ひつじ書房 小笠原諸島の混合言語の歴史と構造 小笠原諸島の混合言語の歴史と構造 ダニエル・ロング著 ひつじ書房 小笠原諸島の混合言語の歴史と構造 日本元来の多文化共生社会で起きた言語接触 ダニエル・ロング著
2018年2月刊行

小笠原諸島の混合言語の歴史と構造

日本元来の多文化共生社会で起きた言語接触

ダニエル・ロング著

定価8000円+税 A5判上製カバー装 432頁

ISBN 978-4-89476-904-5

The History and Structure of the Ogasawara Mixed Language: language contact in Japan’s original multicultural society

Daniel Long

ひつじ書房



東京都の小笠原諸島がユネスコの世界自然遺産となってからよく話題になるが、実は180年以上前からそこには多数の言語を話す人々が暮らしており、2世紀近くにわたってさまざまな言語接触が積み重なった結果、現代使われる「小笠原混合言語」が形成されたのである。本書は、その構造をピジンやクレオールとの違いから分析しつつ、21世紀の日本が直面している「多文化共生」や「複言語」の状況を小笠原の欧米系島民がどのようにして乗り越えてきたかを解説する社会言語学の歴史的研究である。



○書評情報
・『週刊読書人』3243号(2018年6月15日)掲載
 評者:橋本直幸
・『日本語の研究』第15巻1号(2019年4月1日)掲載
 評者:永田高志


目次

第1部 日本語到来以前
第1章 小笠原諸島の言語史

1.1. 言語接触関連の用語
1.2. 小笠原諸島の歴史的概要
1.3. 小笠原言語研究の意義
1.4. 地理と地名
1.5. 入植以前の歴史
1.6. 初期の入植者
1.7. 日本人の到来
1.8. 第二次世界大戦
1.9. 戦後の孤立化
1.10. 日本への返還

第2章 小笠原諸島における言語変種
2.1. 太平洋の諸言語
2.2. ヨーロッパの諸言語
2.3. イギリス英語とアメリカ英語
2.4. ボニンピジン英語
2.5. ボニンクレオロイド英語
2.6. ボニン標準英語
2.7. 八丈島方言とその他の日本語変種
2.8. 小笠原コイネー日本語
2.9. 小笠原標準日本語
2.10. 小笠原混合言語
2.11. 様々な集団の名称

第3章 日本語が入ってくる以前の英語
3.1. 入植者一世の母語の多様性
3.2. 家庭内で異なる言語
3.3. 学校教育の欠如
3.4. 日本人漂着者の記録
3.5. 太平洋諸島の影響
3.6. 島民の外部との接触
3.7. ハワイ語などに由来する単語
3.8. 人名に由来する単語
3.9. 類似する言語接触状況
3.10. 一世の間で使われたピジン化された英語
3.11. 二世以降に使われたクレオロイド英語
3.12. 接触言語を示唆する記録
3.13. 19 世紀後半のボニン英語に関する記述

第2部 日本語到来後
第4章 社会歴史学的概要:日本語時代の初期

4.1. 日本語の領域拡張の歴史で捉える小笠原
4.2. 小笠原島民の日本語との出会い
4.3. ジョセフ・ゴンザレスと19 世紀後期の英語教育
4.4. 19 世紀後半のバイリンガリズムとダイグロシア
4.5. 日本語と英語が混ざり始めた状況
4.6. 日本本土で教育を受けた欧米系島民
4.7. 日本時代初期における英語と太平洋諸語の接触

第5章 19世紀後半のボニン英語
5.1. 話者について
5.2. 検証すべき課題
5.3. 分節音素
5.4. 超分節音素
5.5. 語彙
5.6. 日本語からの干渉
5.7. 19世紀クレオロイドの形跡
5.8. 伝聞にみられるクレオロイド
5.9. 形態統語素
5.10. まとめ

第3部 20世紀前半
第6章 社会歴史学的概要:20世紀初頭の英語

6.1. 20世紀初頭において増加する二言語使用とダイグロシア
6.2. 日英通訳を務めた島民
6.3. 人名
6.4. 20世紀の日系島民が話していた英語

第7章 20世紀初頭のボニン英語と戦前の混合言語
7.1. 20世紀初頭生まれの男性の英語
7.2. 戦前における小笠原混合言語の発生
7.3. 音韻論
7.4. 小笠原混合言語の日本語の要素
7.5. 機能的語彙
7.6. 形態論
7.7. 統語素

第4部 米軍時代
第8章 社会歴史学的概要:米海軍時代の英語

8.1. 戦後のダイグロシアのL言語としての日本語と混合言語
8.2. 米海軍統治下における英語による教育
8.3. 米軍時代における戦前生まれ話者の英語使用
8.4. 個人話者の言語レパートリー

第9章 ネイビー世代のボニン英語
9.1. 1960年代に話されていた英語に関する報告
9.2. 60年代後半の書記英語としての例
9.3. ネイビー世代の英語に影響を与えた様々な言語変種
9.4. 米軍時代における太平洋諸島の影響
9.5. ネイビー世代が話す英語の特徴

第10章 戦後の小笠原混合言語
10.1. 混合言語という概念
10.2. 小笠原混合言語の発生
10.3. 戦後の混合言語の特徴
10.4. 混合言語の研究
10.5. 「二起点接触言語」としての混合言語
10.6. 小笠原混合言語の将来

第5部 返還後
第11章 欧米系島民が使う日本語の実態

11.1. 欧米系島民の日本語能力に見る世代差
11.2. 会話例にみるネイビー世代話者の日本語能力
11.3. 作文にみるネイビー世代話者の日本語能力
11.4. ネイビー世代話者が話している日本語の特徴
11.5. 欧米系島民の日本語に見られる八丈島方言の影響

第12章 他の孤立した言語変種の社会との比較
12.1. 類似した言語接触の状況
12.2. 言語的要因
12.3. 地政学的要因
12.4. 言語ドメインに関する要因
12.5. 言語使用の諸要因
12.6. 社会心理学的要因

第13章 返還後における英語、日本語および混合言語
13.1. 返還後における日本語のH 言語復位
13.2. 現在の小笠原日本語の特徴
13.3. 小笠原日本語に見られる英語の影響
13.4. 歴史的まとめ
13.5. コミュニティの現状
13.6. ボニン・アイランダーたちの将来

第14章 「小笠原混合言語」は本当に「言語」なのか—5つの側面からの検証
14.1. 問題の所在
14.2. 言語意識面
14.3. 言語使用面
14.4. 言語能力面
14.5. 言語習得面
14.6. 言語構造面
14.7. まとめ

第15章 世界遺産時代の小笠原ことば
15.1. 生物学から言語を考える
15.2. 言語的固有種
15.3. 言語的広域分布種
15.4. 言語的外来種
15.5. 小笠原の言語を知る「意義」

謝辞
参考文献
索引


著者紹介
ダニエル・ロング(Daniel Long)
首都大学東京人文科学研究科日本語教育学教室教授
〈主な著書(共編著含む)〉
『マリアナ諸島に残存する日本語』(2012)、『日本語からたどる文化』(2011)、『世界の言語景観 日本の言語景観』(2011)、English on the Bonin (Ogasawara) Islands (2007)、『小笠原ことばしゃべる辞典』(2005)、『小笠原ハンドブック』(2004)、『小笠原学ことはじめ』(2002)、ほか。


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