知のパラダイム変化

堀 渡さんから、11月20日のシンポジウムに頂いたアンケートに以下のように書かれていた。アンケート自体については公開しても良いということなので、アンケートとして公開すると同時に優れた問いかけであるのでそれに答えるかたちで議論を進めたい 
本日一番面白かったのは、各講師がもたらす「情報」より「図書館を作りなおす
(草 稿バージョン)」という配布物です。パッチワークではありますが、この位
の事は見 えている時代の切れ目だよな、という気がします。
ただし、「ひつじ書房」というのは学術出版社ですよね。
「良書主義」でもなく、アメリカ型の情報拠点としての図書館をまねきよせよう!
というアジテーションの根拠、アイデンティティがよく見えません。
松本という人の自己総括は?
図書館は総括が必要だと思い、タイムリーなのですがこういう単線(?)的な「進 
化」が回答かどうかはまだわかりません。また来ます。

>ただし、「ひつじ書房」というのは学術出版社ですよね。
>「良書主義」でもなく、アメリカ型の情報拠点としての図書館をまねきよせよう!
>というアジテーションの根拠、アイデンティティがよく見えません。
>松本という人の自己総括は?

私の文章を面白く読んでくれたことは、感謝しますが、この点について考えてみた
いと思います。

堀さんは

     →       →
良書主義 │  娯楽図書 │ ビジネスなどなどの実用的資料データベース│
─────┼───────┼─────────────────────┤
学術書  │ ミステリー │ 実用情報                │
     │       │ 市民のための情報            │
専門書  │ベストセラー │                     │
─────┴───────┴─────────────────────┘


という流れで理解されています。
(※ 後日お会いして、かなり近い認識であることが分かりましたが、ここでは
議論を進める都合上、勝手に仮定しておきます。)

私は違うのです。


     →       →
良書主義 │  娯楽図書 │ ビジネスなどなどの実用的資料データベース│
─────┼───────┼─────────────────────┤
教育的  │ 暇つぶし  │ 生きていくのに必要なもの        │
─────┼───────┼─────────────────────┤
啓蒙書  │ ミステリー │ 実用情報(健康・医学・comsumor report等 │
講座物  │       │ 市民(活動)のための情報        │
入門書  │ベストセラー │ 専門的な情報(学術書の一部はここに入る)│
全集   │ヤングアダルト│ 地域の情報(ミニコミ・地域誌・民話など)│
     │       │ 特許・法律・コンサルティング      │
─────┼───────┼─────────────────────┤
岩波・平凡│講談社・集英社│ NPO系・ミニコミ系・ビジネス系    │
社・筑摩 │早川書房・コミ│ 学術系・芸術系出版社          │
晶文社  │ック系    │ 非啓蒙的出版社<ここにひつじも入ります>│
─────┼───────┼─────────────────────┤
 一部  │子ども・主婦 │ 市民(起業家・非学校的学習者・専門家  │
     │サラリーマン │ 起業家予備群・職人・芸術家・ライター) │
─────┼───────┼─────────────────────┤
館内閲覧 │ 貸出    │ リフェレンス・生産・ナビゲーション   │
─────┼───────┼─────────────────────┤
     │ 出版社と図書│ 情報生産者(書き手・出版社・ミニコミ制作│
     │ 館は非協力 │ 起業家予備群・職人・芸術家・ライター) │
     │       │ と図書館は協力関係           │
─────┴───────┴─────────────────────┘

このように考えますと堀さんという方 であっても、「単線(?)的な「進化」」と
考えているのは、堀さんの方で、1960年代的なパラダイムで考えているように見え
ます。

図書館病の根は深いのです。

これは私設電子公共図書館の青空文庫(www.aozora.gr.jp)の富田さんの考えが
そも そも貸出(+閲覧)中心主義であることからも分かります。

収録しているものが

(純)文学ばかりであること
現在のトピック(問題・課題・経営)に関して役に立つ資料がない
読むことができる閲覧だけ
リファレンスはない
無料絶対主義

富田さんは1950年代生まれですが、実際にやっていることは、貸出中心主義の図
書館なのです。

これだけ、根をはっている「病」であるということは、前川さんの個人の責任でも
ないし、前川さんが前川主義とは違うことを言っていたとしても、実はあまり関係
がありません。

1960年〜1990年までをおおっていたかなり普遍的なパラダイム、思考方法なのだ
ろうと思います。

さらにつけ加えるなら

   貸出中心主義の前提

情報は上の方からでてくるものである →市民が作る
情報は特権的な物である       →市民の情報が重要
情報は中立的な物である       →情報は非中立・メディアリテラシーが必要
問題は、流通である         →生産過程も問題
情報生産者はもうかっている     →儲かっている人は少数
情報はただで配布してよい      →全部がただだと困る
情報生産に援助する必要はない    →情報生産は援助される必要がある
読者は経済的に弱者である      →いつも弱者だとは限らない・作り手の方が
                    脆弱である場合がある

前川さん個人ではなく、「1960年〜1990年までをおおっていたかなり普遍的なパ
ラダイム」自体が問題なわけです。