ひつじ書房 日本語学習から見た〈機能語〉の類の研究 松原幸子著 日本語学習から見た〈機能語〉の類の研究 松原幸子著
2024年11月刊行

シリーズ言語学と言語教育 45

日本語学習から見た〈機能語〉の類の研究

日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の分類に基づいて

松原幸子著

A5判上製カバー装 定価12,000円+税 684頁

ISBN978-4-8234-1149-6

ブックデザイン 三好誠(ジャンボスペシャル)

Study on the Types of Function Words in Learning Japanese: Based on a Classification of Grammatical Samples from Level 1 of the Japanese-Language Proficiency Test
Matsubara Sachiko

ひつじ書房



【内容】
かつて日本語能力試験には「出題基準」というものがあり、そこには1・2級のレベルを示すために‘〈機能語〉の類’のリストが五十音順に掲げられていた。これは現在も有効であると考えられているが、明確な定義や規定はなく、体系的・理論的に論じられることもなかった。本書は1級の‘〈機能語〉の類’の一つ一つを形態論的観点から主に品詞に基づいて分類し、文法的働きを確かめることを通して、その特色と日本語学習上の位置付け、さらに学習の意義を明らかにすることを目指した。


【目次】
序章 はじめに
1. 本書のねらい
2. 日本語能力試験1級〈ʻ 機能語〉の類’について
2.1 日本語能力試験について
2.2 日本語能力試験1級〈‘機能語〉の類’とは何か
2.3 日本語能力試験1級〈‘機能語〉の類’に関する学習・指導上の問題
3. 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’に対する本書の試み


I 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の分類

第1章 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の分類の文法的位置づけ
1. 本書における単語について
2. 本書における機能語について
3. ‘〈機能語〉の類’と「複合辞」、及び、本書における「機能語」の関係について
3.1 〈‘機能語〉の類’と「複合辞」の関係
3.2 〈‘機能語〉の類’と「複合辞」、及び、本書における「機能語」の関係
3.3 本書における〈‘機能語〉の類’に相当する「複合辞」について
4. 本書の具体的な検討方法と目標
5. 単語という観点から‘〈機能語〉の類’を捉えること
5.1 「複合辞」としての捉え方と「単語」としての捉え方
5.2 〈‘機能語〉の類’の語構成と「単語」としての捉え方
5.3 〈‘機能語〉の類’の品詞と表現の関係について
5.4 〈‘機能語〉の類’の選択と表現意図、及び、文の部分との関係について
6. 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の表記法について
7. まとめ

第2章 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’分類にあたっての本書の基本的立場
1. 文の部分(成分)
1.1 文の部分(成分)について
1.2 村木(2010a)による文の部分
1.3 本書における文の部分
2. 品詞
2.1 品詞について
2.2 村木(2010a)による品詞
2.3 本書における品詞
3. 付属辞
3.1 付属辞とは
3.2 本書における付属辞
3.2.1 助辞
3.2.2 文の部分形成にかかわる辞
3.2.3 接尾辞
3.2.4 語尾
4. 本書における活用の語形
5. 文の部分にかかわる要素
5.1 文の部分の形成にかかわる働きをするもの
5.2 文の部分の述べ方にかかわる働きをするもの
6. 文、または文相当の形式の接続型
6.1 終止型
6.2 不定型
6.3 連体型、連体格助辞型、副助辞型
7. 本書における日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の表記

