ひつじ書房 言語学習における学習ストラテジーと動機づけ 理論と実践の創造的キュレーション 大和隆介著 言語学習における学習ストラテジーと動機づけ 理論と実践の創造的キュレーション 大和隆介著
2023年2月刊行

言語学習における学習ストラテジーと動機づけ

理論と実践の創造的キュレーション

大和隆介著

定価5500円+税 A5判上製カバー装 316頁

装丁 杉下城司

ISBN978-4-8234-1116-8

ひつじ書房

Learning Strategy and Motivation in Language Learning: Creative Curation of Theory and Practice
Yamato Ryusuke


【内容】
AIによる翻訳によって外国語学習は不要になってしまうのか。本書は、言語学習の成否に大きな影響を与える「学習ストラテジー」と「動機づけ」に注目して、現代社会が求める、機械翻訳では代替できない統合的コミュニケーション能力を育成する英語教育の在り方について論じる。前半で2つのテーマにかかわる諸理論について創造的キュレーション(知的探索と整理)を行ない、後半では理論に関連した実証的研究を報告し、続いて効果的指導について論じている

【目次】
はじめに

I 基礎となる理論

序章 人類の進化論的視点に立った言語観
1. 言語の誕生と認知革命
2. 言語使用がもたらしたもの

第1章 言語学習に大きな影響を与える言語理論
1. ソシュール・チョムスキー・トマセロ
2. 生成文法と認知文法
2.1 形式と意味の関係
2.2 言語知識のモジュール性
2.3 言語知識の習得メカニズム
2.3.1 生成文法理論の変遷と習得メカニズム
2.3.2 用法基盤言語学による習得メカニズム
2.3.3 両者の論争がもたらしたもの
3. 意識的活動とメタ認知
3.1 作業記憶と長期記憶
3.2 意識の階層性と注意の働き
3.2.1 意識の階層性
3.2.2  注意が果たす役割
3.3 第2言語習得研究における意識の働き
3.4 意識を制御するメタ認知

第2章 学習ストラテジーにかかわる理論
1. 言語の習得と学習ストラテジー
1.1 外国語教授法と学習ストラテジー
1.2 コミュニケーション能力と学習ストラテジー
2. 学習ストラテジー研究の変遷
2.1 研究アプローチの特色と課題
2.2 学習ストラテジーの定義をめぐる論争
2.2.1 心理学的概念の妥当性
2.2.2 ドルニィエによる批判の妥当性
2.2.3 統一的定義への模索
3. 学習ストラテジーの新たな捉え方
3.1 カテゴリー理論応用の可能性
3.2 学習ストラテジー研究の今後の展開

第3章 動機づけにかかわる理論
1. 動機づけが意味するもの
2. 心理学における動機づけ理論
2.1 Maslowの欲求の階層理論
2.2 Deci & Ryanの自己決定を重視した動機づけ
2.3 McAdams & Pals のNew Big Five Model
3. 言語学習における動機づけ理論
3.1 言語習得における動機づけ研究の変遷
3.1.1 社会心理学的アプローチの時代(The Social Psychological Period)
3.1.2 認知・状況的アプローチの時代(The Cognitive-Situated Period)
3.1.3 プロセス重視の時代(The Process-Oriented Period)
3.2 21世紀の動機づけ研究
3.2.1 L2動機づけ自己システム(L2 Motivational Self System)
3.2.2 複雑系理論を土台とした動機づけ

