「移動の時代」といわれる21世紀、グローバル化、デジタル化の中で移動する人とことばの関係は多様性・流動性を深めている。従来の人文社会科学のパラダイムでは捉えきれなくなった、ポストモダンを生きる人々の「モビリティ」とことばの現実を把握するにはどのような視点や方法論が求められるのか。この課題に取り組んできた10人の研究者が集結。執筆者:新井保裕、岩﨑典子、生越直樹、フロリアン・クルマス(三宅和子訳)、佐藤美奈子、サウクエン・ファン、古川敏明、三宅和子、山下里香、吉田真悟
三宅和子・新井保裕編『モビリティとことばをめぐる挑戦 社会言語学の新たな「移動」』
子どもたちが大人になったときにもしまのことばが聞こえる世界を残すために…
『星砂の話(ふしぬ いんのぬ はなし)』
竹富島に伝わる伝説。竹富語の朗読音声と詳しいことばの解説付き。お母さん星とお父さん星が星の子供を生む場所に、大明神の言うことを聞いて竹富の南の海を選んだが、七竜宮神の怒りに触れてしまい…。竹富島の真っ白な美しい浜には、星の形をした砂が落ちている。この星砂がなぜ竹富にあるのか、またこれにまつわる儀式をなぜおこなっているのか。竹富島の自然や風習と神様がつながっていて、その近さがわかります。総ルビ。
『カンナマルクールクの神(カンナマルクールクぬ かむ)』
多良間島に古くから伝わる昔話。多良間語の朗読音声と詳しいことばの解説付き。多良間島に生まれた絶世の美少女カンナマルクールク。島の若者たちはその美しさに、寝食を忘れるほど魅了され次々倒れていく。これを案じた守姉は、カンナマルを浜へと連れ出した。魚を焼いて食べさせている間に岩陰に隠れ、そっと見ていると…。物語の中には実在する海や拝所も出てきます。総ルビ。※書名「かむ」の「む」は多良間語小文字。
内盛スミ・山本史・中川奈津子『星砂の話(ふしぬ いんのぬ はなし)』
野原正子・山本史・下地賀代子『カンナマルクールクの神(カンナマルクールクぬ かむ)』
言語的不平等に対する理想と現実の乖離を指摘。裁判での使用言語などを通し、国家の国語に対するあり方に触れ、近代日本の国語創出における上田万年の果した役割を解明。国語問題への小林英夫の革新的な考えを明示。テニヲハ・係り結び・語分類への考察の進展、及び明治以降の文法研究の進展を描きながら、日本語文法研究史を概説、明治期の群小文法書の取り出しが本書の特徴。さらに現代日本語文法の記述的研究の確立化を示す。
仁田義雄著『国語問題と日本語文法研究史』
早稲田大学日本語学会設立60周年を記念した論文集の第二冊「言葉のはたらき」には、文法(歴史的研究・現代)、文章・文体・談話、待遇表現、言語教育・言語施策に関する23論文を収載。「文末思考動詞と推量の助動詞」「主題のない文の現れ方」「文章・談話における「段」の展開的構造」「明治期東京語における〈行く・来る〉の謙譲語の使用」等。
執筆者:石黒圭、石出靖雄、岡田祥平、加藤薫、蒲谷宏、苅宿紀子、河内彩香、木村寛子、坂本惠、佐久間まゆみ、澤田淳、髙野敦志、寺田智美、永岡悦子、仁科明、松木正恵、三原裕子、宮崎里司、森野崇、森山卓郎、山口佳也、山田里奈、渡辺由貴
早稲田大学日本語学会編『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第1冊 言葉のしくみ』
早稲田大学日本語学会編『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊 言葉のはたらき』
社会言語学の各領域におけるトピックを集成し、それぞれの裏付けとなったデータを図表の形にして掲げ、日本語と英語・中国語・韓国語で簡潔な解説を加えた。近年、大学等での授業科目として「社会言語学」が取り上げられることが多くなった。本図集は、そのための教材として新たに編修したものである。日本語をもとにして、英語、中国語(繁体字)、韓国語による要約も掲げているので、対照しつつ外国語学習としても活用できよう。
真田信治・朝日祥之・簡月真・李舜炯編『新版 社会言語学図集 日本語・英語・中国語・韓国語解説』
英語を学ぶに際し、語の仕組みについて知ることはとても重要。語の仕組みや意味や語源を知ることはこれを使う技能のレベルアップにつながる。語形成の重要な要素は接辞。接辞が分かれば英語が身近で面白く、魅力的に見えてくる。本書は英語の接辞付与による語形成について分かりやすく具体的に説明した。本書を読めばさまざまな発見があるはず。本書によって英語の語形成の面白さが分かり、語彙が増え、英語力が高まることが期待できる。
西川盛雄著『接辞から見た英語 語彙力向上をめざして』(ちょっとまじめに英語を学ぶシリーズ 3)
国際的な発信力を高めたい大学・大学院生、研究者を対象とした英語科学論文執筆のためのガイドブック。トップジャーナルに掲載された最新の論文の分析に基づき、科学論文に関する様々な伝統的通説を反証し、21世紀型の新しい科学論文執筆法を解説する。読み手を効果的に導くための論文の構成、強調や緩衝などの微妙なニュアンスを伝えるための表現をサンプルの分析を通して段階的に学んでいく。読み手を引き付ける論文のコツを網羅的に学べる一冊。
保田幸子著『英語科学論文をどう書くか 新しいスタンダード』
日本語史研究は、資料の読解とそこから取り出した言語形式の集計と分析を重ねる方法によって、発展してきた。近年整備が進む歴史コーパスは、この方法を質的に深化させ量的に拡大することで、新たな地平を開きつつある。近代に焦点をあて、〈展望〉2編、〈論文〉11編、『日本語歴史コーパス』の〈解説〉4編を掲載し、読者を新地平に誘う。
執筆者:田中牧郎、橋本行洋、矢島正浩、宮内佐夜香、小島聡子、近藤明日子、髙橋雄太、間淵洋子、横山詔一、竹村明日香、岡島昭浩、新野直哉、小木曽智信、服部紀子
