日本語語彙的複合動詞の意味と体系 コンストラクション形態論とフレーム意味論 陳奕廷・松本曜著 ひつじ書房 日本語語彙的複合動詞の意味と体系—コンストラクション形態論とフレーム意味論 陳奕廷・松本曜著 ひつじ書房
2018年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第152巻

日本語語彙的複合動詞の意味と体系

コンストラクション形態論とフレーム意味論

陳奕廷・松本曜著

A5判上製函入り 364頁 定価8500円+税

ISBN 978-4-89476-907-6

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

ひつじ書房


The semantics and organization of Japanese lexical compound verbs: Construction Morphology and Frame Semantics
Yi-Ting Chen and Yo Matsumoto


【内容】
本書は、認知言語学の立場から日本語の語彙的複合動詞に光を当てるものである。複合動詞を「コンストラクション」として捉え、その体系を階層的なスキーマネットワークで示すとともに、その意味の非合成的な側面を説明する。また、動詞の意味構造として、背景知識や関連事象の情報を含む「意味フレーム」を用いることで、複合動詞の結合制約や意味形成における問題を解決する。付録として、様々な情報を付与した包括的な複合動詞リストを収録。



【目次】
まえがき
表記・略語

第1章 序論

1. 本書の目的
2. 研究の対象
2.1 語彙的複合動詞と統語的複合動詞
2.2 語彙的複合動詞のリスト
3. 本書の構成

第2章 語彙的複合動詞とその研究

1. 影山(1993)
1.1 項構造と他動性調和の原則
1.2 課題
2. 松本(1998)
2.1 主語一致の原則
2.2 課題
3. 由本(2005, 2008, 2011)
3.1 語彙概念構造(LCS)
3.2 課題
4. 由本(2012, 2013)
4.1 クオリア構造
4.2 課題
5. 総合的考察
5.1 意味構造に関する問題点
5.2 合成的アプローチの問題点

第3章 コンストラクション形態論とフレーム意味論

1. コンストラクションとコンストラクション形態論
1.1 コンストラクション
1.2 語レベルのコンストラクション:コンストラクション形態論
1.3 階層的レキシコン
1.4 コンストラクションにおける形式
1.5 創発性
2. フレーム意味論
2.1 百科事典的知識とフレーム
2.2 動詞とフレーム
2.3 本書におけるフレーム
3. 文化と言語
3.1 文化の違いに起因する言語の違い
4. まとめ

第4章 コンストラクションと複合動詞I―階層的スキーマネットワークと意味関係スキーマ―

1. 日本語語彙的複合動詞の階層的体系
2. 意味関係スキーマ
2.1 原因型
2.2 手段型
2.3 前段階型
2.4 背景型
2.5 様態型
2.6 付帯事象型
2.7 比喩的様態型
2.8 同一事象型
2.9 事象対象型
2.10 派生型
2.11 V1希薄型
2.12 V2補助型
2.13 不透明型
3. 影山(2013a, c)の分類について
4. 認知的統合性
4.1 広義の因果性
4.2 時間的緊密性
4.3 因果関係、目的性が重要である理由
5. まとめ

第5章 コンストラクションと複合動詞II―コンストラクション的イディオムと語彙的コンストラクション―

1. 語彙的複合動詞におけるコンストラクション的イディオム
1.1 生産的な非自立的動詞と拘束意味
1.2 コンストラクション的イディオムと複合動詞の生産性
2. 個々の語彙的複合動詞における全体的な性質
2.1 個別動詞レベルのコンストラクションの必要性
2.2 形式の面における全体的な性質
2.3 意味の面における全体的な性質
2.3.1 合成性と分析性を失っている例
2.3.2 合成性のみの喪失
2.3.2.1 V1またはV2による特異な意味的貢献
2.3.2.2 特定の意味のみ実現する「押し殺す」型
2.3.2.3 意味が特定の場面に限定される「言い渡す」型
2.4 登録を前提とする現象
2.4.1 意味の拡張
2.4.2 特定のコンテクストの定着
2.4.3 限定的生産性と阻止
3. 複合動詞の非合成性と使用頻度
4. まとめ

第6章 フレームに基づく複合動詞の考察I―語彙的意味フレームと複合動詞の組み合わせ―

1. フレームを用いた複合語の先行研究
2. 語彙的意味フレームレベルの制約
2.1 動詞の語彙的意味フレームと複合動詞の結合制約
2.2 語彙的意味フレームの流動性と複合動詞の容認度
2.3 複合動詞の結合制限と類義表現の使い分け:「〜落とす」「〜逃す」「〜漏らす」
2.3.1 組み合わせの制限
2.3.1.1 「〜落とす」
2.3.1.2 「〜逃す」
2.3.1.3 「〜漏らす」
2.4 複合動詞における多義性の解釈:「〜取る」
3. 背景フレームとフレーム要素の役割
3.1 複合動詞と背景フレーム:〈競技〉フレームと「勝つ」
3.2 背景フレームと文化
3.2.1 異なる文化に基づく複合動詞の違い
3.2.1.1 異なる社会における複合動詞の違い
3.2.1.2 異なるコミュニティにおける複合動詞の違い
3.2.2 文化の変遷に基づく複合動詞の産出と衰退
4. 複合動詞の適格性
4.1 影山(1993)における「レキシコンへの登録」説
4.2 使用頻度に基づく耳馴染み度
5. まとめ

第7章 フレームに基づく複合動詞の考察II―事象参与者と複合動詞の項―

1. 複合動詞における項の同定と項構造
2. 事象参与者の同定
3. V1とV2の対象項が異なる場合の意味解釈
4. 事象参与者の同定と項の意味的性質
4.1 「売り上げる」
4.2 「食べ歩く」
4.3 「咲き狂う」
5. まとめ

第8章 主語不一致複合動詞の形成メカニズム

1. 非使役化(自動詞化)のメカニズム
1.1 複合動詞の非使役化についての先行研究
1.2 非使役化の認知的動機付け
1.2.1 プロファイルシフト
1.2.2 痕跡的アブダクションによる使役者の背景化
2. 使役化のメカニズム
3. 動詞の入れ替えによる対応関係
4. メトニミー
5. その他
6. まとめ

第9章 本書の意義と今後の展望

1. まとめ
2. 本書の意義
3. 今後の展望

付録 日本語語彙的複合動詞リスト
参考文献
事項索引
複合動詞索引


【著者紹介】

陳奕廷(ちん えきてい)〈略歴〉台湾台北市出身。東呉大学外国語学部日本語学科卒業。台湾大学大学院日本語文学研究科修士課程修了。神戸大学大学院人文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、三重大学教養教育機構特任講師。
松本曜(まつもと よう)〈略歴〉北海道札幌市出身。上智大学外国語学部卒業。同大学院外国語学研究科博士課程前期課程修了。米国スタンフォード大学にてPh. D(言語学)。現在、国立国語研究所教授(理論・対照研究領域)。



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