ひつじ書房 一人ひとりのことばをつくり出す国語教育 府川源一郎著
2022年3月刊行
一人ひとりのことばをつくり出す国語教育
府川源一郎著
定価2800円+税 A5判並製カバー装 352頁
ISBN978-4-8234-1141-0
装丁 渡部文
Japanese Language Education for Cultivating Individual Linguistic Behavior
FUKAWA Genichiro
ひつじ書房
【内容】
国語教育は、ことばによる一人ひとりの自立を支援する教育的営みである。学びの場でそれを具体的に実現するには、どのような準備と考え方とが必要なのか。本書は、この問題を以下の三つの観点から検討する。1.国語科の教育内容の問い直し、2.ことばの学びの成立に関わる事例の考察、3.史的観点からの位置づけの更新。新稿も含めて、著者による最新の成果を集成した創見に満ちた論考集。
【目次】
はじめに
第I部 国語科の教育内容をつくり出す
第1章 多文化共生としての「国語教育」
―外国人児童生徒と学ぶことで拡がることばの世界―
1. 「外国人児童生徒」と「日本語指導が必要な児童生徒」
2. 「国語」の学習と外国人児童生徒の「母語保障」
3. 「国語教育」は,外国人児童生徒の教育,あるいは「日本語教育」から何を学ぶのか
第2章 国語教育と「古典」や「古文」の教育
1. 「謎?」の文章の解読
2. 謎の文章の正体
3. 「古文」と「現代文」
4. 小学校教科書における「文語文」の位置
5. 国語教育における「古文」と「古典」の教育
第3章 国語教育における「伝え合い」活動の基盤
1. コミュニケーションと教育
2. リテラシー研究の展開
3. メディア・リテラシーの教育
4. 身体と言語の教育
第4章 国語科の教育内容としての「方言」
1. 日本人の資格は標準語を話すことである
2. 「学習指導要領」に見る戦後の方言教育観
3. 国語教育における方言と共通語
4. 「学習指導要領」から「共通語で話す」が消えた
5. 国語教育の内容としての「方言」
第5章 授業実践の「事実=現象」はどうとらえられてきたか
―芦田恵之助の「冬景色」の授業と垣内松三の『国語の力』を手がかりに―
1. 芦田恵之助の実践とその記録
2. 垣内松三『国語の力』における分析
3. 「教育実践記録」とその「研究」
第II部 ことばの学びをつくり出す
第1章 「学び」が成立するとき
1. 自分の名前は英語で書ける
2. 「学びの成立」を考える
第2章 教員養成の出発点としての「教育実地指導」の授業
―「教育デザイン」構築への足がかり―
1. 「教育デザイン」の出発点として「教育実地指導」の授業を位置づける
2. 「教育実地指導」の授業の実際
3. 「教育実地指導」から「教育デザイン」へ
第3章 筆談で読む「きいろいばけつ」(もりやま・みやこ)
―ねぇ,この先どうなると思う?―
1. 作者のメッセージ
2. 学習指導の現状
3. 「学習指導書」の記述
4. 「黄色いバケツ」を途中まで読んで考える ― いくつかの例
5. 「きいろいばけつ」の作品構造
6. 「成長」するきつねの子
7. 「きいろいばけつ」の言語表現
8. 作品の特質を踏まえた読みの活動
第4章 分岐展開型作文の可能性
―「お話し迷路」という場の設定―
1. 「お話し迷路」とは
2. 作文活動としての「お話し迷路」
3. メインストーリーのない「お話し迷路」
4. 「お話し迷路」からの出発
第5章 マンガの図像表現と文章表現
―四コママンガ「ののちゃん第8081回」の教材化―
1. 「ののちゃん第8081回」の「オチ」
2. マンガを作文にする活動と大学生
3. 別の学年の大学生の反応と小学生の作文
第III部 史的観点をつくり出す
第1章 今なぜ「国語教育史研究」なのか
―教育場の営みを別の文脈の中に意味づける―
1. 言文一致運動と国語教育
2. 談話書取という方法
3. 自立していく談話文体
4. 修身口授と談話文
5. 幻灯解説の語り
6. 国語教育史研究の可能性
第2章 「文学教育」のアルケオロジー
―小学生と「お話」の受容―
1. 文字を通した「お話」の受容
2. 耳を通した「お話」の受容
3. 目を通した「お話」の受容
4. 「お話」と「教訓」との関係を考える
第3章 作文指導における「自己表現」の展開
―「人間性」と文章表現―
1. 「自己表現」の基盤の構築
2. 「自己表現」の内容(対象)の拡大
3. 「自己表現」の形式の拡大
第4章 明治初期の子ども読み物と教育の接点
―アンデルセン童話とグリム童話の本邦初訳をめぐって―
1. グリム童話の本邦初訳作品
2. アンデルセン童話の本邦初訳作品
3. 国語教科書とグリム童話
第5章 『教育雑誌』に翻訳されたグリム童話
―本邦初訳の15の作品―
1. 『教育雑誌』に掲載された15のグリム童話
2. 『教育雑誌』のグリム童話の原典
3. 『教育雑誌』のグリム童話の翻訳文
4. 『教育雑誌』の性格とその位置
あとがき
索引
【著者紹介】
府川源一郎
(ふかわ げんいちろう)
[略歴]
1948(昭和23)年、東京に生まれる。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。川崎市の公立小学校で普通学級、障害児学級(ことばの教室)担任の後、横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校教諭、横浜国立大学教育人間科学部教授。現在、日本体育大学児童スポーツ教育学部教授。博士(教育学)。日本文学協会、全国大学国語教育学会、日本国語教育学会、日本児童文学学会などに所属。
[主な著書]
『私たちのことばをつくり出す国語教育』(東洋館出版社 2009年)、『明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究—リテラシー形成メディアの教育文化史』(ひつじ書房 2014年)、『「ウサギとカメ」の読書文化史—イソップ寓話の受容と「競争」』(勉誠出版 2017年)など。
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