II 実証的研究

第4章 学習ストラテジーの認識にかかわる研究
1. 読解ストラテジーに対する学習者の認識
1.1 研究の背景
1.2 研究課題と方法
1.2.1 研究課題
1.2.2 参加者
1.2.3 読解ストラテジーに関する質問紙とデータ収集
1.3 結果
1.3.1 記述統計
1.3.2 因子分析
1.3.3 使用認識と効果認識のギャップ
1.3.4 2種類の認識と習熟度との関係
1.4 考察
1.4.1 効果認識と使用認識のギャップ
1.4.2 2種類のストラテジー認識と習熟度の関係
1.4.3 効果認識の有用性
1.5 まとめ
2. 作文ストラテジーに対する学習者の認識
2.1 研究課題と方法
2.1.1 研究課題
2.1.2 参加者
2.1.3 作文ストラテジーに関する質問紙の作成
2.1.4 分析方法
2.2 結果と分析
2.2.1 因子分析
2.2.2 使用認識と効果認識との関係
2.2.3 ストラテジー認識と習熟度との関係
2.2.4 ギャップスコアと習熟度との関係
2.3 考察
2.3.1 効果認識と使用認識とのギャップ
2.3.2 ギャップスコアと習熟度との関係
2.4 まとめ
3. 文法規則に対する学習者の認識
3.1 研究課題と方法
3.1.1 研究課題
3.1.2 参加者
3.1.3 材料
3.2 結果と分析
3.2.1 英語学習における重要な要素に対する認識
3.2.2 日本人英語学習者の文法項目に対する困難認識
3.2.3 読解と作文における文法項目有効性認識の差
3.2.4 文法項目の有効性認識と言語習熟度との関係
3.2.5 各文法項目の有効性認識とTOEIC得点との関係
3.3 考察
3.3.1 英語学習における重要項目に関する認識
3.3.2 文法項目に対する困難認識
3.3.3 読解と作文における文法項目有効性認識の差
3.3.4 文法項目有効性認識度と言語習熟度との関係
3.4 まとめ

第5章 動機づけにかかわる研究
1. 動機づけ・学習ストラテジー・学習成果の関係
1.1 研究の背景
1.2 研究課題
1.3 研究方法
1.3.1 参加者
1.3.2 材料
1.3.3 データ収集と分析
1.4 結果
1.4.1 相関分析
1.4.2 因子分析
1.4.3 回帰分析
1.4.4 パス解析
1.5 考察
1.6 まとめ
2. 英語学習者の動機づけの時間的変容
2.1 動機づけのダイナミズム
2.2 英語学習における動機づけの時間的変化の検証
2.2.1 調査1:専攻が異なる学生を対象とした調査
2.2.2 調査2:英語を専攻とする学生を対象とした調査
3. 動機づけの減退要素と先延ばし行動
3.1 動機づけを減退させる要素
3.1.1 参加者
3.1.2 調査方法
3.1.3 分析方法
3.1.4 分析結果
3.2 先延ばし行動に関する考察
3.3 本調査が示唆するもの

III 実践指導と指導モデル

第6章 学習ストラテジーの実践指導
1. 中学での実践:ACTFLモデルに基づいた授業
1.1 背景
1.2 ACTFLモデル
1.2.1 ACTFLモデルの構成要素
1.2.2 ACTFLモデルの授業概念図
1.2.3 効果的学習ストラテジー
1.3 授業実践
1.3.1 授業実践のねらい
1.3.2 学習者の実態
1.3.3 授業内容
1.4 授業実践の結果と考察
1.4.1 学習者の言語表現の変化
1.4.2 学習者の評価
1.5 まとめと課題
1.5.1 成果
1.5.2 課題
2. 高校での実践:メタ認知と文法を重視した授業
2.1 理論的背景
2.1.1 フォーカス・オン・フォーム(Focus on Form)の重要性
2.1.2 言語情報処理におけるFonFのタイミング
2.1.3 言語形式に対する明示的指導の必要性
2.1.4 メタ認知的活動とメタ認知ストラテジー指導の重要性
2.2 授業実践の概要
2.2.1 授業実践のねらい
2.2.2 学習者の実態
2.2.3 授業実践1
2.2.4 授業実践2
2.2.5 授業実践3
2.3 分析の方法
2.3.1 文法に関する確認テスト
2.3.2 質問紙による参加者の意識調査
2.4 結果と考察
2.4.1 実践1(Focus on Formを重視した指導)の効果
2.4.2 実践2(メタ認知活動を加えた指導)の効果
2.4.3 実践3(継続的指導)の効果
2.5 まとめと課題
3. 小学校での実践:SOLTを活用した授業
3.1 背景
3.2 研究1
3.2.1 目的
3.2.2 授業の内容
3.2.3 材料と手順
3.2.4 結果
3.2.5 結果の解釈
3.3 研究2
3.3.1 目的
3.3.2 材料
3.3.3 手順
3.3.4 結果
3.4 まとめ

