【ひつじ通信 5-9 】「学術書の出版の仕方」値段の決め方 1 プロジェクトとして見る ひつじ通信の中から、会員向け丸秘情報以外の一般的に公開できるものだけを掲載します。

Hituzi Syobo News 【ひつじ通信 5-9】「第5回「学術書の出版の仕方」オンライン講座

2003.9.24発行
☆☆☆転載可☆☆☆


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「学術書の出版の仕方」の第5回です。
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値段の決め方 1 プロジェクトとして見る

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本を作るということにはいろいろな意味がありますが、ここでは経済的な規模の視点で見ます。1冊の本を作ることをひとつの経済的なプロジェクトとして見ると、300ページほどの分量の本を1冊作る場合、いろいろ計算をしてみると800万円くらいの経済的な規模がほしいということになります。800万円のプロジェクトが出版社としてなりたつラインのひとつです。1冊が5000円で、1600部で、800万円となります。計算式で表しますと以下のようになります。

5000円×1600部=800万円

この数字の根拠は、編集者が生きていける裏付けになる給料です。どのくらいの規模のものを何冊くらいつくり、トータルでどのくらいの経済規模のものをつくれば生きていけるかということです。年収が諸経費を含んで360万として、1冊作って7.5パーセントがその給料とした場合、編集者が一年に作れる本が6冊とすると、1冊のプロジェクトあたり800万円となります。実際には800万円よりも小さな掲示規模の本も刊行することもありますので6冊以上作ることも多く、一人あたまの冊数はもっと多く10冊ほどになりますが、6冊で800万円の規模を目標として考えたいと思っています。

800万円×6冊=4800万円

一人の刊行目的総額が、このようになります。

ひつじ書房では、800万円を中心として上と下に二つのラインをもうけ、3つのラインを想定しています。一つのプロジェクトで1200万円以上のもの、800万円の中核ライン、500万円のミニマムラインです。ミニマムラインよりも規模の小さいものも行わないわけではありませんが、規模の小さいものを続けて出していますと、仕事をしても仕事をしても経営が安定しなくなってしまいます。このような理由から、刊行する部数が1000部の場合、2000円台で本を作ることがなかなかできないのです。

給料が300万台として計算しましたが、数年たってベテランになれば、それでは少ないと思います。この点については、全体的な経営に関することですので、今回は立ち入りません。ただ、個々人と会社として編集の技能を向上していくと同時に経営のむだをはぶくなど経営的な努力がなければ、出版を営む上での「正当性」がないということは強く感じます。編集者と出版の専門性をどのように積み上げるかということが私たち自身の重要な課題になると思っています。

このような経済的な規模について申し上げた理由は、2つあります。出版社が継続的になりたつためには一定の経済的な規模が必要であることを知っていただきたかったということです。一年間に一定の部数を刊行して、それが実際に売れることで、出版社の経営や編集者の給料が生み出されます。書籍がある規模の経済の大きさで刊行されることが必要です

研究者の方に書籍の刊行と販売の経済がわかりにくいと思いますのは、研究費や給与のように、予算化されて、支払われるというものではないという点ではないでしょうか。本という商品の経済は、作られて売れなければなりたたないのです。

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【今年申請をお考えの方必見です】

日本学術振興会のHPに平成16年度科学研究費補助金の公募について、 アップされました!

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「平成16年度科学研究費補助金(科学研究費、研究成果公開促進費)の公募について」 (9月8日付)が日本学術振興会科学研究費補助金のホームページにアップされました。

申請受付期間は、平成15年11月17日(月)〜11月20日(木)(午前9時30分から 正午まで及び午後1時から午後4時30分まで。)です。

(本メールは、出典を明示して下されば、転載は自由です。)


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