田中牧郎・橋本行洋・小木曽智信編『コーパスによる日本語史研究 近代編』
コーパスや統計、計量分析のような、データ科学に基づく実証研究の方法論と研究例によって、新しい日本語教育学の方向性を提示する。方法論編ではデータ科学の全体像を示した上で、データ構築の方法や分析手法を紹介。研究事例編では音声学、文字学、語彙論、文法論、文章談話論、文体論、日本語教育史の観点から最先端の研究例を紹介。
執筆者:阿辺川武、岩崎拓也、大崎健一、小野塚若菜、木下直子、鯨井綾希、滝島雅子、田中祐輔、玉岡賀津雄、仁科喜久子、早川杏子、ホドシチェック・ボル、本多由美子、三谷彩華、村田裕美子、八木豊、李在鎬
李在鎬編『データ科学×日本語教育』
本書は、アジア・太平洋戦争期と重なる昭和10年代文学(史)に関する研究プロジェクトとして、多彩な文学活動を歴史的なアプローチによって多角的に検証した成果の集大成である。昭和10年代を通じて多くの文学者が関わった論争的なテーマの数々、話題となった文学作品の特徴や同時代受容、戦時下における文学者の生き方などをとりあげ、問題構成に応じてアレンジしたメディア調査、言説分析、テクスト読解をクロスさせた考察を集積した。
松本和也著『文学と戦争 言説分析から考える昭和一〇年代の文学場』
新刊目録『未発ジュニア 2021年秋冬号』、発送作業中です。
おてもとに届きましたらぜひご覧ください。
『未発ジュニア 2021年秋冬号』PDF版はこちら
本書は、戦前日本の帝国主義による領土拡大の影響からアジア・太平洋に広がった日本語の過去と現在を記述するものである。長年各地で調査研究を進めてきた著者陣による3部構成の論考であり、「残存する日本語」「接触言語」「日本語からの借用」の3つの側面を記述している。近年研究が進んだ同分野の研究の全体像を明らかにする1冊である。執筆者:今村圭介、ダニエル・ロング、朝日祥之、甲斐ますみ、黄永熙、甲賀真広、合津美穂、真田信治、髙木丈也、張守祥、白暁萌、李舜炯〈日本学術振興会助成刊行物〉
今村圭介、ダニエル・ロング編『アジア・太平洋における日本語の過去と現在』
高校生の現代文が、文学的文章と論理的文章に「分離」されることとなった。この政策が単なる「分離」ではなく「隔離」であることは明らかだが、我々はこの「分離」を逆手にとって、新たな国語教育の可能性を模索してゆかねばならない。文学理論と文学教育をどう切り結ぶのか。そして、文学的文章と論理的文章の教育を有機的に組み合わせてゆくには、何が必要なのか。専門的知から様々な領域に「接続」するための紐帯を提供する、新しい文学理論入門。
疋田雅昭著『文学理論入門 論理と国語と文学と』
言語教育の分野でも広がる「質的研究」。興味があるけど、どうやるの? インタビューをすれば質的研究? 結果は一般化しないの? 様々な疑問に、言語教育の実践者である執筆者が、それぞれの研究とその裏側を明かし、新たな概念の提唱を試みた渾身の書。初心者も経験者も質的研究の真髄を知りたいなら、この1冊。
執筆者:八木真奈美、中山亜紀子、中井好男、李暁博、脇坂真彩子、欧麗賢、大河内瞳、サマンティカ・ロクガマゲ、嶋本圭子、瀬尾悠希子
八木真奈美・中山亜紀子・中井好男編『質的言語教育研究を考えよう リフレクシブに他者と自己を理解するために』
日本英語学会第39回大会(オンライン開催)に合わせ、学会員の方向けに特別セールのページを作りました。
ぜひ学会の書籍展示会場にいらした気分でご覧ください。
https://www.hituzi.co.jp/books/hituzi-elsj202111.html
『移住労働者の日本語習得は進むのか 茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティにおける調査から』吹原豊著
日本語学習リソースへのアクセスが制限されている移住労働者の日本語習得過程はどのようなものか。本書は10年余におよぶフィールドワークと100名を超えるOPIによるデータをもとに、第二言語環境における移住労働者の日本語習得の過程を、日本の地域社会に存在する複数のコミュニティへ参加していく中での状況的学習としてとらえ、分析を行った研究の成果である。第二言語習得研究者はもとより広く在日外国人問題に関心のある読者に是非ご一読いただきたい。
吹原豊著『移住労働者の日本語習得は進むのか 茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティにおける調査から』
アジア全域の全語族につき2000地点ほどの密度で「太陽・稲・乳・風・鉄・計数法(類別詞)・声調とアクセント・雨が降る」の8項目に対して言語地図を描画し、それぞれの語形の形成過程に関する解釈を集成した。24名からなる各語族の専門家によるコラボレーションの成果である。項目ごとにアジア全域における概観が与えられ、マクロ・ミクロな地理分布をパノラマのように一望することができる。
★8項目のA1判付録地図付き(4枚・両面印刷)
執筆者:海老原志穂・遠藤光暁・深澤美香・福井玲・福嶋秩子・岩佐一枝・岩田礼・岸江信介・近藤美佳・倉部慶太・松本亮・峰岸真琴・長渡陽一・斎藤純男・清水政明・白井聡子・白石英才・鈴木史己・鈴木博之・田口善久・植屋高史・内海敦子・八木堅二・吉岡乾
遠藤光暁・峰岸真琴・白井聡子・鈴木博之・倉部慶太編『Linguistic Atlas of Asia』
大学に求められる新たな役割とは。本書では、ポートランド州立大学で展開している地域連携型教育プログラムを多角的な視点から紹介し、地域変革のアンカーとしての大学のモデルを提示する。国内の先進事例として京都の産学官民連携で展開してきた地域公共人材育成にもふれながら、これからの大学の新しい役割について考える。バイリンガル版(英日)。執筆者:ケヴィン・ケスカス、西芝雅美、スティーブン・パーシー、ジュディス・ラメイリー、サイ・アドラー、エイミー・スプリング、セリーン・フィッツモウリス、向野也代、ジェニファー・アルカズウィーニー、飯迫八千代、クリスティーン・クレス、レイチェル・サミュエルソン、シェリル・ゲルモン、白石克孝
