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7月

2019.7.24(水)

紙がない!



最近、書籍の紙を発注しようとして、「在庫切れです」と言われることが多々あります。
今年の2月頃から本文用紙やコート紙の品薄は常にありました。工場の火事や流通経路の問題、生産数の減少などが原因だそうですが、一時期回復していたので油断しており、7月に出来る本では代替の紙を探すのにてんやわんやでした。

本文用紙なんてなんでも同じでは、と思われるかもしれませんが、紙の厚さや透け具合、色味などが微妙に違います。
本文用紙は、弊社の学術書等の多くは、真っ白ではなく薄いクリーム色の書籍用紙を使っています。また、同じ銘柄の紙でも、「斤量」(紙の重さ)が何種類かあり、これは紙の厚さに反映されます。紙の厚さは、めくりやすさもありますが、例えば写真が多い本だったらあまり透けない紙の方が読みやすい、というようなことに関係します。

見た目でより明確に変わってくるのは、束幅(本の厚さ)です。
予定していた銘柄・斤量の用紙が品切れで別の紙にするとなると、高確率で束幅が変わります。1〜2mm程度ではありますが、表紙やカバーの印刷前に調整が必要です。
また、「ひつじ研究叢書(言語編)」のように函に入った本だと、事前に必ず束見本(実際の紙・頁数で作った白紙の本)を作っています。これに合わせて函を作るので、本文用紙が変わってしまうと函のサイズが合わなくなることがあり得ます。

辞書をつくる過程を描いた三浦しをんの小説『舟を編む』では、紙を吟味しているシーンが印象的でした。辞書の場合は、極薄の、めくりやすさを重視した紙になるのではと思います。辞書は頁数も多いので、紙厚と束幅の関係も顕著でしょう。

今回は幸いなことに代替の紙が見つかりましたが、今後はより計画的に、事前の用紙確保が重要になりそうです。「紙がない!」というフレーズはお手洗いにいる人だけのものだと思っていましたが、印刷・出版関係者にも回ってきてしまいました。






2019.7.9(火)

「声と身体の分析」の可能性



神保町にある出版社読書人で(読書人の会議室は「読書人隣り」という名前で、貸し出しもしているようです)、『ELAN入門ー言語学・行動学からメディア研究まで』の刊行を記念して、編者の細馬宏通先生、菊地浩平先生に対談をしていただきました。この記事は、週刊『読書人』8月9日号に掲載予定ですので、ぜひご覧ください。

対談の中で、ELAN(動画アノテーションソフト)とPraat(音声分析ソフト)の連携についてのお話がありました。
『ELAN入門』の読者から、「これまではELANでPraatを使う方法がよくわからなかったけど、この本があれば使えるようになりそう」という声が編者に届いているそうです。ELANとPraatの連携については、伝康晴先生に「第11章 音声分析との連携」を書いていただきました。ここでは、イントネーションの注釈を書いている時、聴覚印象が正しいかどうか確かめたい場合などに、ELANからPraatを呼び出して、トーン層を読み込むための具体的な作業が書かれています。

ELANとPraatを使えば、アクセントやイントネーションと身体動作との関係を分析するということもできるそうです。例えば「イントネーションが昇りきった点での、身体動作はどうなっているのか」など。動画と音声を一緒に観察する事で(ELANはそれを容易にしてくれます!)新たな面白い発見があるかもしれませんし、こういった研究が増えてくるのかもしれないと感じました。

ちなみに、Praatについて詳しく知りたいという方は、北原真冬・田嶋圭一・田中邦佳著『音声学を学ぶ人のためのPraat入門』をオススメいたします。






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