シカゴマニュアル、はじめました

2018年2月9日(金)

シカゴマニュアル、はじめました

シカゴマニュアルと呼ばれている本がありまして、正式には、英語でThe Chicago Manual of Styleという書名です。表紙にはwriterとeditorとpublisherのための重要なガイドブックと書いてあります。

ネットで検索すると「書物についての書物」というコメントがあって、本作りの際の、文字組、表記、句読法などについてのバイブル的な書籍であるというように認識されているということのようです。本作りの時の究極のよりどころとして、分からないことがあればこの本を見て調べる頼りにする本とされています。日本では、日本の本作りの際のきちんとした本は、日本エディタースクールが出版した『出版編集技術』という本がありまして、もっとも新しいのは1997年に新編として刊行されたものがありますが、だいぶ違うように思います。

シカゴマニュアルは、17版が昨年末に刊行されました。17版というのはすごい版を重ねているということになりますが、この1月からこの本を社内(プラス社外の編集者2名)で読むことにしました。実は、ひつじ書房では、ずっと毎週、英文の本の作り方の本を読んでいます。まずはケンブリッジ大学出版のButcher's Copy-editingという本を読みはじめました。2007年1月のことです。この本は、オックスフォード大学出版のNew Oxford Style Manualと双璧ですが、その項を書く時の目的が本文の説明にはっきり書かれているので、理解しやすいので、最初に読むことにしたのです。この本の次にオックスフォード大学出版のNew Oxford Style Manualを読みまして、その後、オックスフォード大学出版からでているHart's Ruleという本を読みました。New Oxford Style Manualは、シカゴマニュアルにかなり近い事典のような本ですが、シカゴマニュアルよりは少し小さく整理されています。Hart's Ruleは、New Oxford Style Manualの元になった本で、もともとは印刷工向けの組版ガイドブックだったようです。小さいので要点を押さえて整理されています。そのHart's Ruleが読み終わりますので、いよいよシカゴマニュアルに挑戦するのです。シカゴマニュアルは究極なので、知りたいことが全て書かれているような、神のような本なので本について知るためには最強であるので、最初から挑戦してもよかったのかもしれないのですが、多分、そのころは歯が立たなかったでしょう。困ったことがあった時に事典のように引くものなのですが、困っていることがどういう名前が付いている事例なのか、それを英語で何というのかが、わからないとシカゴマニュアルは使えないのです。

今回も頭から順に読んでいくことになります。分厚い代物ですが、思い切って挑戦します。ページあります。大きな山を下から一歩ずつ登ります。実は、今回、17版をあらためて見てたいへん、驚いたことがあります。日本の出版技術本との違うが分かると思います。最初の節が「1.1 学術出版」という節なのです。日本では、シカゴマニュアルは、書籍のためと思われていますが、正確に言うと学術書籍と雑誌のためのマニュアルなのです。いろいろルールをカッチリ決めて煩雑だと思われる方もいるかも知れないですが、きちんと本作りのルールを決めて、それを1冊にまとめているということはすばらしいことです。しかも、それは本来、学術出版のためなんです。アメリカという国は、かなり功利主義的で実利主義的な国であると思いますが、学術に対して仕組み的にきちんとリスペクトしているということを思いました。きちんと制度を作り上げているところだと思います。かつまた、学術出版の文化が出版文化の基礎になっているということです。そういう感覚は、日本エディタースクールの『新編 出版編集技術』にはありません。New Oxford Style Manualにもそういう精神があると思います。ちょっと飛躍することになりますが、イギリスで書籍の消費税がゼロであるのは、イギリスであっても、俗悪な出版物は少なくないと思いますが、書籍というものに対しては、リスペクトがあるのではないかと思います。(とはいえ、シカゴマニュアルに学術出版ということばが入ったのは、16版からのようです。15版にはありません。位置づけが変わったのかもしれません。もっと前の版から見てみないといけないですね。)

そんなことをうらやましく思いながら、学術出版の究極のルールブックを読んでいきたいと思っています。

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