品詞を中心とした日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の分類


II 品詞を中心として分類した日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の検討

日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の検討に用いた用例、及び、説明に用いた略語について

第3章 品詞という観点で捉えるもの(1)—単語であるもの—
1. 中心的な品詞—動詞
1.1 動詞
 即する、相俟つ
1.2 形式動詞
 かかわる、至る
 考察1 「(N に)なる」と「(N に)至る」との表現上の差異
2. 中心的な品詞—形容詞(形式(第一)形容詞)
 ない
3. 周辺的な品詞:自立できる周辺的な品詞—陳述詞(「陳述詞」のうちの「とりたての陳述詞」)
 ただ、ひとり
4. 周辺的な品詞:自立できない周辺的な品詞—後置詞
4.1 格的な意味をもつ後置詞
4.1.1 ニ格支配の後置詞
 あって、至るまで、ひきかえ、まして
4.1.2 ヲ格支配の後置詞
 おいて、もって、身を もって※、もって すれば、もって して、限りに、声を 限りに※、皮切りに(して)/皮切りと して
 考察2 手段・方法の動詞の語形による総合的表現と「名詞+後置詞」による分析的表現
 考察3 〈N1ヲN2ニ〉形式にみられる圧縮性(文の名詞句化、単語化)
4.1.3 ト格支配の後置詞
 あって
4.1.4 ノ格支配の後置詞
 かたわら、こととて、ところを、ゆえ(に)/ゆえの
4.2 とりたて的なはたらきをもつ後置詞
4.2.1 ニ格支配の後置詞
 至っては/至っても、して、したって、した ところで
 考察4 とりたて助辞「は」「なら」「も」「でも」と、とりたて的働きをもつ後置詞「(N に)したって」の関係
4.2.2 ト格支配の後置詞
 きたら、なると/なれば、いえども、あれば、したって
5. 周辺的な品詞:自立できない周辺的な品詞—従属接続詞
5.1 擬似連体節を受ける従属接続詞
 かたわら、そばから、ため(に)/ための、こととて、ものを、ところを、ところで
5.2 擬似連用節を受ける従属接続詞
 したって、あって、あれば、いえ、いえども、思いきや
5.3 従属節の述語に由来する従属接続詞
 最後、早いか、否や
6. 周辺的な品詞:自立できない周辺的な品詞—補助述語詞
6.1 (単純)補助述語詞
6.1.1 動詞型補助述語詞
 やまない、おかない、すまない、たえる、たえない、足る、あたらない、至る、余儀なく する、余儀なく させる、余儀なく させられる、余儀なく される、禁じ得ない
6.1.2 形容詞型補助述語詞(第一形容詞型)
 かたく ない
6.1.3 名詞型補助述語詞
 ものでも ない、ものを、しまつ(だ)、かぎり(だ)、至り(だ)、極み(だ)
 考察5 南(1993)の述語句について
 考察6 文章を書く技法としての〈‘機能語〉の類’の役割
6.2 群補助述語詞
6.2.1 存在動詞系群補助述語詞
 きらいが ある、いったら ない/ったら ない/ったら ありゃ しない
6.2.2 非存在動詞系群補助述語詞
 いう/いった ところ(だ)
 考察7 形式名詞「ところ」について
7. 周辺的な品詞:自立できない周辺的な品詞—とりたて詞
7.1 陳述性とりたて詞
7.1.1 第一陳述性とりたて詞
 おろか、さることながら
7.1.2 第二陳述性とりたて詞
 さることながら、あるまいし
7.2 累加性とりたて詞
 いい、あれ

第4章 品詞という観点で捉えるもの(2)—単語の部分であるもの—
1. 単語の付属辞であるもの
1.1 活用語の活用語形の部分であるもの
1.1.1 動詞の活用語形の部分であるもの
 同時意図形「シガテラ」、並立形「シナガラ」、反復並立形「シツ」、継続的並立形「シナガラニ」、対比的並立形「シナガラモ」、譲歩形「シヨウガ」「シヨウト」「シヨウニモ」「スルト シタッテ」、打ち消し譲歩形「スルマイガ」「スルマイト」「シナイマデモ」
1.1.2 第一形容詞の活用語形の部分であるもの
 並立形「A1ナガラ」、継続的並立形「A1ナガラニ」、対比的並立形「A1ナガラモ」
1.1.3 述語名詞、第二形容詞、第三形容詞の活用語形の部分であるもの
 並立形「N / A2/ A3ナガラ」、継続的並立形「N / A2/ A3ナガラニ」、対比的並立形「N / A2/ A3ナガラモ」、譲歩形「N / A2/ A3デ アレ」、述語名詞、第二形容詞打ち消し譲歩形「N / A2デハ ナイマデモ」
 考察8 日本語能力試験1級〈‘機能語〉の類’の動詞の中止形に見る一つの特徴
1.2 接尾辞
1.2.1 名詞性接尾辞
 - ごとき
1.2.2 動詞性接尾辞
 - めく
1.2.3 第三形容詞性接尾辞
 - ずくめ(の)、-っぱなし(の)、- ならでは(の)、- なり(の)
 考察9 第三形容詞について
1.2.4 連体詞性接尾辞
 - あっての、- ごとき、- たる
1.2.5 副詞性接尾辞
 - がてら、- かたがた、- ながら(に)
1.3 助辞
1.3.1 格助辞
 から
1.3.2 副助辞
 ばかり、のみ、まで
 考察10 接続の型(タイプ)について
1.3.3 とりたて助辞
 (と)は、こそ、すら、だに、たりとも
1.3.4 並立助辞
 なり
2. 複合語を形成する後要素としての語基であるもの
2.1 動詞性語基
 - 極まる、- まみれ
2.2 形容詞性語基
 - 極まりない、- なし(の)
2.3 名詞性語基
 - いかん

