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2012.3.26更新

第36回メディアとことば研究会

日時:2012年3月9日(金)15時〜18時
利用会場:

東洋大学 白山キャンパス 5号館2階 5201教室

発表者名:
鄭 惠先(チョン ヘソン)氏(北海道大学留学生センター 准教授)

タイトル:日韓対照によるメディア言語研究へのアプローチ—映像メディアのジャンルによる言語的特徴を中心に
キーワード:スポーツニュース、実況アナウンス、名詞句表現、文末、感応的同調、眼前描写

概要: 本研究では、日韓対照言語学的な視点から、日本と韓国の映像メディアを考察・分析し、その言語表現の特徴を体系的に記述することを目的とする。とりわけ本発表では、映像メディアのジャンルによる言語的特徴に注目して、「スポーツニュースでの記者の発話」と「実況中継でのアナウンス」という2つの日韓のメディアリソースを比較する。まず、前者の分析では、名詞句表現の「感応的同調」という付託的機能に着目し、日本では名詞句表現、韓国では丁寧体の動詞文が多用されることを示す。つぎに、後者の分析では、ダ体の「眼前描写」という機能に着目し、日本では普通体が混用され、韓国では常時丁寧体が用いられることを示す。以上から、「スポーツニュース」と「実況中継」という2つの映像メディアでは、感応的同調を強調する日本メディア、コンテキストスタイルのフォーマル度を維持し客観性を強調する韓国メディアという、ジャンルによる言語的特徴が明らかになった。

【発表レジュメ(Pdf)】



発表者名:
田中翔太(たなか しょうた)(学習院大学大学院人文科学研究科ドイツ語ドイツ文学専攻博士前期課程)

タイトル:ドイツのTVメディアにおけるトルコ移民のドイツ語—ドイツ語の母語話者による模倣から新たな言語変種へ
キーワード:トルコ系移民、ドイツ語、コメディ、クロッシング

概要: ドイツでは現在、移民背景を持つ者が多く生活している。そのなかでも、1960年代にドイツへやって来たトルコ系移民は、ドイツの外国人人口で最も多い割合を占めている。トルコ系移民の第二、第三世代が話すドイツ語は、トルコ系移民の出自を持つ文学者Feridun Zaimogluが出版した『カナーケの言葉:社会の周縁の24の雑音』 (1995) によりドイツ社会で注目を集めた。2000年以降になると、彼らのドイツ語はHip HopやRap、TVドラマやコメディ番組等で数多く取り上げられ、「トルコ系移民のドイツ語」が一種のブーム的様相を呈した。本発表では特にTVメディア(特にコメディ番組)を例にしながら、「トルコ系移民のドイツ語」がメディアにおける露出を通じて、ドイツ語の母語話者(とりわけ若者)に受容されるようになったこと(これはRampton 1995のいう「クロッシング(crossing)」現象、つまり「(本来の)話者に属さない者」により「模倣」される事例と言える)、そしてさらに今ではひとつの言語変種として認知される途上にあることを示していく。このように移民背景を持つ者たちのことばが言語共同体のなかへ入り込んでいく現象は、ドイツ語圏に限ったものではなく、他の欧州諸国(オランダやスウェーデン、デンマーク等)でも観察されている。その点において本発表は、現代における言語変化の普遍的側面への寄与となる部分があると思われる。

【発表レジュメ】