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8月

2018.8.21(火)

今年は岐阜がアツイ



災害とまで言われた今夏の酷暑。私の地元、岐阜県も豪雨と酷暑におそわれ、近年稀に見る非常に過酷な夏だったようです。
子どもの頃の夏を思い返してみても、35℃を超える日などほとんど記憶にありませんし、ずっとクーラー無しでも過ごせる気温でした。
地球温暖化が進んでいるとはいえ、やはり今夏の暑さは異常と言えるのではないでしょうか。やっと少しずつ暑さが和らいできて、ほっとされている方も多いのでは、とおもいます。

さて、全国最高気温ランキングでの上位ランクインや、NHKの朝の連続テレビ小説の舞台になるなど何かと話題の岐阜ですが、今年は秋の方言研究会(10/12(金))、日本語学会(10/13(土)、14(日))も岐阜(於:岐阜大学)で開催されます。

もちろん、例年同様ひつじ書房も出展させていただきます。 秋の新刊を携えての参加になりますので、まだ参加を迷われている方、今まで岐阜を訪れたことがないという方も、この機会にぜひ岐阜まで足を伸ばしていただけますと幸いです。

学会出張のついでに金華山と長良川に癒されつつ、本場の飛騨牛や鮎などに舌鼓を打つのもよいかもしれませんね!







2018.8.8(水)

字間・語間のアキ

最近、同様の内容で何度か質問をいただくことがあったので、以下にまとめたいと思います。


さて、以下の参考文献からの画像ですが、何か気付くところはありますでしょうか。


(『An Introduction to Discourse Analysis』p.146, Routledge, 2010より)

一番上の行から補助線を入れると分かりやすいかも知れません。



著者はすべて、Gee, J. P. で同じですが、赤い点線を引いた部分、名前の最後の P. の位置、刊行年の終わりの位置がどれも揃っていないことが分かると思います。それで、おかしい、不揃いだと感じることもあるかもしれません。

なぜこうなるかと言うと、一行あたりの行長が決まっていて、行末揃えになっているからです。左の緑の点線と右の緑の点線の間が、文字の入る一行あたりの長さになります。左端と右端をきっちり揃えて組みましょうということで、この組み方をジャスティファイ、日本語だと両端揃えなどと呼ぶものです。

日本語は、漢字もひらがなも、正方形のマス目で並べるのが基本なので、行長の指定がマス目の倍数の長さであれば綺麗に収まります。欧文の場合は、アルファベット一文字ずつそれぞれ大きさが違うので、どうしても半端が生じます。

また、欧文は基本的に一語を分割しません。「Analysis」という語を例にすると、「A」が行の末尾に来て「nalysis」が次の行に行くということはありません。やるとすれば語と語のスペースを詰めて「nalysis」を行内に収めるか、「A」を次の行に送って、「Analysis」全体を次の行にするか。

基本的に英文組版では本文の字間を調節のために空けるということはありません。(A n a l y s i s のように)

そのようなことで、行には半端が生じるので、それを解消するために、語間(ワードスペース)を空けるということになります。上の例だと、「Gee,」の「,」の後のスペース、「J.」の「.」の後のスペースがそれぞれ異なっていることが分かると思います。パソコンなどでの機械組版では、その行のワードスペースが自動的に均等に空けられることになります。

そのために、同じ著者の名前が続いても、縦に見ると不揃いに見えることがあるということです。

ちなみに、上で一語を分割しませんと書きましたが、一つ方法があり、それはハイフネーションといって、語の音節部分にハイフンを入れて区切り、区切った箇所で次の行に送るという方法もあります。ハイフネーションは各社にルールがあります。ハイフネーションを入れると半端から生じる空白を減らしやすい反面、語の途中にハイフンが入るので読みやすさに響くということもあります。ハイフネーションを使うかどうかは本の性格や各社の判断となります。

また、これは両端揃えで組んでいるから起こることで、行末をそろえない、アンジャスティファイド、またはラギッド・ライト(日本語だと左寄せ)などと呼ばれる組み方ですと、右端が揃っていなくてぎざぎざになりますが、行長より長い語が来たら次の行に送られてそのままなので、間延びすることはありません。基本的には両端揃えの組み方がメインとなりますが、雑誌などでは使われることもあるようです。日本語組版ではほとんど見かけません。


さて、これまで欧文のことについて書いてきて、日本語はマス目だから安泰という風に読めたかも知れませんが、そうでもありません。確かに漢字やひらがなは正方形のマス目であるとしても、例えば欧文や数字が文章に入って来るとどうなるでしょうか。上で「英文組版では字間を空けない」と書きましたが、日本語は語間を空けないので、空けるとすれば、字間を空けることになります。下は和欧文混色組版の苦しいところが出たかなという例です。


『Newton別冊 ゼロからわかる人工知能』(p.47, ニュートンプレス, 2018)

一目見て一行目の字間が目につくと思います。自分の原稿だったらもしかしたら「字間ツメ」など書いてしまうかもしれません。しかし、これはツメられるでしょうか。

少し検証してみました。ツメとする場合必然的に空いた空間に次の文字が来ざるをえません。次に来るのは「『The」です。入るでしょうか。実際に定規で計算してみたのを記入してみました。



すると、一行目はおおよそ1ミリずつ字間が空けられていることが分かりました。合計すると9ミリ分アキが加えられていることとなります。次に来る「『The」はおおよそ8ミリでした。となると、前の行に送ることができる、やった!となるのですが、もう少し考えてみます。

「『The」が前の行に行くと、8ミリ(厳密には「『The」の後のワードスペースもプラス)分のアキができることになります。このアキを解消するためには、「Journal」「of」「Americn」「Medical」の間にある3つのワードスペースに8ミリ分のアキを追加しないといけません。結構空きすぎてしまうような気がします。もちろん次行の「Association』」は上の行には到底入りそうにありません。

なので、ここではこうする他ないのです。ただし、どうしてもなんとかしたい場合、一行目にもう一字か二字、追加するという方法があります。例えば「2017年に,」とすれば一字分埋まります(1文字おおよそ4ミリでしたのでおそらく2文字入れられますが、確信できない場合は念のため編集者に確認した方が良いと思います)。

和欧混色組版では不可避な問題なのですが、特に上のような例は極端な例ですが、行長が短い設定で、そして英語が頻出すると起こりやすいように思います。

欧文との混色の例を出してきましたが、考えるべき事はとてもたくさんあります。例えば約物などが行頭行末に来てはいけないというルール(禁則処理)がありますがそれをどう調整するか。行頭に置けない文字→ 、 。 」 など。行末に置けない文字→ 「 ( [ などです。メールでは禁則処理が効かない場合もあります。

以前ひつじ書房のシリーズ「ひつじ研究叢書(言語編)」で本文設計をしていただいたデザイナーの向井さんの新著、『日本語組版入門』(向井裕一、2018、誠文堂新光社)では以下のように述べられています。

実際の文章は、正方形の枠内にデザインされた活字とともに各種の補助符号・ローマ字といった、幅の異なる文字とともに構成されている場合もあるので、ベタ送りで指定行長に配置できないことがあります。これらの半端とその処理方法の違いによって、日本語組版の多様性が生まれるのです。(p. 37)

どうやったらより読みやすくなるか、どういう設定が良いのか、常に検討しながら、できるだけ良い組版の本をお届けしたいと考えています。








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