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2020.8.28(金)

国立国会図書館の抽選予約制



毎週末、大学院時代のゼミ(日本近現代史)の人たちとオンライン飲み会をしているのですが、必ず話題になることがあります。
「国会図書館、抽選通った?」

コロナウィルスの影響で、6月以降、国立国会図書館東京本館への入館は抽選予約制となっています。緊急事態宣言下の5月中はそもそも開館していなかったことを思うと、開館してもらえるだけで、ありがたい話ではあるのですが、それでも入館に制限がかかっていることは院生にとっては大きな痛手のようです。特に歴史学は史料が命なので、抽選が外れてしまうと全く研究が進まない人もいます。
抽選制がスタートした6月はほとんど誰も当選していませんでしたが、最近は週に一日なら当選するくらいの割合になったようです。それでも毎日通えないことは研究の進行に大きく影響を与えているようです。
自分も先日、初めて申し込んでみましたが、外れてしまいました。急ぎの用事でもなかったので困りはしませんが、修論の提出を半年後に控えた後輩の焦った顔を見たときは胸が痛みました。

中公新書の新刊『民衆暴力』の著者、藤野裕子先生も、「あとがき」の中で国会図書館が自由に使えない中での校正作業の苦労話を記していました。コロナウィルスが学術界へ与えている負の影響、計り知れないものであることをひしひしと感じています。
8月25日にデジタルコレクションが追加されたようで、おそらくコロナ下でも利用しやすいようなサービスは、これから増えてくるのではないかと思います。しかし以前「新しい日常」を好意的に捉えた日誌を書きましたが、国会図書館の抽選予約制は新しい日常として定着しないことを願っています。





2020.8.26(水)

「古代エジプト語のヒエログリフ入門:ロゼッタストーン読解」執筆者とのオンライン質問会、開催



人が集まるようなイベントが、様々な配慮のもとで開催され始めました。春は中止や延期のイベントも多くありましたが、人数制限や予約制、会場の工夫など、従来と形式を変えての実施もされ始めたようです。オンライン化したイベントもあり、当日の熱気が味わえないのは寂しいですが、一方で参加しやすく便利でもあり、複雑な気持ちです。

さてひつじ書房でもこのたび初めて、オンラインのイベントを開催することになりました。
ウェブマガジン未草に連載していただいている「古代エジプト語のヒエログリフ入門:ロゼッタストーン読解」の先生方にご登壇いただき、Zoomを使っての質問会を開催します。みなさまが気軽に参加できるようにということで企画された催しです。ぜひご参加ください。

ちなみに、ひつじ書房ではいまだヒエログリフがテーマの本は出したことがありません。それなのになぜこの連載が始まったかと言いますと、本の装丁にきっかけがありました。

『認知語用論の意味論 真理条件的意味論を越えて』(コリン・イテン著 武内道子・黒川尚彦・山田大介訳)
(原著はLinguistic Meaning, Truth Conditions and Relevance: The Case of Concessives (2005))
http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-894-9.htm


この本は、カバーにロゼッタストーンの写真を使っています。本のテーマそのものはロゼッタストーンは関係ないのですが、言語の本質に迫る内容、あるいはことばの読解の手がかりというイメージから採用されたのだったかと思います。
その背景にヒエログリフをあしらおうということになったのですが、言語学の出版社としてはいいかげんに配置するわけにはいかない。でもわからない。そんなときにご助力いただいたのが、本連載の執筆者の一人、宮川創先生でした。
このときは、本の担当者である房主と、Facebookでやりとりしていただいたと聞いています。原著のキーワード(relevance utterance cognition communication concessives meaning)の発音をヒエログリフに当てはめてもらい、宮川先生のお知り合いの方がつくったヒエログリフのフォントを使わせていただいたとのこと。ちなみにカバーソデにも宮川先生のお名前を入れています。

そんなご縁で始まった連載ですが、今年で2周年になります。いよいよ、実際にヒエログリフを読むという段階にさしかかったところです。ぜひご覧いただければと思います。

○第1回はこちら↓
http://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2018/08/31/hieroglyph-1/

○「古代エジプト語のヒエログリフ入門:ロゼッタストーン読解」執筆者とのオンライン質問会 詳細↓
http://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2020/08/20/hieroglyph-event/