第7章 学習ストラテジーと動機づけを重視した指導
1. 海外での学習ストラテジーを重視した指導
1.1 Wendenモデル
1.2 The Tapestry Approach
1.3 Rubin and Thompsonモデル
1.4 CALLA(Cognitive Academic Language Learning Approach)
1.5 SBI(Strategy-Based Instruction)モデル
1.6 メタ認知モデル
1.7 方略的自己調整モデル
1.8 海外の指導モデルが示唆するもの
2. 日本での学習ストラテジーを重視した指導
2.1 学習指導要領と学習ストラテジー
2.2 学習ストラテジーを取り入れた授業づくり
2.2.1 ストラテジーは使いながら身につける
2.2.2 ストラテジーの指導がタスク中心の授業を生かす
2.2.3 タスクとはどのようなものか
2.2.4 学習ストラテジーがタスク中心の授業の質を高める
2.2.5 タスクに合わせた学習ストラテジー指導の流れ
2.2.6 どのような学習ストラテジーを指導するか
2.3 メタ認知を重視した指導モデル
2.3.1 誰もが優れた学習者になれる
2.3.2 各ステップの指導
2.3.3 教員の役割
2.4 まとめと課題
3. 動機づけを高める指導に必要な要素
3.1 想像力の役割と重要性
3.2 学習者の自律性を育てる重要性

第8章 令和の時代に求められる言語教育
1. 言語教育とキャリア教育
1.1 キャリア教育の現状と課題
1.1.1 キャリア教育とは
1.1.2 キャリア形成に対する学生の意識
1.1.3 キャリア形成に必要な資質と能力
1.2 外国語教育の変遷と課題
1.2.1 英語教育の変遷とキャリア形成
1.2.2 英語教育が育成すべき能力
2. 統合的コミュニケーション能力と新たな指導モデル
2.1 仮説1: 統合的コミュニケーション能力
2.2 仮説2: 新たな指導モデル
3. 仮説の検証
3.1 パイロットスタディ1:キャリア志向と英語力
3.1.1 目的
3.1.2 方法
3.1.3 分析
3.1.4 結果
3.1.5 考察
3.2 パイロットスタディ 2:学習者のナラティブ分析
3.2.1 目的
3.2.2 方法
3.2.3 参加者
3.2.4 分析
3.2.5  結果
3.2.6 考察
4. まとめと課題

受託研究補助金一覧
参考文献
あとがき
索引

   


【著者】大和隆介
[略歴]
石川県生まれ。1982年上智大学文学部英文学科卒業。1991年インディアナ大学大学院(ブルーミントン校)修士課程修了(MA:言語学)。中学・高校で12年間教鞭を執った後、北陸大学専任講師、岐阜大学准教授を経て2007年より京都産業大学教授、現在に至る。
[主な編著書・訳書]『言語学習と学習ストラテジー:自律学習に向けた応用言語学からのアプローチ』(共編著、リーベル出版、2005年)、『英語教師のための「学習ストラテジー」ハンドブック』(共編著、大修館書店、2006年)、『イスラームと民主主義』(共訳、成文堂、2000年)



ご注文は、最寄りの書店さんでお願いします。
お店に在庫が無くても、お取り寄せができます。 書店が最寄りにない場合は、オンライン書店でご注文ください。

 

 



お急ぎの場合は、小社あてにご注文いただくこともできます。
郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をメールか、FAXでお知らせください。
新刊案内へ
ひつじ書房ホームページトップへ