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5月

2015.5.29(金)

学会シーズン


5・6月は学会が目白押しです。
今週末はなんと学会が6つもあるため、ひつじ書房はスタッフ総出での参加となります。
わたしは先週末と今週末、合わせて2週連続での参加です。

先週参加したのは方言研究会と日本語学会の2つの学会で、それぞれ甲南大学、関西学院大学が会場でした。22日に開催された方言研究会は、日本語学会に比べると規模は小さいですが50周年を迎えたそうです。
日本語学会は大規模な学会で、今回の大会は23日、24日の2日間をかけて行われ、ひつじ書房の他に21社の出版社・書店が書籍の展示・販売を行っていました。わたしが今までに参加した中で一番大きな学会でしたので、お金の数え間違いがないか、本の渡し間違えがないかなど色々と心配しましたが、社長、先輩方と手分けしてお客様の対応をし、無事に学会を終えることが出来ました。

ひつじ書房が参加する学会・ワークショップは様々です。日本語学会のように参加者が1日500人を超す学会もあれば、参加者50人以下の小規模なものもあります。
ただ、どの学会でも発表される研究成果・研究経過には興味を引かれるものが多いと感じます。わたしが参加した経験のある学会はまだ数えるほどですが、これまで参加した中では「話しことばの言語学ワークショップ」でのポスターセッションと講演が非常に印象に残っています。自分たちが当たり前のように交わしている会話を分析していく過程が、まだ学問に通じていないわたしにとってもたいへん面白く感じられたためです。
研究者の方々によるシンポジウムや講演会を聞く時にはもちろん、今後の仕事に活かしたいという思いもありますが、時に立場を忘れて聞き入ってしまうこともあります。今後もぜひ、そうした経験をしていきたいと思います。

今週末、わたしは武蔵野大学有明キャンパスで開かれる日本語教育学会に参加します。時間を見つけて、パネルセッションや発表も聞きに行きたいと考えています。
たくさんの方々にひつじ書房のスペースに足を運んで頂くと共に、研究発表からたくさんの刺激を頂きたいと思っています。




2015.5.28(木)

今月の2冊


今月私の担当した2冊の書籍が刊行になります。


『増補 感性の変革』

『日本で学ぶ留学生のための中級日本語教科書 出会い【本冊 テーマ学習・タスク活動編】』


『増補 感性の変革』は1983年に講談社から刊行され、長らく手に入らなかったものを復刊いたします。2002年にアメリカで英訳版が刊行された際に付された著者による「自著総括」、これまでに単行本未収録であった15本の論文、解説(西田谷洋)を収録した大幅増補となります。

ページ数は充実の640頁。これまで品切れでなかなか手に入りにくい本書でしたが、それでも時を経て復刊するとすれば、現在のあるいはすでに読まれた読者にも届くように、ただ復刊するだけでなく、総体的に著者の思想や理論が伝わるように、しっかりとした増補版を作ることを目指しました。

時枝誠記や三浦つとむといった言語学者の言語理論を用い、さらには表現主体の身体性に注目しすすめられる作品の分析は、今の言語学でいうところの認知言語学的な立場と非常に近いように思います。文学研究者は間違い無くおさえておかないといけない一冊ですが、文学研究者のみならず言語研究者にもぜひ読んでいただきたい一冊です。


『日本で学ぶ留学生のための中級日本語教科書 出会い【本冊 テーマ学習・タスク活動編】』は本文全ページフルカラーの日本語の教科書です。各課毎に読解と聴解に分かれており、課の最後にはインタビューを行ったり調査をして発表をするなどの様々なタスクが用意され、総合的に日本語を学ぶことができる教科書です。

本書を使用した授業では、学生は文章を読んで音声を聞いて、何度も自分の頭で考えることを求められます。ただ言葉を丸暗記、教えられた通りに使ってみるということではなくて、内容について理解を深める内に自身で考える力もつくと思います。また、タイトルが『出会い』となっていますが、これは、日本で生活しているからこそそこで学べる、そのようなテーマを取り扱っていることを全体の特徴としたからです。せっかく日本に来ているのだから、多角的に日本についての理解を深めて欲しい。そのような願いが込められています。

装幀は綺麗な水色です。日本語を教えていらっしゃる先生は、ぜひ本書のご使用をご検討下さい。




2015.5.27(水)

文楽鑑賞


5月25日にひつじ書房は国立劇場に文楽鑑賞に行きました。
演目は「祇園祭礼信仰記」と「桂川連理柵」のふたつでした。わたしは初めて文楽を見ましたが、どちらも全く異なる趣向で、両方ともがたいへん魅力的な演目だと感じました。