2020.8.21(金)

書評コーナー「STRAY SHEEP」始まりました



7月からひつじ書房のwebマガジン「未草」で書評コーナー「STRAY SHEEP」がスタートしました。8月20日現在、こちらから5つの書評を読むことができます。

「書評」という言葉を耳にすると、自分はある人のことを思い出します。それは大学時代に演習授業を受けていた中世史の海老澤衷教授です。
なぜ「書評」という語を聞くとこの教授を思い出すかというと、この教授の学期末の課題が、必ず「書評を書くこと」だったからです。他の多くの授業の課題が自由テーマのレポート(またはテスト)だった中で、教授が指定した学術書の書評を書く課題は、少し珍しいものでした。
教授は毎回、課題を課すたびに「書評は『知の格闘技』だ」という持論を唱えていました。学術書を読んでその学説を鵜呑みにするのではなく、批判的に検討する、読者と著者との知のぶつかり合い、それが書評なのだ、と熱く語っていました。 書評で対象の批判も行うのは今となっては当たり前のことだと思えますが、夏休みのの読書感想文(もちろん、そこに批判的に読解しようという試みはない)くらいしか書いたことのなかった学部1年生当時の自分にはすごく新鮮に思えました。しかし、教授が指定する本は網野善彦氏や黒田俊雄氏といった中世史の大家の著作が多く、これらを批判的に読むことは、それまで本を批判的に読んできた経験がない身にとってはとても大変な課題でした。
提出した書評の出来は散々なものだったと思います。それでもこの課題を通じて、自分は研究に必要な批判的思考というものを手に入れたのだと思います。「知の格闘技」の戦い方を教えてくださった教授には今でも感謝しています。

長々と思い出話をしてしまいすみません。「STRAY SHEEP」は随時更新していく予定ですので、ご愛読いただければと思います。





2020.8.7(金)

オンライン読書会



ついこの間四連休があったのに、今週も三連休だということに気づいて驚いてしまいました。しかも、来週はお盆休みもあるということで、こんなに休みが続くことに少し困惑しています。
本体ならこの連休を利用して旅行や遠出でもしようかと計画を練るところですが、今年はコロナのこともあり、個人的にはあまりあちこちに出掛けようという気分にもなりません。
大学時代の友人と会ったりもしていますが、中には感染を警戒して会うのはリモートだけという友人もいます。

そんな友人たちと、最近は「オンライン読書会」をやるようになりました。今までは対面でしていた読書会を、その名の通りリモートで行うことにしたのです。
このオンライン読書会、対面の読書会よりも優れていることがいくつかあるので紹介したいと思います。

一つ目は「場所を選ばない」ことです。今まで読書会をする際は、どこか喫茶店に入って行なっていました。しかし、土日は喫茶店も満席のことが多く、何店舗も空席を探すこともしばしばありました。しかし、オンライン読書会ならそんな手間はありません。自宅にいるまま参加できるので、場所を探す必要もなく、交通費も場所代もかからないのでとても経済的です。
二つ目は気軽に開催できることです。今までは読書会をするのにも日程調整などをして、メンバー全員の予定が空いている休日の昼間に行っていました。それに対してオンライン読書会は自宅から手軽に参加できるので夜でも開催しやすく、日程調整がしやすくなりました。ある友人とはオンライン飲み会のついでに読書会をやっています。
オンライン読書会のメリットの中で個人的に一番ありがたいのは、自宅の本棚を参照しながら参加できることです。対面の読書会では課題本は持っていきますが、話の最中に他の関連する本を参照したくなっても、手元にないのでうろ覚えの内容で話をすることがありました。あらかじめ関連する本を持っていくこともできますが、冊数が限られますし、何より持ち運びが大変です。しかしオンライン読書会なら自宅の本棚から関連する本を引っ張り出すことができるので、内容も正確ですし、多くの本を参照できるので話が広がりやすくなりました。
この夏はあまり出かけはしないで、自宅でゆっくり本を読む休みになりそうです。アウトドアも好きなので若干残念ですが、これはこれで悪くない過ごし方だと思っています。






2020.8.4(火)

発音指導が苦手な日本語の先生のために



長い梅雨がようやく明け、とたんに暑くなりました。
みなさまお元気でしょうか。わたしは今日も尽きない原稿の山と戦っています。たくさんの素晴らしい原稿や草稿が届いています。お待たせしている先生方、申し訳ありません。ひとつひとつ丁寧に進めていっております。

さて、いろいろな影響もあり6月7月は新刊が出ていなかったのですが、今月は新刊が出ます!



