完全な自費出版から完全な印税出版までのスロープ図

――出版と編集と印刷の区別が判らない方のための講座――

自費出版ということばが、よくわからず、誤解のもとになっているようなので、出版と編集と印刷の区別が判らない方のために、ちょっと整理してみました。簡単に言いますと印税をお支払いするような出版から、著者に買い上げていただいたり、コストの一部を負担していただいたりする場合から、すべてを負担していただく場合までいろいろなやりかたがあります。

自費出版という場合、それは出版社の利益まで負担するというものになります。よく理解されないのですが、出版社は印刷所ではありません。本ができたとして、印刷して製本して、その経費で利益が出るのは印刷所です。出版社は印刷所ではありません。このことだけは判っていただきたいというのが心からのお願いです。

出版社はものを作る際の編集・校正にくわえ、マーケティング、営業、そして出荷、返品の処理、在庫管理、書誌管理を行っています。これは、印刷費などの製造コストとは別のものです。

つきあう際には相手の商売の性質をできるだけ理解していただければ、コミュニケーションがスムーズに行くと思います。でも、これは若い内に理解できないと50歳を過ぎてからでは困難かもしれません。50歳を過ぎた方でもディナーをごちそうして下されば、丁寧にお教えしましょう。

ひつじ書房の場合は、完全な自費出版のケースはほとんどありません。過去に1冊ありましたが、予備校の先生がなくなられて、その知人の方が作った場合がありますが、それのみです。


付録

出版の場合の持ち込み先の選び方

――出版と印刷の違いがわかりますか?――

多くの自費出版は、自費印刷であるというのが実態です。きれいに印刷し、きれいに製本するのが目的であれば、印刷所に直接頼むのがもっとも安価で得策です。原稿を見て、コメントをして、アドバイスがほしいのであれば、内容に関連している出版社をさがして、相談するべきです。その出版社がどんなジャンルの本を出しているのかは、日本書籍出版協会の検索で調べればすぐに判ります。

研究書のジャンルなら、その研究のプロであることを証明できなければ、相談しても無駄です。たとえば、社会学の研究書を社会学の勉強をしたことがない人が出版することは不可能です。理由は、誰もその研究内容を信用してくれないから、売れないということ。

実態が単なるDTP屋さんや印刷所の副業なのか出版社なのかの見分け方

これは簡単。日本書籍出版協会の検索ページでその出版社の名前を入れて検索してみれば、書籍として流通させているのか、それとも流通させていないのかがわかります。ただ、これは、注文可能になっているということで、書店の店先に並んでいると言うことではありません。書店の店先に常時並んでいる状態にするというのは、実際にはかなり困難です。そのジャンルの出版物をさがそうと思った時に、その出版社が思い出されるか、そのジャンルの世界で認識されているかと言うことが、重要でしょう。アジアの旅行記であれば、アジアの旅行記を出している出版社にまず相談してみましょう。自費出版がメインの会社では、内容に対するコメントをもらうことはできません。(製作経費の負担は、自費出版の専門の社の方が安価かもしれません。でも、自費出版の専門の社で長期的に本を売ってもらうことは期待しない方がよいでしょう。)専門書の出版の場合、1000冊をコツコツ5年かけて売っていくということはめずらしいことではありません。

加えて、その出版社が作っているホームページを見れば、その出版社の理念が判るでしょう。

自費出版社が言っている「共同出版」というのは、この10年間に起きた印刷コストの低下の分を見込んで、自費ご負担の額をさげて、負担を軽くしているということです。リスクを分担しているという意味での共同出版、プロモーションを一緒にやるという意味の共同出版ではないのが実際と聞いています。「リスクを分担し、プロモーションを一緒にやるという意味での共同出版」そのものは出版の本道であると私は思っています。共同出版ということばが手垢にまみれすぎて使えなくなってしまったのは残念です。

1000部作っても重版できない本はたくさんあります。売れること、有名になることが目的であれば、自費出版ではむつかしいので、大手の出版社か晶文社や草思社などの一般書を出しているところに持ち込んで、一から提案したり、修行されることをおすすめします。出版にも専門学術出版と一般書出版があります。これはどっちが偉いと言うことではなく、二つの別の論理があるということです。

一からはじめるのは面倒くさいけれども、少しは文筆業の気分を味わいたいという方は、持ち込まれるときに、見積もりをとってもらった上で、さらに100万円払うので、内容について助言してほしいと依頼するのがよいかもしれません。

学術書、研究書、調査報告書に関してはご相談に載りますのでお問い合わせ下さい。ひつじ書房は、言語学と言語教育、NPOの関連の書籍を出している専門出版社です。

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