「祇園祭礼信仰記」は、将軍足利義輝を殺した松永大膳のもとに捕らわれた雪姫の苦悩、そして松永が立てこもっている金閣寺にスパイとして入り込み、金閣寺から雪姫らを助け出す此下東吉の活躍を描いた物語です。
雪姫は絵師雪舟の孫であり、松永から自分の言う通りに絵を描くか、自分と夜を共にするかどちらかを選べと強要されます。金閣寺には雪姫の他にも雪姫の夫である狩野直信と、殺された足利義輝の義理の母であり、雪姫にとっては夫との仲を取り持ってくれた恩人でもある慶寿院がともに捕らわれています。言うことを聞かなければ夫を殺すと脅された雪姫は悩み、一度は松永に身を任せる決意をしますが、松永が実は殺された父の敵であったことを知り、思わず松永に斬りかかったところを取り押さえられてしまいます。
取り押さえられた雪姫は金閣寺のかたわらにある桜の木の根元に縛り付けられます。腕を縛られた雪姫の姿は、舞台に舞い散る花びらの演出もあいまって、哀れながらも美しいものです。また、その後繰り広げられる此下東吉による雪姫と慶寿院の救出劇は、舞台の迫りが使われたり、人形の首が飛んだりして、刺激的で非常に面白い場面でした。

「祇園祭礼信仰記」が印象的だったのは、それまでの自分の文楽に対するイメージが良い意味で裏切られたからだと思います。わたしは文楽といえば心中もののようなジメッとした物語をイメージしていて、「祇園祭礼信仰記」のように派手な仕掛けのある活劇は想像していなかったので印象に残りましたし、今後もっと文楽を見てみたいという気もちを起こさせてもらいました。
「桂川連理柵」は逆に、わたしがイメージしていた通りの心中にまつわる話でしたが、思わぬ見所がたくさんあり、たいへん面白い演目でした。文楽の演目は予想以上にバリエーション豊かなのだと知れたことも、今回の大きな収穫のひとつです。遠くないうちに、また見に行くことが出来たらと思います。




2015.5.20(水)

『未発ジュニア版』発送


昨日今日の2日間をかけて、ひつじ書房では『未発ジュニア版』の発送作業を行いました。
今回はわたしも、送付物の一部を作成しています。
印刷所に入稿する前の段階ではまず、未発と一緒に送る注文書等の入稿用データを作成しました。データ作成にはIllustratorやInDesignというソフトを使います。どちらもわたしは使ったことのないソフトで、使い方を覚えながらの作業はなかなか思うように進みませんでしたが、先輩に教えていただきながらなんとか完成させることができました。

また、昨日今日は出来上がってきた未発の発送作業を行いました。8000通を超える郵送物を発送する作業は、ひつじ書房のスタッフ総出で行っても1日半以上かかりました。発送作業では、ご挨拶のお手紙や注文書、宛名紙を同封し、封をするという作業それぞれをスタッフで分担して行います。どう工夫すれば効率よく作業をこなすことができるのか、最初の内は考えながら作業を行わなければいけませんでしたし、不慣れなやり方をして不必要に時間をかけてしまったと反省しています。ですが最後には、やり始めよりも作業が速くなったのではないかと思います。

新刊・近刊のご案内『未発ジュニア版』は毎年春と秋に刊行・発送しています。次回の発送は秋頃になります。次にまた発送作業を行う時は、今回よりももっとスムーズに作業ができるようにと思っています。




2015.5.15(金)

英文校正の基礎知識講座


先週、英文校正の基礎知識講座に参加しました。
わたしは4月に1日校正講座に参加したのですが、今回の講座はその時と同様エディタースクールで開講されたものでした。

英文の校正の仕方を学ぶための講座ということで、わたしは初め、英文用の校正記号を学ぶことが主な内容だろうと思っていました。しかし実際には、校正記号についての時間はあまりありませんでした。講座全体の時間が4時間ほどで、最後の30分ほどを使って、一通り、どんな記号が使われているのかを学びました。日本では英文用の校正記号を知っている校正者が多くないため、英文の校正を行うときも日本語の文章を校正するときと同じ校正記号を用いることが多いそうです。

