二つの「文書」形式

2013年9月13日(金)

二つの「文書」形式

先週、松本の信州大学で開かれた社会言語科学会に、パソコンとKindleのマシンを持って行って、学術論文の電子的媒体についてのデモンストレーションを行いました。パソコンとKindleの二つのマシンを持って行ったのは、デモした「文書」形式が二つあったからです。一つ目は、動画埋め込みの電子文書です。動画、音声を組み込むことのできるPDFの形式として、インタラクティブPDFという形式があります。アドビが提供しているものです。PDFに動画と音声を組み込み、その動画と音声の画像をクリックすると再生されるというものです。ご覧になると面白いかと思います。絵が動くだけとも言えますが、見るとそれなりに可能性を感じます。音声学、人間の行動を研究する論文の場合、研究自体に広がりをもたらすことができるか、動画が含まれていることが、学術的な発表媒体として意味があるのか、ということが重要な問いでしょう。

もう一つは、Kindleのマシンで閲覧できる「文書」形式のものです。こちらは、文字を大きくしたり、小さくしたり、閲覧するマシンを回転させると表示が変わるタイプのいわゆるリフロータイプの「文書」形式です。こちらは、動画は入れておらず、画像は入っているのですが、タップすると画像が大きくなり、画像だけの表示になります。今回は、日本語の学術論文でしたが、Kindleのマシンで閲覧できる「文書」形式のものは、英文の場合に意味があると思っています。どういうことかというと、アマゾンドットコムで英語の学術書を売るということが可能になるということです。紙の書籍の欧米での販売は、流通と在庫の問題などがあり、なかなかはかどっていないのですが、アマゾンドットコムで取り扱うことができれば、大きく広がります。

とはいうものの、問題もあります。インタラクティブPDFの場合、動画のフォーマットはflashなのです。flashは、iPadやGoogleのアンドロイドOSの端末では、再生できず、今後も対応しないということです。つまり、パソコンでしか再生ができないことになります。また、flash自体、アドビが、将来的にはHTMLのプロフラムに移行すると言っています。とすると、今は見ることができても、将来、パソコンででも見ることができないことになります。とはいえ、flashしかないですから仕方がないのです。

普通にパソコンやタブレットで動画を容易に見られる時代ですのに、電子的文書に埋め込んだ動画を再生できることを保障できないというのは、何だか、おかしいことですが、現状がそうなっているのです。電子書籍の時代と言っていますが、基本的なことが保障できません。無駄になる危険性がありますので、投資がしにくいわけです。

とはいうものの、今後、編集する英文の学術書は、原則としてKindleに対応したファイルも同時に作ろうと考えています。そんないろいろな実験を始めており、社会言語科学会の際にデモを行いました。今後の学会には基本的に見られるようにマシンを持って行く予定です。展示しますので、どうぞご覧下さい。


執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



「本の出し方」「学術書の刊行の仕方」「研究書」スタッフ募集について日誌の目次

日誌の目次へ
ホームページに戻る

ご意見、ご感想をお寄せ下さい。
房主
i-matumoto@hituzi.co.jp