白石克孝・西芝雅美・村田和代編『大学が地域の課題を解決する ポートランド州立大学のコミュニティ・ベースド・ラーニングに学ぶ』
本書は、英語における様々な言語現象に対して、共時的・通時的な側面から、正確に記述し、理論的な説明を行った論考を17編収録した論文集である。どの論考においても、語・句・構文・談話レベルにわたる様々な語法に対して、記述的にも理論的にもバランスのとれた分析を行うことで、英語における語法研究と理論研究の懸け橋となる1冊である。執筆者:家入葉子、石崎保明、植田正暢、内田充美、大谷直輝、樗木勇作、金澤俊吾、岸浩介、木山直毅、久米祐介、柴田かよ子、中村文紀、縄田裕幸、平沢慎也、廣田友晴、藤川勝也、松山哲也、柳朋宏
金澤俊吾・柳朋宏・大谷直輝編『語法と理論との接続をめざして 英語の通時的・共時的広がりから考える17の論考』
絶えず変化するコンテクストの中で私たちは構文を創造的に使用する。しかしその一方で「言えそうなのに言わない」表現が存在する。たとえば explain me this は言えそうなのに英語母語話者は言わない。創造的でありながら制約が多い言語を子どもや大人はどのように学習するのか。本書はさまざまな構文の実例や実験研究をわかりやすく解説しながら、この問いを探ってゆく。構文文法を初めて学ぶ読者にも薦められる一冊。原著: Adele E. Goldberg(著)Explain Me This: Creativity, Competition, and the Partial Productivity of Constructions
アデル・E・ゴールドバーグ著 木原恵美子・巽智子・濵野寛子訳『言えそうなのに言わないのはなぜか 構文の制約と創造性』
教育文法の最新理論「意味順」を活用した英語指導法の決定版、ついに登場。「意味順」を軸に英語指導の体系化をめざす。その理論的背景を、教育言語学、理論言語学、英語史、英詩研究の観点から検証するとともに、豊かな指導経験に基づいた授業への導入例を紹介する。中高から大学までの英語授業の未来を切り開く教師や研究者にとって必読の書。執筆者:田地野彰、金丸敏幸、川原功司、高橋佑宜、笹尾洋介、奥住桂、藤木克哉、山田浩、佐々木啓成、村上裕美、加藤由崇、渡寛法、桂山康司
田地野彰編『明日の授業に活かす「意味順」英語指導 理論的背景と授業実践』
言葉の仕組みや特徴の調べ方を小学生に向けて解説。自由研究のガイドとしても、調べ学習の参考資料としても使える。①かんがえる(「隠れた「っ」を探せ!」・「「は」と「が」はどう並んでる?」)、②つくる(「漢字だけ文を書いてみよう」)、③しらべる(「世界のことばで「日本」は何と呼ぶのか?」・「手話のことを調べよう」)で、言葉の楽しみ方がいろいろな角度から分かるよう工夫されている。
松浦年男著『自由研究 ようこそ!ことばの実験室(コトラボ)へ』
投稿論文1本、資料・情報1本、また、「解説」として「方言研究の方法」と「方言学を支えた人々」(各2本)を掲載する。最新の研究成果に加えて、コロナ禍における研究実践・研究支援活動の報告や方言研究の指針を具体的かつわかりやすく示すとともに、長く方言研究を下支えしてきた市民による方言学を紹介する。執筆者:井上文子、加藤和夫、岸江信介、久保博雅、小西いずみ、田中ゆかり、二階堂整、西尾純二、灰谷謙二、半沢康
日本方言研究会『方言の研究 7』
本書は、現代日本語と韓国語の多様なコピュラ文の対照分析を通じ、両言語のコピュラ構造並びにコピュラ形式「だ」「ita」の特徴を明らかにしようとするものである。基本型コピュラ文の意味論的分析をはじめ、一項名詞文、ウナギ文、動作性名詞述語文、拡張型コピュラ文、分裂文、さらに、コピュラ及び属格助詞に関わる名詞修飾構造等を対照的に取り上げることで、日韓のコピュラやコピュラ文の根本的かつ総体的な理解に迫る。
金智賢著『コピュラとコピュラ文の日韓対照研究』
本書は異分野融合研究を実践するための方法論としてテキストマイニング(TM)に着目し、その基本的な仕組みや実際の研究事例を示したものである。基礎編ではTMの理論や手法等を紹介し、実践編では言語学、情報学、政治学、社会学、看護学、環境学など多様な分野の新進気鋭の研究者が、それぞれの分野におけるTMの実践的な研究例を提示する。
執筆者:石田栄美、伊豆倉理江子、内田諭、大賀哲、加藤朋江、金岡麻希、川端亮、木下由美子、清野聡子、田中省作、土屋智行、中藤哲也、永崎研宣、畑島英史、秦正樹
内田諭・大賀哲・中藤哲也編『知を再構築する 異分野融合研究のためのテキストマイニング』
認知言語学の出現の背景と言語研究の新たな展望 山梨正明/身体投射 沖本正憲/時間の流れに関する認知言語学的考察 吉本一/《指示》の文法を考える 深田智/相互行為における指示の構造と指示表現の選択 平田未季・山本真理/商標言語学 五所万実/特定のインスタンスに成立するメトニミーの理解過程について 伊藤薫/命令・禁止表現から接続表現へ 朱冰・堀江薫/逆接「〜ながら」の周辺事例的解釈 梶川克哉
山梨正明編『認知言語学論考 No.15』
日本語学習リソースへのアクセスが制限されている移住労働者の日本語習得過程はどのようなものか。本書は10年余におよぶフィールドワークと100名を超えるOPIによるデータをもとに、第二言語環境における移住労働者の日本語習得の過程を、日本の地域社会に存在する複数のコミュニティへ参加していく中での状況的学習としてとらえ、分析を行った研究の成果である。第二言語習得研究者はもとより広く在日外国人問題に関心のある読者に是非ご一読いただきたい。