第5章 文の部分とのかかわりで捉えるもの
1. 文の部分の形成にかかわる働きをするもの
1.1 述語の形成にかかわるもの(述語形成要素)
1.1.1 述語形成辞
 べからず、のみ(だ)、まで(だ)
1.1.2 述語形成句
 までの こと(だ)、それまで(だ)、それまでの こと(だ)、までも ない、なんだろう/なんで あろう
1.2 規定成分の形成にかかわるもの(規定成分形成要素)
1.2.1 規定成分形成辞
 ごとき、べからざる、まじき、なりの
1.3 修飾成分の形成にかかわるもの(修飾成分形成要素)
1.3.1 修飾成分形成辞
 ごとく、べく、なりに
1.3.2 修飾成分形成句
 なく、なしに、ものとも せず(に)
1.4 状況成分の形成にかかわるもの(状況成分形成要素)
1.4.1 状況成分形成辞
 や、なり
1.4.2 状況成分形成句
 なく して、よそに
2. 文の部分の述べ方にかかわる働きをするもの
2.1 文の部分のとりたて的働きをするもの(とりたて形成要素)
2.1.1 とりたて形成句
 いう もの

第6章 品詞を中心として分類した日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’
1. 品詞
2. 活用
2.1 活用形
2.1.1 動詞の活用形
2.1.2 形容詞、及び述語名詞の活用形
2.2 接続型
3. 表現形式
3.1 文や表現形式の圧縮
3.1.1 文や節の単語化
3.1.2 形式の部分の脱落と圧縮
3.2 慣用表現化、様式化
4. 表現形式の表す機能
4.1 文法機能の特化、及び細密化
4.2 強調
4.2.1 文法的意味の強調
4.2.2 文法形式の強調
4.3 単独の表現形式による複数の文法的働き
4.4 文法形式の複合
4.5 評価・認識の提示
4.5.1 肯定的評価か否定的評価か
4.5.2 積極的評価か消極的評価か
4.5.3 限定的認識の提示
4.6 文法形式上の非明示性
4.7 意味理解上の常識、文脈との共同性
5. 文体
5.1 改まった文体
5.2 硬い書き言葉的文体
5.3 口語的くだけた文体
5.4 文学的文体
5.5 漢文訓読・古文的文体
5.6 文語的文体
6. 述語を構成する日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’に関する考察
6.1 述語を構成する〈‘機能語〉の類’に用いられる単語の性質
6.2 述語を構成する〈‘機能語〉の類’に用いられる単語以下の要素の性質
6.3 述語を構成する補助述語詞の特徴
6.4 述語を構成する〈‘機能語〉の類’が果す文法的機能
6.5 特別なニュアンスを持つ「述語形式に用いられる1級〈‘機能語〉の類’」
6.6 一定の場面で使用される、様式化した「述語形式に用いられる1級〈‘機能語〉の類’」
6.7 まとめ
7. 単語という観点に基づいた日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の品詞、及び文の部分としての働きと、それが形成する文の意味
8. 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’学習の意義

終章 日本語能力試験1級‘〈機能語〉の類’の文法的特徴と日本語学習における位置づけ
考察11 補遺 不定形について

付録資料 『出題基準』に見える‘〈機能語〉の類’の表記と品詞を中心とした‘〈機能語〉の類’の分類の対照表
参考・引用文献
あとがき
索引



著者紹介
松原幸子(まつばら さちこ)
略歴
京都大学文学部卒業。国際電気通信基礎技術研究所(ATR)にて研究員や研修生への日本語指導に従事。姫路獨協大学大学院言語教育研究科言語教育専攻日本語教育領域修士課程修了(修士(言語教育))。ATR での勤務と共に、流通科学大学において非常勤講師として留学生の日本語指導に当たる。2013 年同志社女子大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻、博士(日本語日本文化)学位取得。
主な著書・論文
「日本語の連体詞は少ないか」(『国文学 解釈と鑑賞』第74巻7号、ぎょうせい、2009年)、「上級の日本語のいわゆる文法教育の検討」(『日中言語研究と日本語教育』第4号、好文出版、2011年)、「日本語教育における「文の成分」という視点の導入―「スルように」と「スルために」の指導から―」(『対照言語学研究』第23号、海山文化研究所、2013年)。



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