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3月

2017.3.22(水)

去る3月に思うこと



1月は行く、2月は逃げる、3月は去ると言いますが、年明けからはまさに怒濤のごとく、あっという間に時が過ぎ去っていったように思います。
ふと気づけば、わたしがひつじ書房に来てからもう1年がたちます。担当した書籍も何冊か刊行され、新しく本ができあがるのが、今では何よりの楽しみです。

ひつじ書房では現在求人をおこなっているのですが、採用試験や面接の様子を見ていると、同じようにわたしが試験や面接を受けていたときのことを思い出します。
特に面接は、とても緊張したのでよく覚えています。わたしが面接を受けた時には、社員のほとんどが面接官で、一対多の状況で面接がおこなわれました。その状況だけでも心が折れそうだったのですが、言いたいことがうまく話せなかったり、厳しいことを言われたりして、自分の不甲斐なさを感じ、とても落ち込みました。

今となって思えば、面接する側も別に意地悪をしていたのではなく、真剣に面接をしていたのだということも分かりますし、わたしも過剰に緊張する必要はありませんでした。ただ、そのときの「話しにくさ」というのが、妙に印象に残っているのも確かです。
そのとき思った話しにくさというのは、誰に向けて話したらいいのだろう、ということでした。年齢も役職もさまざまな初対面の人たちを前にして、誰を相手に、誰に合わせて話したらいいのかまったく分からず、なぜそんなことを考えてしまうのかも分からず、そのときは混乱していました。話の「宛先」がブレたために言葉が出てこなくなるというのも初めての経験でした。
このような面接の場に限りませんが、さまざまな立場のさまざまな人が集う場で話をするということは、思ったよりも難しいことのように思います。

先日、『市民参加の話し合いを考える』という本を刊行しました。
この本は、いま改めて「話し合いとは何か」ということを考え、話し合い学の多様性を発信していく先端的なシリーズ「話し合い学をつくる」の第1巻になります。
話すことが難しいのなら、話し合うということはもっと困難なのでしょうか。それとも、話し合うということは簡単で、皆あたりまえにできることなのでしょうか。
ぜひ本書を手にとって、考えていただきたいと思います。





2017.3.17(金)

ディープな池袋、発見



先日、とある企画がらみで「池袋チャイナタウン」巡りに行ってまいりました。 池袋チャイナタウンとは、主に中国人による中国人向けの飲食店などが密集したエリアのことで、池袋駅北口を出た周辺にあります。

個人的に、中華料理やエスニック系の料理を求めてこのあたりを歩いたことは今までにもあったのですが、あらためて通りの隅々まで見てみると、飲食店に限らすスーパーマーケット・カラオケ・書店など、実に数多くの店舗が軒を連ねています。
それらの店の多くがテナントビルの4階やもっと上の階に入っているため、あえて顔を上向けて歩かないと、なかなか目につきにくいかもしれません。あんなに上を向いて池袋を歩いたのははじめてでしたが、どのお店も自分の知らない世界の魅力に溢れていて、日本人としてはなかなか足を踏み入れがたいながらも、おおいに惹かれるものがありました。

一歩ディープな世界に足を踏み入れると、ひと口に「中華料理店」といっても、取り扱っているのは香港料理、四川料理、火鍋、串焼き(牛、羊、蚕(!)エトセトラ……)など、それぞれ分かれています。同様に、池袋チャイナタウンに暮らす人々のバックグラウンドも多種多様で、とても一度歩いただければ知り尽くせません。ぜひ、定期的に足を運んでみたいものです。

もしもツアー第2弾があったら、ここに続報を書きたいと思います。






2017.3.10(金)

『〈ヤミ市〉文化論』刊行!



先日『〈ヤミ市〉文化論』を刊行しました。

本書は、2015年に東京の池袋で開催された「戦後70年企画「戦後池袋 -- ヤミ市から自由文化都市へ --」」という、豊島区、東京芸術劇場、立教大学が主催したシンポジウムや展示や屋台出展などの複合的なイベントが基となっています。そのイベントの直接的なまとめではありませんが、それに関連した先生方によるヤミ市に関する論考を今回一冊にまとめました。

そのイベントの際に、ひつじ書房は「展示資料解説」というパンフレットの作成のお手伝いをさせていただきました。



本書の中には、そのイベントの中で行われたシンポジウムを収録しています。イベント自体は、様々な展示があったり、屋外でヤミ市風の屋台が出たりと、まさにヤミ市風な雑多な雰囲気が出ていてとても楽しいものでした。

先日は、刊行後に合評会として、執筆者と外部の研究者の方を招いて討議をしました。本書に収められた各論について色々な指摘や注目のポイントなどが分かって、オープンにおこなった会ではありませんが、この合評会自体も充実したものでした。

その中で私の印象に残ったことを2点だけご紹介しますと、「敗戦後日本のヘテロトピア -- 映画の中のヤミ市をめぐって」(中村秀之)の中に、ある映画に出てくるヤミ市の場面の写真を掲載していますが、これは実際のヤミ市を撮ったもので(上野から御徒町方面を向いた角度で撮っているということがその場で特定されました)これまでヤミ市関連の資料として看過されてきた資料であるということでした。写真はぜひ本書をご覧ください。

また、「占領期東京の小劇場・軽演劇・ストリップ -- 秦豊吉と東郷青児の邂逅」(後藤隆基)では、実業家と画家がストリップという場で手をとりあっていくという話ももちろん面白いですが、今年は日本にストリップが誕生して70周年ということで、先日朝日新聞でもとりあげられていました。


その記事でもストリップの始まりとして言及されている額縁ショーが、まさに本論文で取り扱っている内容です。今から見ると、真剣さが伝わるだけになかなか滑稽というか、これも面白い内容です。

合評会のあとは、池袋でヤミ市にルーツを持つという建物に入った中華屋さんで懇親会を行いました。

本企画に関してはこれでひとまず一段落です。打ち合わせから数えると2年以上にわたってヤミ市にまみれ続けました。今まで気にしなかったことが、関わるようになっていろんな事をアンテナでキャッチしていく感覚は編集の醍醐味かも知れません。

とても良い本に仕上がったと思いますので、ぜひご覧いただければと思います。







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