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8月



2015.8.19(水)

造本装幀コンクールのこと


毎年7月頃、東京国際ブックフェアが東京ビックサイトで開かれますが、このイベントでは例年、「造本装幀コンクール」出品作品の公開展示が行われます。
造本装幀コンクールは、印刷・製本やデザインを総合的に評価する出版業界で唯一の賞です。今年は349点の応募があったとのこと。公式パンフレットを見ると、糊を使わず糸かがりで製本した博物図譜の本、本文中の片面が鏡張りになっている絵本など、手に取ってみたいと思わされる本ばかりです。

ひつじ書房からもしばしば出品していますが、うれしいことに、今年は『明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究』(府川源一郎著)が審査の最終候補まで残り話題に上った作品としてパンフレットに掲載されました。
この本は明治初年の子ども向け翻訳啓蒙書・小学校用の読本・修身教科書などの資料から、明治期の子どもたちがどのようにリテラシーを身につけたのかを探る研究書です。装幀・組版は春田ゆかりさんにお願いしました。総頁数1220ページ、重量にすると3キロを超す大著です。審査員の柏木博氏によるコンクールの総評を読むと、今年は候補に残ったものは絵本や写真、絵画などのいわゆるヴィジュアルの書籍が多かったそうで、そのなかでこの研究書が残ったことは素晴らしいことと思います。
書籍は、その内容に合わせてデザイン・装幀をつくります。本文の読みやすさ、合計頁数、予算、書店で目立つ外見がいいのか、用紙は面白い質感のものがいいのかあるいは将来的に重版になったときに手に入りやすいものがいいのか……などなど、その本によって、重視するポイントは様々です。コンクールというと、派手な本・目立つ本が取りあげられがちでないかと思うのですが、今回の『明治初等〜』は、きちんと研究書としての装幀という観点で評価していただいたのかなと思います。

今年は残念ながらブックフェアに行くことができなかったのですが、今後もどんな本が出品・入賞しているのかに注目しつつ、今後の本作りに生かしていけたらと思います。






2015.8.5(水)

電子化をすこしずつ進めています


電子書籍は便利なものであるとは思いますが、電子化するのはけっこうたいへんなことだと思っています。

弊社でも電子書籍についてはいろいろと試みています。日本語音声コミュニケーション教育研究会の雑誌『日本語音声コミュニケーション (Japanese Speech Communication)』はその1つです。音声や動画が埋め込まれたインタラクティブPDFです。例えばある方言のアクセントの研究でしたら、論文を読んでいるその場で方言の音声を聞くことができます。とてもおもしろい媒体だと思います。

弊社で実際に動き始め電子コンテンツを作成し始めたものですと、Maruzen eBook Library版があります。Maruzen eBook Libraryは、丸善がおこなっている大学・研究機関向けの電子書籍閲覧サービスです。大学の図書館に入っているという方もいらっしゃるのではないかと思います。丸善の方によりますと海外の大学向けにも動いているとのことですので、海外への新たな販路の拡大に期待したいと思っています。

Maruzen eBook Library版のデータはPDFです。紙でこれまでに刊行した書籍のMaruzen eBook Library版をつくることを進めています。

まずはMaruzen eBook Library版を作ることについて著者の先生にご報告またはご了承をいただくことが重要です。

OKをいただきましたらデータの用意となります。比較的新しい書籍ですとインデザインという組版ソフトで作った組版データがありますのでそれを仕様にそってPDFに書き出します。前に出した本ですとそうすんなりいきそうにありません。組版データがあってもソフトのバージョンが新しくなってた場合にうまく以前のデータを再現できるかというと問題が起こる可能性は大きいです。組版データがない時代のものでしたら、実際の本からPDF化するという作業になります。

まだはじめたばかりですのでこれからどういった問題が起こるかわからない、思いもかけない問題がありそうで、たいへんだなあと感じています。いっぺんには難しいと思いますがこつこつと進めていきたいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。




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