吹原豊著『移住労働者の日本語習得は進むのか 茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティにおける調査から』
日本語音声コミュニケーション学会の学会誌『日本語音声コミュニケーション』は会員にのみ公開していますが、非会員の方にも2000円+税で販売しています。ご希望の方はメールにてお申し込みください。(なお、日本語音声コミュニケーション学会の年会費は2000円です。)
現在、第9号まで刊行しています。6号までは無料で公開しています。
日本語音声コミュニケーション学会『日本語音声コミュニケーション 9』(目次・要旨あり)
本書は、科学哲学の観点から、言語学における新たな言語理論の展開のメカニズムの諸相を明らかにしていく。特に、生成意味論を母体として出現した認知言語学の科学的探求の方法を、科学哲学のパラダイム変換の観点から考察する。また、認知言語学の研究が、言葉の探求だけでなく、修辞学、哲学、認知心理学、脳科学、等の関連分野の研究にどのような重要な知見を提供するかを考察していく。言葉と知のメカニズムの研究への新たな指針となる一冊。
山梨正明著『言語学と科学革命 認知言語学への展開』
『合理的なものの詩学 近現代日本文学と理論物理学の邂逅』加藤夢三著
近現代日本文学の書き手たちは、同時代の理論物理学やその周辺領域の学知に、どのような思考の可能性を見いだしていたのか。「合理」的なものの見方を突き詰めていたはずの作家たちの方法意識が、時として「非合理」的な情念へと転化するのはどうしてなのか。本書は、その総合的な表現営為のありようを検討することを通じて、モダニズムの文芸思潮から今日のサイエンス・フィクションにいたるまでの芸術様式の系譜を再考することを試みたものである。
『合理的なものの詩学 近現代日本文学と理論物理学の邂逅』加藤夢三著
長く日本の認知言語学研究を牽引する山梨正明教授の古希を記念して編まれた論文集。認知言語学の分野の最前線で活躍する研究者を執筆者に迎え、いま研究の最先端でどのようなことがおこっているかということを紹介するとともに、今後の課題を示し、これからの認知言語学研究の礎となる書。ロナルド・W・ラネカー氏の書き下ろし論文「Functions and Assemblies」も所収。執筆者:ロナルド・W・ラネカー、吉村公宏、高橋英光、野村益寛、中村渉、堀江薫・江俊賢、籾山洋介、菅井三実、谷口一美、早瀬尚子、大森文子、八木橋宏勇、松本曜、大月実、森雄一、篠原和子、堀田優子、渋谷良方
児玉一宏・小山哲春編『認知言語学の最前線 山梨正明教授古希記念論文集』
「自己」が近代文学が拘り続けたテーマであることは言を俟たないが、現代文学は統一され安定した「自己」そのものへの不信から始まっている。ともに時空を「移動」し続ける存在としての読者とテクストが出会う結節点。そこから変容しながらも繰り返し立ち上がってくる主体こそが現代文学が語る「自己」にほかならない。本書は「自己」と「移動」に着目し芥川賞受賞作家のテクストから平成という時代の諸相を読み込む試みである。
疋田雅昭著『トランス・モダン・リテラチャー 「移動」と「自己」をめぐる芥川賞作家の現代小説分析』
2008年、国際認知言語学会で「量的転回」が宣言された。以来10年以上を経て、日本では実験的手法への興味が広がりつつあるが、欧米と比べるとまだ発展の余地がある。本書ではこれらの概観、解説、事例研究に加え、Gibbs、Slobinなど実験認知言語学発展の歴史に必読な論文の翻訳を掲載し、実験認知言語学のこれまでとこれからを考える。執筆者:秋田喜美、Raymond W. Gibbs, Jr.(松中義大訳)、楠見孝、Bonnie McLean、松本曜、鍋島弘治朗、大谷直輝、佐治伸郎、Dan Slobin(櫻井千佳子訳)、菅村玄二、平知宏、宇野良子、吉川正人
篠原和子・宇野良子編『実験認知言語学の深化』
新刊目録『未発ジュニア 2021年春夏号』、発送作業中です。
おてもとに届きましたらぜひご覧ください。
『未発ジュニア 2021年春夏号』PDF版はこちら
複合語における連濁形・非連濁形の生起を規則によって説明する試みである。その前提として、右枝条件など連濁を阻止する制約を再吟味するとともに、世界の言語の複合語の構成を概観した。複合語化には前項と後項を結び付ける要素の存在が必要なこと、このような要素はかつて日本語にも存在し、それが連濁の発生へと繋がったことを指摘した。また、規則化の問題点が明らかになったことから、連濁研究の今後の方向性を示したと言える。
平野尊識著『連濁の規則性をもとめて』
研究書出版をお考えの方のご相談にのります。日本語学、言語学に限らず、文学研究、文化研究など、さらには文理を越えた言語に関わる研究者の方のご相談を承ります。
ひつじ書房のオフィスに直接お越しいただく以外にも、ZoomあるいはSkypeでのオンラインでの相談も可能です。さらに研究書に加えまして、教科書の出版についてのご相談も受け付けます。複数著者による論文集のご相談もできます。
日本語教師として知っておくべき知識・技術を網羅した概説書。総ルビなので外国人日本語学習者の読解教材としても使える。文法知識、文法用語、主要な教科書との対応、母語話者の使用実態、誤用例、授業の指導案など専門知識がA1〜B1程度の場面とコミュニケーションに結びつけて示されている。国内外の日本語教師の必携書。
中西久実子編 中西久実子・坂口昌子・中俣尚己・大谷つかさ・寺田友子著『場面とコミュニケーションでわかる日本語文法ハンドブック』
