テキスト計量の最前線 データ時代の社会知を拓く 左古輝人編 テキスト計量の最前線 データ時代の社会知を拓く 左古輝人編
2021年2月刊行

テキスト計量の最前線

データ時代の社会知を拓く

左古輝人編

A5判並製カバー装 176頁 定価2,800円+税

ブックデザイン  三好誠

ISBN 978-4-8234-1072-7

ひつじ書房

Cutting Edge Text Analytics: The Japanese Latest Studies in Humanities and Social Sciences
Edited by Teruhito Sako


【内容】


近年、計読(テキストマイニング、テキストアナリティクス、計量テキスト分析、質的データ分析)は人文・社会科学の多岐にわたる領域で応用が進みつつある。本書は単なるハウツーではなく、具体的な課題に計読の諸技法を本格的に適用した研究成果を集めた。思想史・概念史、学説研究、ジャーナリズム言説の分析、研究者ネットワークの分析など、研究会での議論を通じた切磋琢磨を経て、現代日本の計読研究の規準を提示する。
執筆者:河野静香、左古輝人、鈴木努、橋本直人、樋熊亜衣、前田一歩


【目次】



左古 輝人
1. 計読の提案
2. オープンソースの形態素解析器と計読ソフトウェアの展開
3. 計読私譚―1990年代半ば
4. 計読私譚―1990年代終わり
5. 計読にかかわる素朴な疑問―2000年代以降
6. 計読コミュニティの形成―2010年代
7. 計読の近未来

新自由主義の探究―日英の比較から―
左古 輝人
1. はじめに―新自由主義の迷路
2. 近代世界の重要アンブレラ・ターム―国家、社会、資本制
3. 20世紀の4つの新自由主義
3.1 戦前日本新自由主義
3.2 戦後ドイツ新自由主義
3.3 反ケインズ新自由主義
3.4 ホブソン新自由主義
4. 図書と逐刊の題目による全体の概観
4.1 21世紀新自由主義の理念型
4.2 1910年代から2010年代までをおしなべた日英比較
4.3 1910年代から2010年代までの、経時的な日英比較
5. 各時期における諸特徴の掘り下げ
5.1 英語における統治対象の変化―ラテン・アメリカから地球へ
5.2 日本における新自由主義政策の焦点化―労働と教育
5.3 ハーヴェイとフーコー
6. まとめと展望

マックス・ウェーバーにおける「暴力Gewalt」概念
―「権力Macht」「支配Herrschaft」との対比から―
橋本 直人
1. 本章の目的と背景
2. 分析の対象とすすめ方
3. 分析の実行
3.1 テキストの確定
3.2 《Gewalt》の比較対象としての《Macht》《Herrschaft》の妥当性
3.3 《Gewalt》《Macht》《Herrschaft》3 語群の比較―共起ネットワークに
おける《Herrschaft》と《Gewalt》《Macht》との差異
3.4 《Gewalt》と《Macht》との比較―共起78語群との出現頻度の相関における差異
4. 計量分析を踏まえたウェーバー解釈とその射程

新聞記事にみる近代東京・都市公園の話題変遷
― 長期・記事見出しデータへのトピックモデルの適用―
前田 一歩
1. はじめに
1.1 都市公園の利用・受容という研究対象
1.2 本章の分析対象
1.3 本章の構成
2. 研究方法
2.1 分析に使用するデータセット
2.2 トピックモデルの方法と意義
3. 分析結果―都市公園のトピック
3.1 上野公園のトピック
3.2 日比谷公園のトピック
4. トピックの変遷―変わったこと、変わらないこと
4.1 啓蒙から社会教育・行楽の場へ、「猥雑さ」の縮小
4.2 国威発揚から社会運動の場へ
4.3 都市公園利用者としての子どもの登場
5. おわりに

近代日本社会におけるSelf-Starvation の歴史
―摂食障害の形成以前を中心に―
河野 静香
1. はじめに
2. SS事例の抽出
2.1 資料の選定
2.2 分析手法と手順
2.3 初歩的な分析と仮説の導出
3. 第1期におけるSS記事本文の内容分析
3.1 宗教の文脈でのSS事例
3.2 政治の文脈でのSS事例
3.3 医療の文脈でのSS事例
3.4 精神病や狐憑病とされるSS事例の登場
3.5 自殺の文脈でのSS事例
3.6 美容・健康の文脈でのSS事例
3.7 その他のSS 事例
4. 第2期と第3期の概要
4.1 第2期[医療、教育、フェミニズム]
4.2 第3期[医療、依存、福祉]
5. おわりに

婦人運動とウーマン・リブとの架橋
―「日本婦人問題懇話会」の会報にみるリブへの共感と距離感―
樋熊 亜衣
1. 問題設定
2. 分析方法/対象
2.1 ミニコミの分析
2.2 テキストマイニングという手法
2.3 対象のグループ
3. 1970 年代ウーマン・リブの台頭
3.1 既存の婦人運動への批判―求められる女性解放
3.2 リブの主張した「女性解放」
4. タイトルにみるリブと懇話会の問題関心
5. 1960年代から70年代の「女性解放」の変遷
5.1 抽象的な「女性解放」―1965–1969年(1–11 号)
5.2 問い直される「女性解放」―1970–1974年(12–21 号)
5.3 「女性解放」の進め方―1975–1980(24–30号)
6. リブへの共感と距離感
7. 結語

安全保障技術研究推進制度の助成を受けた研究者のネットワーク可視化
―KAKENデータベースを用いて―
鈴木 努
1. 構造探索のツールとしての計量分析
2. 科学研究と軍事研究
3. KAKENデータベースの利用
4. 共同研究者ネットワークの作成
5. ネットワーク構造による分類
6. おわりに




【編者紹介】
左古 輝人(さこ てるひと)
東京都立大学 人文社会学部 教授
主要業績:「近世英国におけるSocietyの形成─テキストマイニングによる分析」『社会学評論』68(3)(日本社会学会、2017年)
『秩序問題の解明─恐慌における人間の立場』(法政大学出版局、1998年)


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