『ベトナム人に日本語を教えるための発音ふしぎ大百科』金村久美・松田真希子著

今まさに印刷前の最終チェックをしているところです。
本書はベトナム語母語話者への日本語の発音の指導法を分かりやすく解説した本で、どうやってベトナム人の日本語学習者に発音を教えたらいいのか分からないというお悩みの声に全面的に応えるものになっています。

本書に登場するお悩みの声を一部紹介します。

「ベトナムの学習者の中に、ザ行やジャ行の音を、ヤ行の音と間違える人がいます。・・・ヤがザやジャになるか、またはザやジャがヤになるか、人によってどちらかに分かれるんですけど、これはどうしてなんでしょうか。」

「ベトナムの学生の発音を聞いていると、長音、短音の間違いがとても多いんです。・・・長い音を短く言ったり、短い音を長く言ったり、その時によって違うみたいで、法則がよくわからないんです。どう指導したらいいんでしょうか。」

「ベトナムの日本語学習者には、文の中で、助詞の部分だけを際立たせるように高く言う癖がある人が多いようです。・・・ただ、日本語の助詞のアクセントって、どんなルールがあるんでしょうか。助詞を高く読むことも低く読むこともあるように思いますが、学生にどう説明したらいいのかよくわかりません。」

などなど、他にもたくさん、日本語の先生なら一度は感じたことがあるのではないかという発音のふしぎ・お悩みポイントが挙げられています。これをひとつひとつ「解説」し、「こんな風に説明しよう!」で学生への指導法を提案しています。練習問題も付いています。
個別のお悩みポイントから読めば、その時困っている事がすぐに分かるので「緊急お助け救急箱」のように使っていただくこともできます。ただ、この本の良いところは、ベトナム語と日本語、それぞれの言葉の発音の仕組みから学習者がなぜそのそのような発音になるのかを解説しているところです。ベトナムの学習者の苦労と困難をより理解していただくには、1冊通して読んでいただくのがおすすめです。

わたし自身は日本語を教えた経験はありませんが、この本を読んでいてとても勉強になりました。
ベトナム語の発音の仕組みを知ることもそうですが、自分が普段当たり前のように話している日本語についてもたくさんの発見があります。日本でベトナムの方に接する機会の多い今、日本語を教える人だけでなく、より多くの人に読んでいただきたい1冊です。
発音のふしぎにせひ触れていただければと思います。8月末ころ発売です。






2020.8.3(月)

Wordでレイアウト設定 版面横幅編


Wordでレイアウトをこまごまと変更する時の挙動は分かりづらく、今回レイアウトの設定を少し詰めてみたので、備忘録的に記します。

今回29字×22行のフォーマットを作成したいと思いました。長くなるので、今回は文字数の点のみに絞ります。

私の手元のWordを開いて、「文章のレイアウト」を見ると、40字×36行になっていることが分かります。数えてみても1行に40字入っています。



これを29字×22行に変更しました。



無事1行あたり29字となっています。しかし、お分かりでしょうか。字間が妙に空いています。これは気になります。あまり気にならないかもしれませんが。
「字送り」というのは文字の真ん中から次の文字の真ん中までの距離を表すもので、これを変更すれば字間が詰まりそうなものです。しかし、これを変更すると文字数も連動してしまい、使えません。



上記のように、和文の本文は、通常文字の間隔は空けません。正方形が並ぶ形、これをベタ組みと言います。

Wordの方で、ベタ組みにするためには、文字間にスペースが入らないように版面の横幅を小さくする必要がありそうです。そのため、余白の変更をしないといけません。


・設定編

今回は文字のサイズをもう少し大きく12ポイントにすることにしました。本文のサイズを12ポイントに変更して、ここではポイントだと計算しにくいので、ミリに直して考えます。1ポイントの大きさは、0.35277...ミリです。

そこから版面の横幅を計算できます。0.3527(ミリ)×12(ポイント)→1文字あたりの大きさ4.2324ミリ×29(字)=122.7396ミリ、これが文字の入る範囲、版面の横幅となります。
紙は標準的なA4にしています。A4の紙の横幅は210ミリです。