認知言語学とマンガ学。一見、関連性がないように見えるが、実はどちらも「視点」がキーワードとなっている。認知言語学では主観的な視点と客観的な視点が主に議論されるが、マンガにはさらに多様な「視点」が存在する。本書ではマンガ学の視点概念を用いて、日本語のルビと英語の自由間接話法を中心に分析し、言語研究全般に援用できるよう新たな視点理論の提案を試みる。
出原健一著『マンガ学からの言語研究 「視点」をめぐって』
コーパス検索アプリケーション「中納言」の初の解説書。3部構成。第1部「検索してみよう」では「中納言」での検索の仕方や様々な機能について解説する。第2部「分析してみよう」では結果をダウンロードした後、表計算ソフトやテキストエディタを活用し、どのように結果を集計、数値を比較すれば良いかを解説する。第3部「研究してみよう」ではどのようにコーパス研究を行うべきか、また、レポート・論文にまとめる上での注意点を実例をもとに解説する。
中俣尚己著『「中納言」を活用したコーパス日本語研究入門』
平賀正子著『ベーシック新しい英語学概論』の重版5刷が出来ました。多くの先生方にご採用いただきまして、まことにありがとうございます。
2016年の刊行から5年という短期間で4度目の重版となりました。全国の大学でテキストとしてご使用いただいており、英語学を学ぶうえでの新しい定番となりつつあります。ご興味のある方はこの機会にお手にとっていただけると幸いです。
平賀正子著『ベーシック新しい英語学概論』の詳細はこちら
これまで日本語や外国語の習得研究は、事例を使った「直感」的な研究が多かった。しかし、特定の表現だけで現象を説明しようとすると、視点が偏りがちになる。そこで本書では、「直感」で推論された仮説を、コーパス、テスト、実験などで集めたデータを統計的に解析して「実証」するというアプローチの研究を、詳細な解説を含んで8つ掲載した。
執筆者:王蕾、斉藤信浩、張婧禕、初相娟、早川杏子、毋育新、毛文偉、大和祐子
玉岡賀津雄編『外国語としての日本語の実証的習得研究』
国境を越えた移動の急増とインターネットとモバイル技術の普及により、日本語学習のあり方が大きく変化した。学習者の役に立つには、日本語教師にはどのような専門知識が必要か。本書では言語と学習についての従来の常識を問い直し、グローバルな視点から新たに教師教育を考え直す一冊。
執筆者:青木直子、バーデルスキー・マシュー、リー・ウェイ(翻訳:井上エイミー)、百濟正和、義永美央子、西口光一、マーリー・ギャロルド、 宇塚万里子、難波康治、ケリー・カーティス(翻訳:冨田キアナ)、宮原万寿子、八木真奈美、入江恵、中山亜紀子、柴原千佳、クラムシュ・クレア、川嶋恵子、中井好男、脇坂真彩子、欧麗賢、濱川祐紀代、瀬尾悠希子、末吉朋美
青木直子、バーデルスキー・マシュー編『日本語教育の新しい地図 専門知識を書き換える』
論理的な文章を書くための日本語表現の教科書『はじめよう、ロジカル・ライティング』。この教科書ができるまでの経緯と、「意見文」の書き方を軸に論理的表現の基本を学ぶ本書の趣旨を解説し、授業の実践例を紹介する。中学・高校の国語や総合的な学習の時間、大学の日本語表現法の授業で本書を使った例を取り上げ、その成果と課題を具体的に解説。効果的な授業のための教科書の使い方の手引き。
名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校国語科+千葉軒士著『「書くこと」の授業をつくる 中・高・大で教える『はじめよう、ロジカル・ライティング』』
初版刊行より約10年を経て、最新情報を取り入れ内容を大幅に更新、第2版刊行。コーパス言語学(corpuslinguistics)は、英語においては1990年代以降、日本語においては2000年代以降、それぞれ急速な進展を見せ、現在、言語や言語教育に関わる幅広い研究分野に大きな影響を及ぼしている。本書は、英語コーパスと日本語コーパスの両者に目配りしつつ、初学者を対象に、コーパス構築の理念やコーパスを生かした言語研究の方法論について平易に解き明かすことを目指す。
石川慎一郎著『ベーシックコーパス言語学 第2版』
本書は、実際のテクストの中での語の働き・ふるまいを観察し、テクストの展開と関係づけて論じるテクスト分析をめざしている。“テクスト構成”や“語彙的結束性”といったテクスト分析の概念を、語の辞書的“意味”の捉え直しや、近代語テクストにおいて重要性を増す“漢語”や“名詞”の役割、コ系やド系指示語の機能の再発見等と関連づけて具体的に論じ、文体論やCDA(批判的ディスコース分析)にも目配りしている。
髙﨑みどり著『テクスト語彙論 テクストの中でみることばのふるまいの実際 』
ビジネス文書の書き方を見よう見まねで学ぶ時代は、もはや過去のものとなった。本書は、ビジネス文書のコーパスから豊富な具体例を抽出、それを言語学的な観点から丁寧に分析し、優れた文書の特質を明らかにした新しいタイプの実用書である。就活中の学生や企業に勤めたばかりの新入社員、企業の日本語研修担当者やビジネス日本語教師、いずれにもオススメ。
執筆者:青木優子、浅井達哉、井伊菜穂子、石黒圭、井上雄太、岩崎拓也、熊野健志、佐野彩子、鈴木英子、田中啓行、布施悠子、アンドレイ・ベケシュ、蒙韞、柳瀬隆史、横野光
『ビジネス文書の基礎技術 実例でわかる「伝わる文章」のしくみ』(石黒圭・熊野健志編)
本書は南基心、高永根他著『표준 국어문법론(標準国語文法論)』(全面改訂版、2019)の全訳である。韓国語の形態論と統辞論を詳細に述べたもので、全面改訂版では最新の言語学、韓国語学研究の成果を加筆した内容となっている。韓国の学校文法に準拠した本書は1985年の初版以来、韓国語文法の研究と教育の両分野で文字通り、標準的な文法書として読み継がれている。韓国語学、朝鮮語学のみならず、日本語学に携わる研究者にも必須の一冊である。
