視点
2.2 中国語の“被” 構文と視点
2.3 視点に違反する“被” 構文
3. 本章の目的
4. 調査方法
5. 共感度階層
6. 共感度階層による調査と分析
6.1 被動作者と動作主の人称分布
6.2 日中受身表現と共感度階層
6.2.1 共感度階層に違反している日本語の受身文
6.2.2 共感度階層に違反している中国語の“被” 構文
6.3 日本語の「言う」類の受身文と共感度階層
6.3.1 共感度階層に従っている場合
6.3.2 共感度階層に従っていない場合
7. 共感度階層に関わらない日本語の受身文
8. まとめ

第4章 日中受身表現の使用頻度の差
1. はじめに
2. 先行研究
2.1 日中受身表現の相互の対応状況
2.2 日中受身表現の使用頻度の差異
3. 本章の目的
4. 調査対象
5. 日中受身表現の使用頻度の比較結果
6. 日本語吹き替え音声の受身文に相当する中国語の調査結果
7. 視点の制約
7.1 ウチの視点
7.2 視点の固定
7.3 視点の制約と使用頻度に関する調査
8. 中立の叙述
8.1 受事主語文
8.2 自動詞文
8.3 無対応
8.4 熟語・名詞
8.5 “有” 構文
9. “被” 構文の意味的制限
10. まとめ

終章 結論
1. 各章のまとめ
2. 日中受身表現の使用特徴の全体像
3. 今後の課題

参考文献
あとがき
索引




【著者紹介】
陳冬姝(ちん とうしゅ)
北京外国語大学講師。四川大学外国語学部卒業。大阪大学大学院言語文化研究科(修士課程)・大阪大学大学院言語文化研究科(博士課程)修了。博士(日本語・日本文化)。専門分野は日本語学、日中対照言語学、コーパス言語学。
〈主な論文〉
「日本語の受身文と中国語の“被”構文の意味機能と談話機能—テレビドラマの話し言葉を対象に—」(『日本語・日本文化研究』第28号、2018)、「なぜ日本語の受身文は中国語より多く使われるのか—中日対訳の話し言葉に注目して—」(『間谷論集』第13号、 2019)


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