ひつじ書房 壁塗り代換をはじめとする格体制の交替現象の研究 位置変化と状態変化の類型交替 川野靖子著 ひつじ書房 壁塗り代換をはじめとする格体制の交替現象の研究 位置変化と状態変化の類型交替 川野靖子著
2021年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第179巻

壁塗り代換をはじめとする格体制の交替現象の研究

位置変化と状態変化の類型交替

川野靖子著

定価5800円+税 A5判上製函入り 296頁

白井敬尚形成事務所(ブックデザイン)

ISBN 978-4-8234-1062-8

ひつじ書房

Locative Alternation and Other Related Phenomena in Japanese: An Analysis Based on a Hierarchical Model of Semantic Verb Types
Kawano Yasuko


【内容】
「壁にペンキを塗る/壁をペンキで塗る」のような格体制の交替現象は、壁塗り代換と呼ばれ広く知られているが、この現象はどのような仕組みで起こるのか。本書では、壁塗り代換とその関連現象を体系的に記述し、「意味類型の階層モデル」を用いて成立原理の統一的な説明を試みる。英語のlocative alternation研究との比較、ヴォイスや多義語との原理的な相違にも議論が及ぶ。一冊まるごと現代日本語の壁塗り代換を論じた、初の研究書。
〈日本学術振興会助成刊行物〉


【目次】

序章 本書の目的と概要
1. 研究対象
2. 本書で明らかにすること
 2.1 交替の成立条件と成立原理の解明
 2.2 4 種類の交替現象の体系的記述
 2.3  文法体系における、格体制の交替現象の位置づけの明確化
3. 構成
4. 格体制の交替現象を研究することの意義

第1章 付着移入型壁塗り代換—「壁にペンキを塗る」「壁をペンキで塗る」
1. はじめに
2. 〜ニ〜ヲ形と〜ヲ〜デ形の意味類型:位置変化と状態変化
3. 交替動詞と非交替動詞の違いを明らかにする方法
 3.1 先行研究の問題点:条件の記述になっていない
 3.2 「意味類型の階層モデル」の提案
4. 交替動詞の条件
 4.1 交替動詞が表す位置変化のタイプ:依存的転位
 4.2 交替動詞が表す状態変化のタイプ:総体変化
 4.3 交替動詞の条件(まとめ)
5. 交替が起こる仕組み
 5.1 意味類型の交替
 5.2 条件の背景
6. まとめ
補節1:壁塗り代換における事態の類型化
補節2:条件の記述方法に関する本書の考え方

第2章 餅くるみ交替—「桜の葉に餅をくるむ」「餅を桜の葉でくるむ」
1. はじめに
2. 壁塗り代換と餅くるみ交替:2 つの交替パターン
3. 格成分の対応の仕方はどのようにして決まるのか
 3.1 交替パターンを決定する意味階層
 3.2 「依存的転位」の分析
 3.3 「総体変化」の分析
4. 壁塗り代換と餅くるみ交替の両方を起こす動詞
 4.1 「巻く」
 4.2 「埋める」「埋まる」
5. まとめ

第3章 交替動詞と非交替動詞の間
1. はじめに
2. 「詰める」
 2.1 現象の確認
 2.2 許容度が揺れる理由
3. 「覆う」
 3.1 現象の確認
 3.2 許容度が揺れる理由
4. 「囲う」
5. まとめ

第4章 離脱型壁塗り代換—「グラスから水を空ける」「グラスを空ける」
1. はじめに
2. 「テーブルを片付ける」はメトニミーか
3. 離脱型壁塗り代換が起こる仕組み
 3.1 交替動詞が表す位置変化のタイプ:依存的転位
 3.2 交替動詞が表す状態変化のタイプ:総体変化
 3.3 壁塗り代換(付着移入型、離脱型)の体系的記述
4. まとめ