『標準韓国語文法論』(南基心・高永根・劉賢敬・崔炯龍著、五十嵐孔一監訳、鷲澤仁志・松浦利恵・千代裕介・崔允智・姜詠里・根津祐希訳)
本書は、日本語文法史の開拓的研究をまとめたものである。古代語の助動詞を中心に、現代語との対照の観点から基礎的、実証的研究を行なっている。「名詞句」「モダリティ」「疑問文」「配慮表現」を取り上げ、それぞれの研究において新しい視点、分析方法を提示する。また、「とりたてとモダリティ」「テンス・アスペクトとテクスト構造」など、研究テーマの接続も試みる。この分野の研究領域を見通し、領域拡張の基点となる書。
高山善行著『日本語文法史の視界 継承と発展をめざして』
従来、連体修飾要素の機能は被修飾名詞句の指示性によって決定されるとされ、「定/不定」といった区別が素朴に連体修飾構造の分析に適用されることが多かった。しかし、実際には、そのような一般化に当てはまらない例が体系的に存在する。本書では、日本語の連体修飾構造に見られるさまざまな文法的振る舞いの包括的分析を通じ、連体修飾要素の機能、述語の内包性、名詞句の指示性といった意味論的な概念について、新たな理論的枠組みの提示を試みる。
三好伸芳著『述語と名詞句の相互関係から見た日本語連体修飾構造』
『認知言語学と談話機能言語学の有機的接点 用法基盤モデルに基づく新展開』(中山俊秀・大谷直輝編)の刊行を記念して、執筆者によるオンライン座談会を行いました。
執筆者による各テーマの解説と、白熱のディスカッションをぜひご覧ください。
刊行記念 オンライン座談会へ
書籍の詳細はこちら
学術論文においても、統計手法の基本的な誤りを含むものが少なからずある。そこで本書では、統計手法を用いる時に気をつけるべきこと、今まで統計の書籍で取り上げられてこなかった「やってはいけない」ことを、特に日本語教育分野を例にまとめた。グラフ・表からサンプル数の考え方まで、すぐに役立つポイントや注意点を広く取り上げている。ウェブマガジンでの人気連載に、例や項目の大幅な加筆をして書籍化。
島田めぐみ・野口裕之著『統計で転ばぬ先の杖』
現代日本語の「ハズダ」について、様々な用法を細く分類するだけでは、「ハズダ」の本質が見えにくくなる恐れがある。本書では、「話し手が持っているある情報(知識)に対して、それに反する、またはギャップが感じられる状況が起きる場合」という「ハズダ」の使用条件を提示し、「知識確認」という機能が「ハズダ」の意味機能であることを新たに導入することで「ハズダ」の解釈に統一的な答えを見出した。
朴天弘著『現代日本語の「ハズダ」の研究』
学習指導要領の改訂により、「自ら問いを立て、自律的に考えることのできる人材の育成」が求められている。本書は、学習者の「問い」や、教師の「発問」を基に展開する実践の紹介と背景理論の解説を行い、教育現場で教える教員の方はもちろん、学習者の「問い」や「質問」の研究に携わる大学院生や研究者も深く学べる内容となっている。
執筆者:生田淳一、植阪友理、小山義徳、鏑木良夫、亀岡淳一、小山悟、齊藤萌木、篠ヶ谷圭太、白水始、たなかよしこ、中山晃、野崎浩成、深谷達史、道田泰司、八木橋朋子
小山義徳・道田泰司編『「問う力」を育てる理論と実践 問い・質問・発問の活用の仕方を探る』
荷物運びを手伝ってもらいたいとしたら、どのような頼み方をするだろうか。おつりが間違っていることを注意するときはどうだろう。本書は、そうした言語行動の地域差を全国1000地点規模の調査によって明らかにする。目的別に分類されたさまざまな言語行動のデータを分析することで、この分野の方言学の基盤づくりをしようというのが本書のねらいである。執筆者:井上文子、尾崎喜光、櫛引祐希子、熊谷智子、小林隆、佐藤亜実、椎名渉子、篠崎晃一、竹田晃子、津田智史、中西太郎、松田美香
小林隆編『全国調査による言語行動の方言学』
日本の幼稚園教育の歴史の中で、童話との関係は深く、その初期から「談話・説話」の保育項目の中で取り上げられ、現在でも教材として重要な役割を担っている。本書では、そのような童話が、幼稚園教育の黎明期である明治期において、どのように保育の中へ導入され、受容されてきたかを、小学校教育や児童文学、及び社会状況との関わりを踏まえ、実証的に検証することにより、保育内容としての童話の成立過程の一端を明らかにした。
北川公美子著『明治期の幼稚園教育と童話 小学校教育・児童文学との関わりから』
シリーズ『日本語のテンス・アスペクト研究を問い直す』の第2巻。本巻では、「した」「している」に関する研究を集めた。「した」の形態論、副詞句のタイプとテンス形式、テンス・アスペクト体系とテンス形式、日英語のナラティブとテンス形式、東北方言から見た「した」とムード、英語の「した」、テイルの1つの意味、知識と体験、体感から見た「した」と「している」、無標否定形式「していない」、ムード表現としての「している」、史的研究から見た「している」および「した」、など、テンス・アスペクト・ムードに関わる「した」「している」の特徴を多面的に捉える。執筆者:有田節子、庵功雄、岩本遠億、奥川育子、高田祥司、定延利之、田川拓海、高山善行、福嶋健伸、松田真希子、和田尚明
庵功雄・田川拓海編『日本語のテンス・アスペクト研究を問い直す 第2巻 「した」「している」の世界』
本書は日本語の失文法に見られる助詞「が」、「を」、「に」、「から」の誤用について、主に授受動詞や受動文を用いた産出実験結果に基づき、認知言語学の視点から説明を試みる。また、それらと類似した幾つかの現象(子供の言語獲得過程で見られる助詞の誤用、口語体における助詞の省略、健常者の言い誤りに見られる助詞の誤用)を取り上げ、失文法の場合と比較することから見いだせる共通性と相違が何に起因するのかを考察する。
