出版論 (I)                          2001年 611

               報告者 東京大学法学部4年 中井 直子 (哲思出版社長)                                                                                    

                                      

 

企画 1

タイトル 『フランス文学を変えた女たち』

著者   安達 正勝

著者のフィールド  フランス文学者、作家

             東京大学仏文学科、大学院修士課程終了後、フランス政府給費

             留学生として渡仏。帰国後は大学で講師をするかたわら執筆。

             主な著書;『フランス革命と四人の女』(新潮社)『二十世紀を変

             えた女たち』(白水社)ほか

内容の概略  『二十世紀を変えた女たち』に続く作品。同著書では、キュリー夫人、

          シャネル、ボーヴォワール、シモーヌ・ヴェイユをとりあげ、彼女達の

          生涯と功績を当時の時代背景や社会状況を交えながら論じていた。

          今回の著書では、社会状況を織り交ぜつつ、時代を追って4人の

          女流作家の生涯と彼女達の与えた影響を論じる。フランスの女流

          作家はスキャンダラスな人生を送った人も多く、本作品もフランス文

          学の専門家むけというよりは、少し知的に文学気分に浸りたい方に 

          おすすめの一品である。

 

序章 フランスの女流文学者

第一章           ジョルジュ・サンド―男装の麗人

第二章           マルグリット・デュラス―仏領インドシナの愛人

第三章           シモ―ヌ・ド・ボーヴォワール―女性としての革命人

第四章           フランソワ―ズ・サガン―スキャンダラスな主人

あとがき

主要参考文献

 

ページ数  260ページ

部数     5000部

価格     2000円

全部売れると  1000万円

印刷などの原価  200万円  20%

著者の印税  100万円  10%

倉庫代  50万円  5%

広告費  50万円  5%

合計    400万円  40%

おろし値  67%なので、儲けは27%=270万円

 

3年かけて売れるとすると、年間90万円の収入ということになる。

基本的に個人の出版社とし、事務所兼自宅という構成。

随時パートを雇う。

家賃  10万円×12=120万円

給料  年収600万円 (家賃は含まず)

事務費  180万円程度 (パート代を含む)

というわけで、

年間10冊ほどのペースで出していきたい。

 

これではあまりにも儲からず、お話にならない。しかし、当出版社ではこのようなあまり売れ筋ではない本も出すが、以下のような、特に企画3のような本も出版予定であるので、全体からみるとバランスがとれているように思う。

 

企画 2

タイトル 『芸術の生まれる場所』

著者  村上 香住子

著者のフィールド  翻訳家(現代フランス文学)

             1942年生まれ。1961年渡仏。帰国後ファッションコーディネー        

             ター、インタヴュアーを経て現在に至る。翻訳作品多数。『伯爵 

             夫人の黒いバッグ』(筑摩書房)という著書もある。FIGARO

             japonにパリ特派員として『パリ毎日便』を連載中。

内容の概略  芸術の国といわれるフランスに長年住み、自らもその芸術を日本u[/span>

          紹介する役割をはたす彼女に、フランスが芸術の生まれる場所で

          ありつづける理由を探ってもらう。かつて文化を生み出す場所として

          機能していたサロンやカフェの役割を現在担っているのはどこなので

          あろうか。フランス政府の文化政策はどのようなところに波及している

          のであろうか。彼女の得意分野である文学、ファッション、映画等を

          中心に、現代のフランスにおける芸術の動向を書いてもらう。

          

ページ数  200ページ前後

部数  1万部(少し大きく出過ぎだろうか?)

価格  1600円

全部売れると  1600万円

印刷などの原価  400万円(写真やイラストなどを入れたいので、高くなって

                   しまう)

            25%

著者の印税  160万円  10%(写真、イラストは著者に依頼)

倉庫代  80万円  5%

広告費  80万円  5%(本当はもっと大々的に宣伝したい、反応をみつつ

                 広告費は増やすか!?)

合計  45%

おろし値  67%なので儲けは22%=352万円

 

この本に限っては、雑誌感覚で速く売り切ってしまいたい。

感覚としては、本と雑誌の中間のような存在。

企画 3

タイトル  『三島由紀夫のころは』

著者  美輪 明宏

著者のフィールド  歌手

             1935年生まれ。17才からプロ歌手として活躍。シャンソン、

             タンゴ、ラテン、ジャズとレパートリーの幅は広い。三島由紀夫と 

             組んだ「黒蜥蜴」が演劇、映画で大ヒット、1993年に再演されて

             いる。代表作は寺山修司との「毛皮のマリー」。雑誌への連載

             も多く、『光をあなたに』(メディアファクトリー)、などの著書が

             ある。

内容の概略  現在、出版界は三島由紀夫ブームである。三島由紀夫全集をはじめ

          未発表の書簡集が刊行され、三島研究者の著書が再版されるなど

          している。三島が現在生きていたとすると76才。生前の彼を知る人も

          少なくなってきている。この本では、生前三島と深い交流があり、その   

          芸術性を絶賛された美輪明宏に三島由紀夫と過ごした日々を回想

          してつづってもらう。三島との交流にとどまらず、当時の思想、生活、

          文化人の集いの場などのエピソードを交えて、三島の生きた昭和を

          振り返る作品に仕上げたい。

                       

 

企画 4

タイトル  『サルトルとボーヴォワールの日常』 

著者  朝吹 登水子

著者のフィールド  翻訳家

             東京生まれ。女子学習院中退後、渡仏。パリ大学などに学ぶ。

             ボーヴォワール、サガンなどの翻訳多数。著書に『愛のむこう

             側』、『ヨーロッパ通信』などがある。

内容の概略  サルトルとボーヴォワールはフランス実存主義の代表的哲学者であり

          作家である。彼らの著書の多くは翻訳され、その思想に関する専門

          書も数多くある。この本では、彼らの思想を専門的に分析するのでは

          なく、彼らの日常生活でその思想がどのように実現されていたのかを

          記す。日々の生活や、会話、活動。それらがどのように彼らの思想や

          哲学と関わりあっていたのであろうか。難解な哲学書を読みこなす

          ことは骨の折れる作業であるが、この一冊を読めばあなたもちょっと

          した哲学人である。