電子出版についての覚書
2020年3月18日(水)

電子出版についての覚書

いつも考えても結論がでないことが多くて、すると考えたことを忘れてしまう。どこまで考えたのかを忘れてしまい、いつも同じところから考えて同じところで挫折するので、ここまで考えたというところまでの記録として書いておく。

電子書籍の出版を考える時の大きな目的は、英文学術書を海外でも購入できるようにすること。

現状で、紙の書籍を海外で流通させる売る場合に、amazon.comで扱ってもらえるようにするということは一番現実的、この場合、海外というかアマゾンなので北米に在庫を持つことが必須となる。本当は、従来の日本の取次店が海外にも在庫を持ってくれればいいが、そういうことはない。そういうことが可能でも、ひつじ書房のたくさん売れるわけではない学術書を在庫して置いてもらうのは無理だろう。せめて、日本出版貿易さんが倉庫を持って在庫を置いてくれればいいが、それもない。リアルな書籍を世界に売るのなら、米アマゾンのマーケットプレイスか古書販売サイトであるabebooksに登録するという方法があるが、文学とか美術品であればそういう日本にある古本屋さんもあるが、学術書の場合はない。日本書房さんが、米アマゾンのマーケットプレイスに書店に登録して、海外にも売ってくれれるとよいのだが。どうでしょうか。今度、相談に行きます。リアルな書籍には、そういうハードルがある。Paypalで、1冊の注文を受ければいいのかも知れない。クレジットカードの口座を作るべきか。作ればいいだけか。

google booksはPDFを取り扱え、海外からの注文にも対応できる。決済も可能。直接googleと契約するか。電子書籍の取次店MBJ(mobile book japn)は、業務請負のみ扱っているということ。メディアドウ(旧緊デジ)は、取次業務が可能とのこと。業務請負だけ、MBJに出すのも煩雑ということであれば、googlebooksに直接取引して出す方がいいかもしれない。世界で売りたい英文学術書は、google booksをやることにしよう。5月までには、何冊かをgooglebooksで発売したい。加えて、リアルな紙の書籍と少し違うオンデマンド出版という方法がある。基本的には高度なプリンターで印刷して、並製で製本するというもの。amazonのオンデマンド出版について、日本からamazon.comに扱いをお願いすることができるようになるとのことなので、英文学術書についてはこれも行おうと思います。amazon.comは、北米について扱っているということ。ヨーロッパ、英国からの場合は、amazon.comから、送料を払って手に入れてもらうことになるのだろうか。

google booksとアマゾンオンデマンドは、英文学術書については進めたい。

Bookend。pdf版とePub版の両方を扱える仕組みを提供されている。注文したファイルに、透かしあるいは、文字を入れることができる。ページのどこかに、注文者の名前を入れて不正にコピーして配布するとかはしないように設定する。注文する際にウェブページの質問する場所に個人情報を記入して、送る。メールでURLが届いて、そこから、ダウンロードする。この間に情報を埋め込んだファイルを生成して、そのファイルをダウンロードすることになる。 http://bookend.keyring.net/home/

少部数の学術書の場合、メールをもらって、PayPalで払ってもらい、手入力で情報を入れるという方法も可能性としては可能ですが、一つ一つ情報を埋め込まないといけないので、手間が掛かりますが、このBookendはその点はしなくていいので、楽です。これは優れたやり方です。

Adobe Digital Edition
PDFの場合、adobe IDを設定して使って、管理するので、いちいち、個別の設定をしなくてもいい。

特定非営利活動法人 ratikさんが、このフォーマットで学術出版を実際に行っています。
https://ratik.org

Adobe Digital Editionの設定で、動画付きPDFが再生できると日本語音声コミュニケーションの研究雑誌をこちらでと思いましたが、動画や音声は、再生できませんでした。

ちなみに日本語音声コミュニケーションの研究雑誌は、日本語音声コミュニケーション研究会に入会していただく必要があります。過去の号は読むことができます。 (http://www.hituzi.co.jp/epublish/academic_journal/nhng_onsei/index.html)動画の再生できるPDFというのは、音声研究、コミュニケーション研究には非常に優れていると思います。電子によって、論文形態も変わりうるという良い事例だと思います。

-----
第6号より、日本語音声コミュニケーション学会会員にのみの公開となりました。なお、目次および各論文の要旨・キーワードの含まれる冒頭のページは、第5号までと同様に公開しています。 (非会員の方には、有料2000円+税で販売いたします。ひつじ書房(toiawase[@]hituzi.co.jp)までご連絡ください。)
-----
入会者募集中です。
http://www.speech-data.jp/nihonsei/apply.html

ひとつ現時点でわかっていることを述べておきますとPDFの中で動画が動きますのは、Flash Playerの機能のおかげです。adobeは、Flash Playerのサポートを2020年で中止すると言っています。中止するのなら、動画を再生するエンジンを作って提供するべきだと思いますが、注目しているところです。2020年にもなっているのに、インターネットの世界に動画を再生するエンジンが出来ていないというのは驚くべきことだと思います。

海外向けではないのですが、Adobe Digital Editionで、電子学術的商業雑誌を作る可能性を考えたい。論文もそうですが、座談会のようなものは、純然たる学会誌ではほとんどできませんが、学術的商業雑誌なら可能です。そういうのは、可能性があります。出版社が関わる雑誌は、論文を発表する場所を提供するだけでなく、他ジャンルとの接点、結び目を作り出そうとすること、専門分野を越えて、あるいは横断して研究ジャンルを作ることだと思うので、それには雑誌というかたちが優れていて、紙の雑誌のリスクを回避しながら、電子的に発信するのがよいのかもしれないと思います。やると決めれば、できることにすぎないのかもしれないです。

こんなことを言っていてはいけないかもしれないですが、電子出版のフレームというものは、基盤です。インフラです。個々の出版社が、頑張ることではなく、流通のビジネスが、そういうフレームを作ってほしい。多くの電子学術雑誌は、その雑誌あるいは出版社ごとに窓口を持っていて、そこでライセンス管理をしています。横断的、協同的、共通的な基盤ではなく、それぞれです。お蕎麦を食べたいと思ったのに、神田のやぶそばでしか食べられないというような現状。よい喩えではありませんが、圧倒的に不便です。

印刷所が学会誌の印刷と電子的な発信をやっているような印刷所もあります。横断的に強調して、発信し、共有することができないものでしょうか。たとえば、印刷業界で作るとか。シナノさんはシナノブックスというサイトがあります。ひつじ書房は、『外国人労働者受け入れと日本語教育』というものを出展していますが、ほとんど売れていません。シナノブックス医学雑誌も電子雑誌は刊行されていますが、それぞれの医学出版社が独自のプラットフォームを作っていて、横断的ではありません。

以上は、PDFベースで考えています。言語学書が、いろいろなフォントを使うので、ePubでは文字化けする危険性があり、グロスと言って、上の行と次の行で、単語の開始位置を揃えたりすることがありますが、そろわなかった場合、それを訂正するには膨大な手間がかかるので、フォントとページの体裁を比較的固定できるPDFでないと難しいでしょう。小説などであれば、ePub形式の方が適しているでしょうが。

学術小出版社、電子出版研究会でも作るべきだと思います。

----------

執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



「本の出し方」「学術書の刊行の仕方」「研究書」スタッフ募集について日誌の目次番外編 ホットケーキ巡礼の旅

日誌の目次へ
ホームページに戻る

ご意見、ご感想をお寄せ下さい。
房主
i-matumoto@hituzi.co.jp