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2019.2.21更新

第51回メディアとことば研究会



日時:2018年9月21日(金)15:00〜17:00

場所:広島大学東広島キャンパス 文学研究科・B104教室

主催:メディアとことば研究会
共催:広島大学比較日本文化学プロジェクト研究センター



発表者:橋内武氏(桃山学院大学名誉教授)
題目:ハンセン病療養所の差別構造と言語生活―長島2園を中心に

概要:ハンセン病は、「癩筋(らいすじ)」と言われるような遺伝病ではなく、らい菌によって末梢神経が冒される、弱い慢性的な感染症である。本病は1940年代半ばまでは「不治の病」とされてきた。その後、プロミンの効用(後に多剤併用法MDT)により治癒する病気となった。だが、1953年施行の「らい予防法」は、1907年に始まる放浪患者の収容、1931年からの強制収容・終生隔離政策の強化により、患者と元患者を長い間ハンセン病療養所内に閉じ込めてきた。この間1958年には東京で第7回国際らい会議が開催され、従来の患者隔離政策を廃止して、外来治療を実施すべきとの決議がされ、WHOはこの決議を支持した。隔離政策が終結したのは1996年の「らい予防法の廃止に関する法律」の施行による。そして、2001年には「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟で熊本地裁が「国の隔離政策の継続は違憲である」と判断、国は控訴を断念し、判決が確定した。

 本発表では、ハンセン病患者の受けた差別の実態(病名・強制収容と終生隔離・入園番号・偽名・患者作業・園内通貨・断種堕胎と胎児標本・監禁・特別法廷・火葬場と納骨堂・園内の分校と教室)とハンセン病療養所内における様々な差別構造(職員桟橋と患者桟橋、無菌地帯[職員地帯]と有菌地帯[患者地帯]、軽症者と重症者、日本人と在日コリアン)、男性と女性、親と子ども、独身者と夫婦、雑居と通い婚)を指摘すると同時に、所内における言語生活(地域語と園内語、識字、点字舌読、創作活動)を素描する。実例は、主に岡山県長島の長島愛生園と邑久光明園での見学で得た聞き取りメモと印刷資料による。