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2015.8.17更新

第46回メディアとことば研究会

日時:2016年3月18日(金) 13時半〜(13時受付開始)

場所:日本大学文理学部 3号館3階 3309 教室

参加費:無料

発表者名:坪井睦子氏(立教大学)
タイトル:「語用・メタ語用としてのニュース翻訳―メディア・ディスコースにおける引用とイデオロギー」
概要:
情報が言語の壁を超えグローバルに流通するとき、そこには必ず翻訳という言語行為が介在する。しかし、国際報道における翻訳については、一般の読者・視聴者の意識に上ることはまれであり、メディア機関においても編集や取材の一環として捉えられる傾向にある。本発表では、通常外からは不可視の翻訳がメディア・ディスコースの中で明らかな形をとって表出する「引用」に焦点をあて、イデオロギーという視点からニュース・ストーリーの構築に関わる翻訳の言語行為性について探求する。具体的には、冷戦終結後多発する対立・紛争、なかでも中東情勢に関わるニュースを主に取り上げて考察する。ニュースにおける引用と翻訳は、ともにニュースが対象とする出来事についてそのときそこで言われたことを、ニュースになる時点での「いま・ここ」のコンテクストにおいて再現するという語用についての語用(メタ語用)であり、引用の翻訳は両者が絡み合う複層的言語実践であることを明らかにする。

【発表資料(PDF)】



発表者名:多々良直弘氏(桜美林大学)
タイトル:「実況中継が創るフットボール・ストーリー」
概要:
現在サッカーは各国の国内リーグ、クラブや各国代表が参加する国際大会が世界各地で報道されており、同じ試合が通訳や翻訳を介さずにさまざまな言語で放送されている。実況中継の参与者たちは、ボールと選手が絶えず移動する流動的な試合を即興的に描写、解説することが求められるわけだが、文化によって試合の中で起こる同じ出来事が異なる形で解釈されたり、異なる側面が言及されたりすることがある。本研究発表は、日本語と英語による実況中継の比較分析を通じて、各言語の好まれる表現方法や言語化される対象の差異、そして各言語の背後にある文化的価値観を明らかにすることを目的とする。特に選手が明らかなミスをしたり、ゴールを決めたりなど、試合の流れに大きな影響を与えた場面を取り上げ、実況中継の参与者たちがどのような認知資源(選手の動きやプレーなど)に注目し、言語化するのか、また同じ資源が何を伝えるために言及されるのか考察してみたい。