つまり、210(A4のサイズ)-122.7396(版面の横幅)=87.2604

これが余白の大きさとなります。左右に余白が入るので、2で割ると、43.6302ミリが、左右それぞれの余白となることが分かりました。デフォルトでは30ミリが左右の余白となっています。



ここに入力してみましょう。文字数も再度入力します。


するとこうなります。



???
1行に29字入っていません。「これは」の3文字が溢れています。なぜかと言うと、見た目上は12ポイントの文字ですが、レイアウト上はデフォルトの10.5ポイントという風にWordが認識しているからです。試しにこの文字を選択して、10.5に変更すると一行に収まります。つまり、見えない10.5ポイントのマス目が29文字分ここには入っていて、12ポイントの文字を入力するとあぶれた分が次の行に行ってしまっているということなのでしょう。何を言っているか分からないと思いますが、私も分かりません。はい。

そのためどうするかと言うと、レイアウトの設定から、文字ポイントを変更する必要があります。「フォントの設定」から(文字数29字になっているのにな…)、



文字サイズを12ポイントに変更しました。



変更をすると文字数の設定が狂っているので再度29字にしてOKを押すと、無事収まったようです。



しかし、ポイントをミリに換算した際に、端数の7が続くのを切り捨てているし、余白の設定も後から見ると、小数点第二位以下は切り捨てられています。



だから、本当は微妙な端数の関係で綺麗に収まるはずはないのですが、そのあたりはWordがわずかに文字間を調整しているのでしょう。


以上がWordで版面の横幅を設定するときの流れとなります。

まとめると、

1.初めに本文のポイントサイズ、1行あたりの文字数を任意に決定。
2.版面の横幅を計算。
3.[文書のレイアウト]に余白を入力。
4.[文書のレイアウト]に文字数、[フォントの設定]に文字サイズを入力。

という流れになるでしょうか。

素直に考えて、[文書のレイアウト]で文字サイズと1行あたりの文字数を入れたら、余白が自動で変更されて欲しいものですが、そうはなりません。まずは余白から設定する必要があります。

これはなぜかと考えると、おそらくWordがアメリカの会社によって作られたものだからではないでしょうか。
欧文を入力する為に作られたものだからです。

上で見たように、和文の文字は正方形で作成されていますが、欧文のアルファベットは、一文字ずつ大きさが違うので、文字サイズと文字数で自動的に版面が決まるということがありません。



版面に合わせる際には、単語間のスペースで調整をしています。
レイアウト関係のデザイン書を見ると、版面の設計でまず初めに基本として出てくるのは、だいたいが黄金比に基づいた版面設計です。


『グラフィックデザインにおける秩序と構築』(ビー・エヌ・エヌ新社 2020)

このように、本を開いたときに、美しく見える比率で、版面の範囲を決める手法です。(他にも様々な比率と、その際の印象がこの本にはまとめられていて、おすすめです)

和文で考えたとき、こういう風に初めに版面の範囲を決めてから、本文の文字数を設定するということもできなくはありませんが、小数点以下の数字が出てきそうなことが予想できると思います。和文組版では、これまで私が見聞きした限り、文字サイズを小数点以下まで細かく設定するということはありません。あったらすみません。

基本的に、和文組版とは考え方が違うのかなぁと感じます。

出版社として、執筆のための本文フォーマットをWordで作るということはよくあることですが、きちんと設定するためにはとても大変です。

ただ、ここまでベタ組みを前提に書いてきましたが、Wordをそのまま印刷するわけではないので、そもそもベタ組みにする必要はないとも考えられます。実際、これまでそこまで厳密に考えてはきませんでした。

字間が少しくらい開いていてもほぼ気づかないし、むしろディスプレイ上はある程度字間が空いている方が見やすいかもしれません。そのあたりはきちんと考えた方が良いでしょうね。

※文書のレイアウト設定欄にある、「標準の字送りを使用する」にチェックを入れると、「フォントの設定」さえすれば自動的にベタ組みとなり、余白は右側で調整されることが分かりました。その場合、右側の余白で調整がされるので、文章が真ん中に来なくても気にならなければ楽な方法だと思います。他にも良いやり方があればお教えください






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