ひつじの初志

はじめまして。オンラインのひつじ書房です。


日本の言語学の改革期に立ち会いたいという気持ちと言語学から人文科学自体を、再構築する手助けをしたい―といういわば、編集者としては、出すぎた確信から、これまでにない研究書の専門出版社を出発させた。もち ろん、研究の革新それ自体は、編集者の、そして出版社の任務でも何でもなく、われわれはその企ての手伝いをするという企てを実行するに過ぎない。

われわれは、あくまで、研究された成果の公開の手助けをするに過ぎない 。いたってささやかなことをすることができるだけだ。しかし、また、言語学者チョムスキーの学説が、アメリカの出版社で断られた後、オランダのムートン社から、刊行されることによって、新しい言語学が、広まっていったように、出版社が、公開の場として機能することが重要な役割を持つという機会もある。これは、チョムスキーの例にとどまらず、日本でも、優れた著者を出版社が後押しするということは、それほど頻繁ではないにしても、あることではある。私たちのしたいことはそういうことだ。(ムートンのフランス語読みの意味「ひつじ」を社名に勝手につけさせていただいた。)

だから、出版社にとって一番の使命は、重要な成果を公開する器になることであり、器をつくるということである、と少なくとも私は信じる。この場合、出版社一般ではなく、研究書を出す出版社にとってはと、いっておいた方が、正確だろう。器でなく、道といってもよい。海外の研究動向の輸入ではなく、オリジナリティ溢れる研究書を刊行しようとしたとき、当然ながら茨の道が待っていたわけだ。承知の上だ。だが、目はある(はずだ)。その目のひとつが、インターネットの可能性であり、そうであるからこそ、我々のようなマイナーである研究書の専門出版社が、インターネットにホームページをもつのである。

道を作ろう! 十分な情報を日本国内ででも流すことの困難な専門出版社が、情報を発信したいがためにインターネットに参加するゆえんである。そしてまた、日本国の外からも、情報を見ることのできるこのホームペー ジという場所が、輸入超過著しい学術情報の日本からの発信に役立つことを願うものである。いったい、欧米の刊行物をクレジットカードで、すぐに簡単に買える時代に、海外に本を情報を送りにくさといったら、いったい何なのであろうか! われわれのような弱小な企業には、通信販売のクレジットカードは、集金方法としては使用できないし、一方、アメリカの郵便局には郵便振替のシステムが無く、小切手を送るという非現実的な方法しかない(日本円に替える手数料が、数千円!)。デジタルキャッシュの実現はいつのことか。かような経済的な機構の問題ばかりでなく、心理的な障害、距離の障害はいままでかなりおおきなものであった。しかし、アメリカまで7万円程度で行って帰ってこられる時代である。沖縄と北海道を往復するより安いのである。それがまして、ホームページなら・・・。もちろん、問題は、公開するに足る内容があるかどうか、ということであり、道は、二次的な問題に過ぎない。道を本当の意味で作るのは、優れた研究内容と合い携えてということだ、「道を作ろう」。

ともかくもできることをしよう、あせらず、あきらめず、しぶとく。我々のホームページは、将来的に、言語学を中心とした人文科学の成果を、国内外を問わず発信できるようになるということの日々の実践であるとともに、また、実験でもある。専門書の刊行に困難が伴うのは、日本ばかりではない。日本人以外の研究者の本も出すことにしている。オンラインが、ちっぽけな出版社の事業に実効ある成果を生み出してくれるか、どうか。研究を行う人、読む人の絶大なる支援をお願いする次第である。

房主


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