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2022.1.26(水)

コロナと出版


年度末に向かって、ひつじ書房は繁忙期のさなかにあります。
そんな中、長らくお世話になってきた製本所の閉鎖の連絡が入りました。
3月をもっての閉鎖という急な連絡でした。2月末刊行の本の予定も立ててありましたが、難しいという。慌ただしさが伝わってきました。確かな技術で上製本(ハードカバーの本)を作っていただいていた製本所なので、とても残念です。

最近は上製本が少なくなってきていることもあり、製本所の廃業が相次いでいるそうです。
コロナ禍の中、ベテランの高齢の職人の方々が働く製本所ではコロナに対してより慎重な対応が求められ、この2年間大変な思いをされてきているのではないかと思います。これは製本所に限ったことではなく、リスク管理に疲弊している事業所は多いでしょうけれども。
今回の製本所の閉鎖の詳しい経緯は分かりませんが、大変な中、本を作ってくださっていたことに感謝します。

しんみりとしていると、webのニュースが目に入りました。

■「出版市場 3年連続で売り上げ増 電子出版と紙の書籍 ともに好調」NHK NEWS WEB(2022年1月25日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220125/k10013448971000.html?utm_int=news-culture_contents_list-items_004

2021年の出版物の売り上げは好調で、3年連続で売り上げが増加し、紙の書籍の売り上げも「コロナ禍で生活や学習環境が変化したことで児童書や参考書などの需要が高まったことなどから」15年ぶりにプラスに転じたということです。
15年ぶりというのはなかなかすごいことで、さらに、電子コミックを筆頭に電子書籍にはより大きな波が来ているようです。

これ自体は喜ばしいニュースです。でも、その裏での製本所の廃業のお知らせがやはり心に引っかかります。
世の中の状況やニーズに合わせた出版が求められるのは確かだと思いますが、そうしているうちに何か大きなものに取り込まれていくような、漠然とした不安があります。これは単に変化を恐れる気持ちなのか、哀愁の思いなのか、自分でもモヤモヤしています。しばらくはこのモヤモヤに向き合ってみます。

いずれにせよ、新型コロナウイルス感染症が落ち着く(であろう)先を見ながら、考えていきたいと思います。




2022.1.11(火)

久しぶりの移動


このお正月休み、2年ぶりに実家のある郡山に帰省しました。

コロナ禍でほとんど福島のことばに触れていませんでしたが、家族からばーと話されると、すぐに「〜だばい」「〜べ」「〜さいってくる」など、福島のことばにコードスイッチングできて、その場にいれることを嬉しく思いました。

久しぶりに、東京郡山間を移動した年末年始でした。

「移動」といえば、昨年末に『モビリティとことばをめぐる挑戦 社会言語学の新たな「移動」』(三宅和子・新井保裕編)を刊行しました。


【内容】 「移動の時代」といわれる21世紀、グローバル化、デジタル化の中で移動する人とことばの関係は多様性・流動性を深めている。従来の人文社会科学のパラダイムでは捉えきれなくなった、ポストモダンを生きる人々の「モビリティ」とことばの現実を把握するにはどのような視点や方法論が求められるのか。この課題に取り組んできた10人の研究者が集結。執筆者:新井保裕、岩﨑典子、生越直樹、フロリアン・クルマス(三宅和子訳)、佐藤美奈子、サウクエン・ファン、古川敏明、三宅和子、山下里香、吉田真悟


「モビリティ」は、日本語で「移動」と訳されることが多いですが、その射程は広いです。三宅和子先生の「序章 モビリティ、21 世紀に問われる社会言語学の課題」では、これまでのモビリティ研究と、日本の社会言語学、本書のひとつひとつの論文が、社会言語学にとって非常に重要な問題を提起していることが述べられています。

「モビリティとことば」、とても面白いテーマだと思います。その第一歩ともよべる本書を刊行できたこと嬉しい限りです。

本書では「コラム 私の移動をふり返る」もかなりおすすめです。執筆者の先生がご自身の「移動」をふりかえっています。自分史であったり、研究のきっかけであったり。本書でしかなかなか読むことができないでしょう。

ぜひご覧ください。






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