第5章 満ち欠け代換—「彼には積極性が欠けている」「彼は積極性に欠けている」
1. はじめに
2. 〜ニ〜ガ形と〜ガ〜ニ形の意味類型
3. 壁塗り代換との共通点
 3.1 「乏しい」「欠ける」が表す「存在・非存在」の特徴
 3.2 「乏しい」「欠ける」が表す「状態」の特徴
 3.3 「 満ちる」「あふれる」が表す位置変化、状態変化の特徴
 3.4 壁塗り代換との共通点(まとめ)
4. 壁塗り代換との相違点
5. まとめ

第6章 位置変化動詞文と状態変化動詞文の交替現象の全体像と体系—第1章〜第5章のまとめに代えて
1. はじめに
2.  交替動詞の条件と交替の成立原理:「意味類型の階層モデル」による説明
 2.1 交替の可否を決定する意味階層
 2.2 交替パターンを決定する意味階層
3. 現象の全体像
4. 交替の型はなぜ3つなのか
 4.1 格体制の違い
 4.2 対応関係
5. Ⅱ型とⅢ型に「餅くるみ」タイプがないのはなぜか
6. まとめ

第7章 「意味類型の階層モデル」の特徴と有効性—英語のlocative alternation 研究の枠組みとの比較から
1. はじめに
2. Pinker(1989)
 2.1 概要
 2.2 問題点
3. Levin(2006)
 3.1 概要
 3.2 問題点
4. Iwata(2008)
 4.1 概要
 4.2 問題点
5. 本書の枠組みとの比較
 5.1 交替動詞の条件の記述方法
 5.2 設定している意味階層
 5.3 「 意味類型の階層モデル」のさらなる有効性:餅くるみ交替とin-with alternation
6. まとめ

第8章 なぜ壁塗り代換はヴォイスのカテゴリーに入らないのか
1. はじめに
2. 先行研究、及び論点の整理
3. 事態の同一性
4. 格形式の交替
5. 動詞の語形
6. 自他同形と壁塗り代換はどのように区別されるか
7. まとめ

第9章 交替動詞と多義語の違い
1. はじめに
2. 交替動詞は多義語なのか
3. 交替動詞と多義語の違いは何か
 3.1 交替動詞
 3.2 多義語
4. 本書とは異なる見解
5.  複数の交替を起こす動詞:「埋める」「巻く」「あふれる」
6. まとめ

終章 本書のまとめ

付章1 位置変化動詞文における格成分の語順
1. はじめに
2. 先行研究
 2.1 概要
 2.2 問題点
3. 内省に基づく予測
4. 調査
 4.1 調査の概要
 4.2 調査結果
5. 考察
 5.1 代換動詞の扱い
 5.2 現象の背景
6. まとめ

付章2 壁塗り代換に関する疑問に対して本書の立場と見解
疑問1:壁塗り代換のような事例は、単なる偶然なのではないか。
疑問2: 交替動詞とされる動詞でも交替を起こさない場合がある。だから、交替動詞と非交替動詞の区別などないのではないか。
疑問3:「 壁にペンキを塗る」と「壁をペンキで塗る」で意味が異なるのであれば、「交替現象」とは言えないのではないか。
疑問4: 〜ニ〜ヲ形と〜ヲ〜デ形の意味の違いは、「部分的」か「全体的」かにあるのではないか。
疑問5:「 庭に花を植える/庭で花を植える」「犬に鎖をつなぐ/犬を鎖でつなぐ」のような事例は、壁塗り代換や餅くるみ交替に入らないのか。
疑問6: 壁塗り代換は、修辞法の「代換」とどのような関係にあるのか。

参考文献
既発表論文との関係
謝辞
事項索引
語彙索引


【著者紹介】
川野靖子(かわの やすこ)
1975年生まれ。群馬県出身。埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授。筑波大学大学院文芸・言語研究科言語学専攻(日本語学)修了。博士(言語学)。福岡女子大学文学部専任講師、准教授、埼玉大学教養学部准教授を経て、2015年より現職。


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