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2月

2019.2.19(火)

言葉の盲点



先日、引っ越しの見積もりのため業者の方と話していたときのこと、
「ご主人、もしかしてご出身は関西ですか?」
と、不意に聞かれました。

事実、主人は大阪出身。私自身は東京で生まれ育っており、また、ことばの本を多く出している出版社に勤めていることもあり(?)、方言には気づけることが多いのですが、その時は特に気になりませんでした。
アクセントとかでわかったのかなぁと思い聞いてみると、その方も関西のご出身で「いがむ」という言葉でわかったということでした。

「いがむ」は広辞苑(第六版)に「ゆがむ」の訛り、とありました。
「机の脚がいがんで……」などと話していたのですが、音も似ているので私は気づきもしませんでした。気にしなかっただけでこれまでにもそう言っていたのを聞いたことがあったのかもしれません。

面白くなって色々と聞いてみると、引っ越しの仕事はさまざまな地方出身の方々と出会い、とても生活に密着した話になるのでいろんな方言を聞くことが多いそうです。当たり前のように話されて頭の中に「???」とハテナがいっぱいということも。間違いがあってはいけないので、そういったことも気をつけて確認すると仰っていました。

この話を聞いて、昨年ひつじ書房で刊行した『日本で生まれ育つ外国人の子どもの日本語力の盲点』 を思い出しました。

本の中で日本で生まれ育つ外国人の子どもが「(目薬を)さす、(シートベルトを)しめる、(ご飯を)たく、(掃除機を)かける」など、家庭場面に限られるような動詞用法が苦手とする傾向が見られ、難しい言葉ではないのに知らないということがあるというたいへん興味深い調査が述べられていました。

家庭の中で使われるような言葉は、学校などで教師から指摘されるようなことも少ないため、つまづきは別の言葉で表現し、もし誤った表現になっていたとしても話の流れで内容を理解はできるため、改めて直されるようなことが少ないように思います。そういった面でも本書がたくさんの人に読まれ、実際の教育の現場でも生かされ、認識が広がれば良いなと感じます。

普段気づくことのない言葉の差について、ぼんやりと考えてみるこの頃です。





2019.2.6(水)

山括弧の代用としての不等号



今日は私の願いです。世界中に届け、という思いで書きます。

今、認知言語学関係の論集を作っています。

認知言語学系の論文には、概念などを表す<山括弧>が使われることが多いです。この<山括弧>ですが、言語学の中では認知言語学系に顕著に多いように感じます。文学研究も〈山括弧〉を使うことは多いですね。

さて、上で山括弧の記号を三回使いましたが、はじめの二回は、分類上は山括弧ではありません。

不等号です。

しかし、論文の中で使われているのは、圧倒的に不等号の方です。

不等号が山括弧の代用として使われています。

確かに、不等号でくくった方が山括弧よりは目立ちます。ただ、目立たせる必要があるか?とも思います。やりたいのならボールドにすれば良いのだし。

不等号を山括弧の代わりに使おうと初めに言い出したのは誰なのかしら。

認知言語学といえばということで、日本認知言語学会の論文執筆要領を確認してみましたが、山括弧の使い方についての指示はありませんでした。
山括弧の代用として不等号は使われていましたが。

想像するに、キーボード上で「、」「。」のキーに「<」「>」が表示されているので、特に気にならず山括弧と思って使ってしまうのかなと思います。

キーボード上「8」「9」をシフトを押しながら入力すると、( )丸括弧が入力され、そこから変換をすると山括弧にたどり着けます。

なぜこういうことを言っているかというと、論文中に山括弧の代用として不等号が使われている場合、手作業で修正をする必要があるからです。一括変換をすると、本当に不等号として使っている場合に置き換わってしまいます。また、矢印的に使われている場合もあります。

なので手作業でゲラに指示を入れていく、そしてそれを作業者がデータで直していく、手間がかかります。

やめません?ということです。

誰も困らないし、むしろみんな使っているから、不等号で良いのでは、という考えは、それはそれでありと思います。
強制はできません。でも、本の中で混在していると統一しないといけませんし、なにしろ目立つので目に付くのですよね…。


あと同様に記号の使い方で気になっているのが「ゼロ記号」ですが、それはまたいずれ。


●不等号と山括弧の図





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