井原浩子著『A Cognitive Linguistic Approach to Japanese Agrammatism』
この本は、“你有微信吗?(Wechatを持っていますか。)”などの中国の情報化社会で生活するために必要な表現をふんだんに取りいれた中国語教科書である。発音、語彙、文法、会話、読解など2年間連続して使用できるようにした。中国の社会・文化に関する豆知識、中国を短期間旅行するために必要な会話帳、読解、ドリルもあり、多様なニーズに対応できるよう構成した。
張婧禕・玉岡賀津雄・王莉莎著『ネット時代の中国語』
本書では、日英対照の視点から、節連言構造の解釈メカニズムの解明とそのモデル化により、当該現象の全体像における核心部を明らかにする。節レベルの要素を等位的な接続表現でつなぐ節連言構造として、英語のand連言文とそれに対応する日本語の複数の構造を認知語用論の枠組みに基づいて分析する。そのうえで、節連言構造の解釈に貢献する根本的な特性を抽出し、当該現象を統一的かつ包括的に説明できる新たなアプローチを示す。
長辻幸著『The Pragmatics of Clausal Conjunction』
日本語文法研究の新たな展開を目指す共同研究プロジェクトの成果報告論集。日本語文法研究において最も実績のある研究課題の1つであるアスペクト・テンスについて、現代日本語共通語・文法史・対照研究の3つの観点から多角的にアプローチするとともに、アスペクト・テンス体系と談話・テクストにおける運用のインタラクションを探究する。
執筆者:益岡隆志、定延利之、高山善行、井上優、羅米良、羅希、小林ミナ、藤井俊博、西田隆政、石出靖雄、渡邊淳也、和田尚明、金善美
益岡隆志監修 定延利之・高山善行・井上優編『[研究プロジェクト]時間と言語 文法研究の新たな可能性を求めて』
日本語の複文を構文の複合体としてとらえ、その談話環境及び展開の諸相を機能論的角度から論じた。ナラを始めとする条件構文の体系的見直し、動詞の接続辞表現、トアッテとニアッテ、ダケニとダケアッテの意義づけを行うほか、ナカ時間節の事態誘導的機能に深く関与する点、形態的機能的に多岐にわたる比較・並列・対比表現の考察などを加える。『日本語複文表現の研究』、『複合辞からみた日本語文法の研究』に続く複文研究の集大成。
田中寛著『日本語複文構文の機能論的研究』
ルールからの逸脱というと一般にはネガティブに捉えられることが多い。しかし歴史や文化の実際の流れから見ると、それこそが新しい時代やトレンドを生み出す原動力となっていることも多い。日本語における過去や現在進行中の変化を多様な面から取り上げ、ことばの「乱れ」「正しさ」「変化」といったものを、動的な視点から見つめ直す試みの1冊。
執筆者:岡田祥平、尾崎喜光、金澤裕之、川端元子、金愛蘭、野田春美、橋本行洋、松田謙次郎、蓑川惠理子、森篤嗣、山田敏弘、横山詔一
金澤裕之・川端元子・森篤嗣編『日本語の乱れか変化か これまでの日本語、これからの日本語』
「ピア・ラーニング(協働学習)」は今や世界的潮流となった。アジア各地では従来の教育の変革が大きな課題となっている。そこで、日本語教育協働実践研究者たちが、アジア地域でピア・ラーニングを理解し実践するための実践研究拠点の構築に取り組んだ。本書は、そのプロセスと成果を報告した本。日本語教育のみならず教育関係者に必読の書。
執筆者:池田玲子、舘岡洋子、近藤彩、金孝卿、トンプソン美恵子、朱桂栄、羅曉勤、金志宣、木村かおり、スニーラット・ニンジャローンスック、ナイダン・バヤルマ、アリアンティ・ヴィシアティ、荒井智子、張瑜珊、菅田陽平、駒澤千鶴、房賢嬉、小浦方理恵
協働実践研究会 池田玲子編『アジアに広がる日本語教育ピア・ラーニング 協働実践研究のための持続的発展的拠点の構築』
ライティングが専門でない、高校、大学、大学院の教員が使える、「書き方」と「研究方法」の指導テキスト。2008年に刊行した初版を改訂、時代に合った論文執筆へといざなう。学生の自習用としても充実している。主に人文社会科学系の領域向き。〔文章編〕では「思考を整理して、分かりやすく、科学的に」伝えるための技能を学ぶ。〔論文編〕では文献研究、実証研究の一連の流れを追って、テーマの設定から論文の評価まで段取りを解説。授業で使える練習問題やアクティビティーが豊富。情報満載のダウンロードデータも用意している。
佐渡島紗織・吉野亜矢子著『これから研究を書くひとのためのガイドブック[第2版] ライティングの挑戦15週間』
本書は、学習者が多義動詞「とる」を中心語とするコロケーションの習得過程において、どのような中間言語を形成しているか解明することを目的とした。研究に当たっては、学習者の中間言語を典型化、一般化、差異化の観点から複合的に捉えることを試みた。また、研究結果を日本語教育のコロケーション教材開発に活かすことを目指し、教材作成過程における留意点や練習問題の在り方等を提言した。
大神智春著『日本語学習者による多義語コロケーションの習得』
京阪式アクセントはアクセント研究の中心をなしてきた分野であるが、その中心の京都から諸地域に範囲を広げると、あまり注目されてこなかった地域や興味深いアクセント変化が観察される。本書では、淡路、明石、鳴門、岸和田、和歌山県橋本、高知などの環大阪湾地域のアクセントやアクセント変化の傾向を、筆者の調査の結果を基に、アクセント史もふまえ明らかにする。また、その特徴を京阪式アクセントの史的変遷の上に位置づける。
山岡華菜子著『『環大阪湾地域におけるアクセント変化の研究』
明治・大正の教育は、忠君愛国とそれに基づく家族国家観の形成に向けて、修身科を頂点とした教育体系により展開していた。その中で文学教材は、修身科にあっては、「教訓・訓戒」のための題材として、国語教育実践の場においては、それらに抗う、児童主体の「想像」を重視した題材として扱われていった。本書では、当時の国語教育の実相を捉えるとともに、脱文学の方向性を示している現在の国語教育のあり方についても考察する。
