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6月

2019.6.26(水)

『関西弁事典』が造本装丁コンクールで入賞しました



真田信治先生監修の『関西弁事典』が、第53回造本装丁コンクールで日本図書館協会賞を受賞しました。

会社として初めての受賞ということもあり、とても嬉しいです。
今回は『関西弁事典』の「造本装丁」についてご紹介します。



外箱の絵柄は、ぱっと見て「何だろう」と思う人もいるかもしれませんが、関西の地図を重ね合わせたデザインとなっています。
関西弁の多様性や重層性、関西弁が織りなす世界を表した、この事典にぴったりのデザインです。

この外箱の絵柄をはじめ、本の資材の検討も含むブックデザインは中垣デザイン事務所にお願いをしました。
中垣デザイン事務所には以前『日本エスペラント運動人名事典』のブックデザインもお願いしています。この本もなかなかステキです。

多くの辞書・事典を手がける中垣さんは、事典のデザインには「派手さよりも、その事典を使う人に寄り添い、長い時を書籍として耐えられる堅牢な外函・本表紙が必要」とおっしゃっていました。
見た目だけでなく、使用に耐えうるという観点からも適切なデザインがなされているのです。今回の受賞のポイントになった点でもあるのではないかと思います。

『関西弁事典』の「堅牢な外函」を作るにあたっては、厚さの異なる22号と26号のボール(厚紙)で函の見本を作って検討しています。
堅牢で重厚感のあるものを目指しているとはいえ、堅牢すぎては逆に使い勝手が悪くなるため、堅牢すぎず、もろすぎずというところを探って22号の方を使用することにしました。このボールの上に、絵柄が印刷された紙を貼り付けているので、より丈夫な仕上がりとなっています。

本表紙は、薄めのボールに落ち着いた色味の布クロスを貼っています。ボールについても製本の星共社さんとも相談しつつ決めました。当初の予定のボールだと、角丸加工をする際に機械でうまくできないということで、最終的には「片面クラフト(L判31kg)」になりました。クロスには「バクラム No.21」を使っています。

表紙の角丸加工

本表紙には空押しと箔押しの加工が施されています。
弊社とデザイナーさんからは「強く押して欲しい」とお願いをして、「これ以上やると機械が壊れる」というところまで頑張ってもらったものです。
ボールが薄いことと、表表紙と裏表紙は全面に押しがかかるデザインのため、圧力が分散されて難しいのだそうです。綺麗に仕上げてくださりありがとうございます。箔は村田金箔の「つや消し金 No.111」です。

表紙の箔押しと空押し
見返しの紙は「NTラシャ 濃黄土(四六判Y目 100kg)」、花切れはアサヒクロースのA52です。
この本にはスピンもついています(アサヒクロースのA15)。事典にはスピンがあった方が便利です。

見返しとスピン、花切れ

もちろん、中身のデザインにもこだわりがあります。
事典の本文を生かす組版と図版は、ぜひ実物を手に取ってご覧ください。







2019.6.11(火)

公共図書館の在り方



先日、神保町の岩波ホールで公開中の『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(監督:フレデリック・ワイズマン)というドキュメンタリー映画を観てきました。
本編の上映時間が3時間25分と、通常の映画としては異例ともいえる長さにもかかわらず、私が観た回も、その次の回も満員という盛況ぶりでした。


3時間を超える映像の中で映し出されるのは、ニューヨーク公共図書館の本館および分館の活動や舞台裏です。ナレーションは一切入りません。
図書や資料の貸出だけではなく、さまざまな講演やワークショップなどを行う様子や、図書館スタッフ間のディスカッション、図書館スタッフと市民との対話の様子などがありのままに映し出されます。

これから観に行かれる方もいらっしゃるかもしれませんので、詳細については控えますが、映画では、ニューヨーク公共図書館で実際に行われている活動の一部として、子どもへのプログラミング教育や演劇の手話通訳のワークショップなど、興味深い取り組みの様子も紹介されており、図書館の可能性を感じさせられました。
また、経済的格差による情報格差を是正するために、インターネットの接続機器の貸し出しを行うなど、図書だけではなく、「知」の提供、共有という観点からも、市民生活に深く根ざした存在になっていることが印象的でした。

ちなみにひつじ書房は、2001年に『進化する図書館へ』という書籍を刊行しており、そのなかに菅谷明子氏による「進化するニューヨーク公共図書館」という論考を掲載しています。
当時より時代がすすんでいるためサービスの内容は進化しているようですが、基本的には今回映画でとりあげられている内容と重なる部分が多くあります。 このように、弊社も約20年前から公共図書館の在り方について関心を寄せています。


梅雨のこの時期、お出かけが億劫になりますが、映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』、ご興味のある方におすすめしたいとおもいます。
ちなみにこれだけの長さの映画なので、全編真面目に起きていようとすると多少の気合いが必要ですが……!
上映は7月5日(金)までです。






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