講座ではどんなことを教わったのかというと、主に英文の組み方、英文校正の仕事にはどんなものがあるのか、大文字と小文字の使い分けや約物の使い方などの細かな規則についてなどでした。中でも、英文の組み方に関わる内容は今後活かすことが出来そうだと感じました。例えば、各段落の頭では字下げを行うが文章の一番初めの段落に関しては行わない、といったことや、行末のハイフネーションは適度に行うべきである、といったことです。
ハイフネーションとは、行末で単語が行に入りきらないとき、im-portというようにハイフンによる区切りを作って改行を行うことを指します。英文に不慣れな読者にとっては、ハイフネーションを行わない方が読みやすい場合もあります。しかしハイフネーションを行わなかった場合、行の中で語と語の間隔が極端に開いてしまう場合があるため、英語のネイティブにとっては読みにくくなってしまうというのが、講師の方のお話でした。

ネイティブにとってどのような組み方が読みやすいか、という内容はもちろん自分一人では知ることのできないものです。英文校正という分野はわたしにとって新鮮で、興味深く伺うことが出来ました。




2015.5.13(水)

台風一過


連日報道されていた台風6号は昨夜、温帯低気圧に変わったということで、今日は茗荷谷からも気持ちの良い青空を見ることができました。まさに台風一過です。

ひつじ書房は、今は文京区千石にありますが、創業当時の所在地は埼玉県春日部市にあったということです。わたしもまた、ひつじ書房と同じ埼玉出身です。
わたしは台風の予報を見るといつも、洪水の心配をしてしまいます。ちょっと雨が降っただけで……と思われるかもしれませんが、あながち大げさとも言えません。というのも、わたしは埼玉県草加市にある獨協大学で学部時代を過ごしたのですが、獨協大学周辺は土地が低く、昔はよく雨が降って水位が上がると川から水が溢れて、グラウンドが池のようになってしまったそうなのです。大学周辺で道路が冠水した時には小船が出されていたという話も聞いたことがあります。
草加や、草加に隣接する越谷や吉川といった埼玉県南東部の土地は川が多く、昔から水上交通が発達していた反面、大水になりやすい地域でした。ですから埼玉で暮らしていた時は、大雨が降ってもきちんと家まで帰り着けるかどうか、心配になったものでした。

東京で生活するようになった今では、雨で道路が歩けなくなるという心配は以前ほどしていません。とはいえ、この先5月から6月にかけては学会が多くなるシーズンですから、天候についてはいつも以上に気になってしまいます。
わたしも5月と6月には関西に行く予定があります。出張に出る際、交通機関が止まらないかどうかの心配ももちろんあります。その上、本を手で持ち運ばなければいけない場合は、箱に梱包して搬入・搬出する時以上に、雨に濡れないように注意しなければなりません。
学会のある日には是非、カラッと晴れてほしいものだと思います。




2015.5.8(金)

「和紙の里」を訪ねて


4月末にひつじ書房では合宿を行いました。合宿の目的は宿泊先でのミーティングでしたが、途中紙漉を体験させていただくため、埼玉県小川町に立ち寄りました。

紙漉は、和紙の元となる液を竹で出来た容器の中で前後左右に揺すりながら漉き、中の繊維を絡み合わせる作業です。十分に漉いた後、乾燥のための板に貼り付けて乾かすと和紙が完成します。容器を揺するのにはコツが必要で、わたしは最後まで強弱の加減を上手く調節することができませんでした。
紙漉という作業の難しさもさることながら、和紙作りを教えて下さった職人の方のお話もまた印象に残るものでした。その方のお話によれば、現在ではまず和紙作りのための道具を作る職人が減ってしまっているそうです。また、和紙の原料となる液に粘り気を出させて繊維同士の繋がりを強くするため、本来であればトロロアオイという天然の素材を用いるのですが、トロロアオイは気温が高くなると使用することができなくなってしまうため、季節によっては用いられないということです。

わたしたちが紙漉で作ったのは楮(こうぞ)を元にした紙で、パルプを原料とした紙とは異なります。楮の特徴は繊維が長いことです。わたしたちが普段使っている紙の原料であるパルプは引っぱるとすぐ細かく千切れてしまうのに対し、楮は繊維が長いため中々千切れません。長い繊維を持つ楮を原料として用いることで、丈夫な和紙を作ることができます。
紙漉を行った工芸館では和紙で作ったスカーフなども展示されており、今まで思いも寄らなかった和紙の可能性を目にすることができました。伝統的な技術を継承していくことの困難さを知ると同時に、作られた和紙の魅力もまた感じました。

集合写真 埼玉伝統工芸館にて



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