山本康治著『明治・大正期国語科の成立と修身科との関わり 文学教材は何を伝えたのか』
語彙には歴然とした体系性がある。本書は、語彙のこのような体系的な側面を特に意味的な観点から解説する。語彙の体系は、語の形態・音韻・意味に及び、日常的な表現を中心に具体例を交えながら、これらの体系に関して基本的な事実とそれを説明する規則や原理を紹介する。本書を読み終えると、語彙の意味がどのように研究されてきたかについておよその方向性をつかむことができ、日常的な語彙の中に潜む日頃気がつかない法則性に迫ることができる。
岸本秀樹・于一楽著『ベーシック語彙意味論』
現代中国の文学作品を翻訳・紹介する『中国現代文学』の第23号。蒋一談「発生」(取り壊される胡同と孤独な老人に訪れた“発生”とは)、普玄「生・一枚の紙切れ」(生まれようとする赤子と老婆が交わす命の秘密)、陳応松「カケスはなぜ鳴くか」(断崖の文字に導かれる一人の農民の運命)、何玉茄「鍬を担ぐ女」(社会にも家庭にも居場所のない農婦の葛藤)などを掲載。
中国現代文学翻訳会編『中国現代文学 23』
本書は、海外生活により複言語環境にあった日本語を母語とする子どもの第二言語能力が、帰国後どのように変化するのかを、長期にわたり質的に記述したものである。帰国児童が海外で身につけた英語の能力を、リテラシーという観点から捉え、兄弟姉妹とその家族を継続的に調査、観察することで、保護者の意識、子どもたちの日常的なリテラシー活動、人的ネットワークなど子どもたちを取り巻く社会的要因について明らかにする。
谷口ジョイ著『Biliteracy in Young Japanese Siblings』
近年、計読(テキストマイニング、テキストアナリティクス、計量テキスト分析、質的データ分析)は人文・社会科学の多岐にわたる領域で応用が進みつつある。本書は単なるハウツーではなく、具体的な課題に計読の諸技法を本格的に適用した研究成果を集めた。思想史・概念史、学説研究、ジャーナリズム言説の分析、研究者ネットワークの分析など、研究会での議論を通じた切磋琢磨を経て、現代日本の計読研究の規準を提示する。
執筆者:河野静香、左古輝人、鈴木努、橋本直人、樋熊亜衣、前田一歩
左古輝人編『テキスト計量の最前線 データ時代の社会知を拓く』
本書は、複合外来語を元にする短縮語形成(例えば「デジタル・カメラ」が「デジカメ」となる現象)の仕組みについて扱うものである。先行研究では、専ら理論的な分析がなされている一方で、その説明に実証的な裏付けは与えられていない。本書では、データベースの分析及び実験により、短縮語形成を制御する要因を明らかにする。具体的には、音韻的要因(音節構造や同音連続)に加え、言語使用者の選好傾向が影響していることを主張する。
文昶允著『日本語における短縮外来語の形成とその仕組み』
「壁にペンキを塗る/壁をペンキで塗る」のような格体制の交替現象は、壁塗り代換と呼ばれ広く知られているが、この現象はどのような仕組みで起こるのか。本書では、壁塗り代換とその関連現象を体系的に記述し、「意味類型の階層モデル」を用いて成立原理の統一的な説明を試みる。英語のlocative alternation研究との比較、ヴォイスや多義語との原理的な相違にも議論が及ぶ。一冊まるごと現代日本語の壁塗り代換を論じた、初の研究書。
川野靖子著『壁塗り代換をはじめとする格体制の交替現象の研究 位置変化と状態変化の類型交替』
本書は、第二言語としての韓国語教育のための発音規則を網羅してその階層を詳らかにした上で、韓国国立国語院標準語規定標準発音法及び標準国語大辞典を精査検証し、最適な用例及び例外を提示しつつ、教条的な規範主義ではなく、現実発音を追求する良著である。韓国語を教育する教授者・その教授法を学ぼうとする学生・大学院生・講師志望者必携の書であり、韓国語学習者にとっては発音規則を学ぶための最良の参考書となるだろう。
金鍾徳著 中村麻結訳『韓国語を教えるための韓国語の発音システム』
中学生、高校生に向けて、本の読みどころや、読むときに有効となる視点などをブックトークの形式で紹介し、読書案内としても使うことができる。また、後半部では、さまざまな読書会の進め方や、国語の新学習指導要領とも深く関わるOECDのPISA型読解力を身につけていく上で、読書をどのように活用していけば良いのかについて解説している。
大橋崇行著『中高生のための本の読み方 読書案内・ブックトーク・PISA型読解』
「させていただく現象」の謎を解く。「させていただく」を言われて怒れる人がいる一方で、「させていただく」の氾濫はとどまるところを知らない。なぜ人は使いたくなり、何が違和感を生むのか? この問いに答えるべく、意識調査で許容と違和の境界を探り、コーパス調査で発話行為的観点から他の授受表現との勢力関係変化を探った。それらをゴフマン的枠組みから再解釈することで、授受表現に生じているシフトに対する洞察を得た。
椎名美智著『「させていただく」の語用論 人はなぜ使いたくなるのか』
もとより高校と大学の間で構造的に切れてしまっているライティング教育をどうつなぐか――を考える『ライティングの高大接続』の続編。今回はもっぱら大学教師の実践的研究にフォーカスし、理念と実践のベスト・バランスを目指す。「書くこと」の経験も能力もますます多様な新入生たちを迎えてなすべきは、結局「学習者のことを知って、教える」ことである。
春日美穂・近藤裕子・坂尻彰宏・島田康行・根来麻子・堀一成・由井恭子・渡辺哲司著『あらためて、ライティングの高大接続 多様化する新入生、応じる大学教師』
編集を担当した書籍が初めて刊行されました。