2001年6月16日(土)

狂人日記

出版労連の企画は、佐野さんに「だれが本を活かすか」というタイトルで話してもらうのだという。このタイトルを見て、先日できたばかりの『接続』の中の千野先生の論文の一節を今、思い出した。魯迅の狂人日記を題材にしている。狂人日記の中に「人々がみんな食人鬼であるのに素知らぬ顔をしている」という日記の文章がでてくる。「狂人日記」の時代ということであれば、それは封建制への批判と言うことになるだろうが、でも今の時代にかえて考えるとそれはなんだろうか。「見えないシステム」ということになるのだろう。

せめて、自分が殺人鬼であるという認識をするところからスタートするしかないと思うのだが。そういう認識が、出版労連にあるのだろうか。きちんと佐野さんの本のタイトルである「殺すのか」の意味の重さをかみしめたのだろうか。さらに、編集部会の企画が、古典的人文出版社の編集者ばかり、こうして企画を作ったという内容で話すという。私は、先日、ある著者に「岩波が潰れないで残念だ、期待していたのに」といわれたばかりで、複雑な思いだ。岩波が、さまざまな人文的な知を食い荒らしていることを考えると、ここにも殺人者と自分を認識できない人がいるということだ。魯迅の小説は、まさに現代の小説だといえよう。

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