96年の反省と97年にすること

96年は、個人的には、子どもが生まれるなど希望に満ちた年でした。しかし、今まで支えてくれてきた妻が、その結果、前面から退いてしまうことで、いくつかの問題点を浮き彫りにした年であったとも言える。年賀状を作る余裕もなかった。義理を欠くくらいに余裕がないということは、やはり問題だ。

房主の欠点は事務処理能力のないことだが、前もって分かっていることでありながら、対策をとっていなかったことが、多くの問題を引き起こした。

刊行点数も増えた中で、事務的な処理や販売・営業上の仕事、新しい企画を作ること、仕事に入った企画の進行方法など、十分でない点が非常に多い。また、年度ごとの経済計画の立て方にも問題があった。

インターネットがらみの新しい展開を迎えようとしている折でもあり、経営的にきちんとすることは、非常に重要である。浮かれすぎていると21世紀になる前に、つぶれてなくなってしまう恐れもある。それでは何のためにここまで苦労して築いてきたのか意味がなくなってしまう。経営的に基盤を整えるとともに新しい展開についても考える時だといえる。

96年はインターネットと出版がらみで話もしたし、津野さんや何人かに紹介もしてもらった。『マックで中国語』、『ネチケット』と、パソコン関係、ネットワーク関係と新たな展開を進めた年であった。これは21世紀に向けて必要な展開であるし、これはこれで評価できると思っているが、21世紀志向で、21世紀になる前にこけたら冗談にもならない。生き延びねばならない。

1 日本語研究叢書をきちんと刊行すること。

これが出来ない年は、経済的にも刊行ペースも縮小しなければならない。96年はその点で失敗した。執筆予定者には、くれぐれもきちんと催促しなければならない。95年は山梨先生、工藤真由美先生と2人の著者に本を出していただき本当に助かった。経済的にも、出版の初志からいっても、このシリーズが出ないと困る。それにしても第1期、第2期の原稿をくれない著者は本当に困ったものである。約束は守ってもらいたいと思う。97年は催促は厳しくすることにする。

2 パンフレットなどの宣伝のための資料をきちんと作ること。

また、予約して下さっている方に、正しく情報を流さなければ商売としての道にはずれる。この予約者のおかげで成り立っているのであるから。宣伝の資料と予約者のためのフォローは、97年は大幅に改善する。今年は、新しいシリーズを、3つスタートする。


3 仕事の整理をすることと自社内DTPによる製作の比重を増やすこと。

取引先の支払い条件が、いままで、ある時払いということで、かなり恩恵を受けてきていたが、その条件がなくなっているのに、昨年までと同じ気持ちで発注してしまったのは失敗であった。自社内で作成する比重を増やす。利益が上がりにくいものをDTPで作るという気持ちもあったが、今年は利益の上がりにくいものは仕事をしないことにする。利益の上がりうるものもDTPで作るということ。当然、人手も必要であるから、作る本の数自体を減らすことになる。優先順位、仕事の進め方を考え直す。今ある借入金を70パーセント返却するまではこの方針を取る。(現状以上の借入金が不可能であるので)DTPに今まで以上に、本腰を入れるわけだから、関連して、ストレスのない組版ルールの研究も行うことになろう。

4 会計、在庫管理、予約の管理にパソコンを導入する。

本を作るのにはマックを使っているが、会計はコクヨでやっている。今年は、もっと簡単にきちんと基礎的な管理が出来るようにする。

5 新しい学術情報の製作・編集・公開の仕事を開始する。

DTPからアドビのアクロバットによるPDFというパソコンのプラットフォームに依存しない表示・印刷形式を使って、学術情報をオンラインで公開できる技術を使って、大学における学術情報の公開をお手伝いする仕事を行う。年度が変わった時点で、営業活動を行わう。

6 これからの出版のあり方についての意見を公開する。

本というかたちが可能かどうかはまだ分からないが、まとまったかたちで、意見をまとめてみたい。組版ルールが、レイアウト中心のデザイナーに決められてしまって、そのくせ書籍編集者がちっとも発言しないことにしろ、文部省の学術情報公開助成行政にしろ、おかしなところが、少なくない。97年あたり、声が必要だと思うからである。また、学術書というと岩波という間違った考えが今でも多くある。啓蒙主義から新しいオリジナルな研究を創出する流れへの変革についても説明したい。

7 今年こそはアメリカ言語学会に行く。

この冬も行けなかった。97年の夏のセミナーは、日本語・朝鮮語学会も併設だということだ。場所もコーネルだということだから、97年こそは行きたい。アメリカからは郵便為替が使えることが、やっと判明したので、商売も可能であることも分かってきた。


新しい3つのシリーズ

日本語研究叢書第3期 仁田・村木編

第3期は、テクスト論、ディスコース研究をメインテーマとして、新しい日本語の研究を探る
 西山祐司・杉戸清樹・日比谷潤子・松本泰丈・野村眞木男・藤田弘幸


認知とことばと社会(仮題) 佐伯・茂呂編

ことばは、言語学の専売特許ではなく、人文科学の重要なトピックである。ここでは、ことばに関係する認知科学的研究、心理学、教育学、エスノメソドロジー、言語人類学などの視点から、ことばと社会、身体を考え直す単行本のシリーズを開始する。このシリーズにはヴィゴツキーなどの最近とみに関心が復活している学説の翻訳なども含み、新しい独自の研究をモノグラフ的に本にできる基盤となることをもめざしている。


認知言語学論集(年次) 山梨ほか


日本語学・英語学・言語学などの若手の研究者の斬新な論文集。第1期は、現在のところ5巻を予定しており、1巻は1年に1冊をベースとする。若手の研究者を育てることのできるシリーズとなることをめざしている。

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