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2005.2.23更新

第8回メディアとことば研究会
場所: 東洋大学、関西大学(TV会議)
日時: 2004年12月4日(土)

発表者:
東京 浅岡隆裕(立教大学社会学部・同産業関係研究所研究員)
大阪 山口誠(関西大学社会学部)


【東京会場】
発表者: 浅岡隆裕(立教大学社会学部・同産業関係研究所研究員)
タイトル:
“所得倍増”政策はいかに語られたのか
キーワード:
メディア言説、内容分析と言説分析、社会的討論過程、所得倍増計画、解釈共同体

概要:
 本報告は戦後日本の「高度経済成長」の端緒となったいわゆる「所得倍増計画」に対するメディア言説の成り立ちと、その変容に関するものである。具体的な素材としては、雑誌メディアを数誌取り上げ、上記政策に関わるイシューについて言説・内容分析を行う。メディア言説の分析手法としてPan&Kosickiによる「フレーミングアナリシス」を援用し、記事中のロジック構造を抽出していく。従来の印象として、「所得倍増」という政策に諸手を挙げて賛成する国民というイメージではなく、多様な言説や主張が並存する中で、特定の言説がヘゲモニックを獲得していく様子を概観する。また(雑誌などの)マスメディアにおいて言説全体やロジックが“変容すること”の意味そのものについても検討したい。



【大阪会場】
発表者: 山口誠(関西大学社会学部)
タイトル:
『生』の回路をひらく『ことば』:
1920〜30年代の野球番組におけるアナウンサー言説の変遷
キーワード:
野球放送、初期ラジオ、オラリティ、アナウンサー

概要:
 この発表では、日本語のスポーツ実況の草創期に照準を当て、いかにして同時代を生きる人々の「耳」に響く「声の文化(オラリティ)」の一つが創り出されたのかを検討したい。 分析対象には1920〜30年代のラジオの野球放送を選び、当時活躍していた魚谷忠、松内則三、河西三省の3アナウンサーの「語り口」の変化を、残された速記録やレコードなどの資料をつかって分析する。 魚谷と松内が日本語初の野球放送を試みた1927年には、両者の「声(話しことば)」には大差なかった。しかし松内は、講談や映画弁士のオラリティ(節回しが付いた七五調の、決まり文句を多用する語り口)を借用することで、同時代の人々の「耳」に届く「スポーツ実況」を作り出し、人気を博した。この「松内節」と呼ばれた独特な野球放送は、1931年をさかいに失速し、かわりに河西が開発した「声」が支持を集める。後発アナウンサーの河西は、松内が古い話芸から借用したオラリティ(声の文化)から距離をとり、ラジオ独自のオラリティを実践していく。本論ではそれを「生」の回路をひらくオラリティと呼び、河西がスポーツ実況で実践した声の文化の特性を考察したい。