現代日本語の視点の研究 体系化と精緻化 古賀悠太郎著 ひつじ書房 現代日本語の視点の研究 体系化と精緻化 古賀悠太郎著 ひつじ書房
2018年3月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第149巻

現代日本語の視点の研究

体系化と精緻化

古賀悠太郎著

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A5判上製函入り 244頁 定価6400円+税

ISBN 978-4-89476-861-1

ひつじ書房


Viewpoint Study in Modern Japanese:
Systematization and Elaboration
Koga Yutaro


【内容】
話し手の「視点」のあり方は我々の言語に影響を及ぼす重要な要素の一つであり、数多くの議論がなされてきた。しかし、論者によって「視点」の意味は様々であり、そもそも視点を持ち出す意義の問題もある。本書は、授与動詞文、移動動詞文、ヴォイスなどの文法項目に視点がどのように関与するのかを改めて検討した上で、視点の関与の仕方という観点から複数の文法項目の間に認められる体系を構築。言語と視点の関係を明らかにする。



【目次】

第1章 言語における「視点」とは
 1. はじめに―「視点」の射程の広さ
 2. 「視点」の研究史と現状
  2.1 視点研究の歴史
  2.2 視点研究の現状
 3. なぜ、「視点」が必要なのか
  3.1 言語は「視点」と切り離せない
  3.2 複数の文法項目に対して統一的な説明を与えるのに寄与
  3.3 「諸刃の剣」としての視点
 4. 本書の方針―「視点」の用い方について
 5. 本書の目標
  5.1 目標(1)―視点研究の精緻化
  5.2 目標(2)―視点研究の体系化
  5.3 精緻化と体系化の関係
 6. 本書の構成

第2章 先行研究の整理
 1. はじめに
 2. 視点研究の二つの流れ―共感度と事態把握
  2.1 久野暲(1978)の「共感度」
  2.2 池上嘉彦(2003, 2004, 2006)の「事態把握」
 3. 視点の定義についての研究
  3.1 井島正博(1992)
  3.2 渡辺伸治(1999)
 4. 視点と個別の文法項目の関係についての研究
  4.1 「(て)やる/(て)くれる/(て)もらう」と「行く/来る」
  4.2 受動文(奥津敬一郎(1983a, 1992))
  4.3 アスペクト・テンス(工藤真由美(1993, 1995)、益岡隆志(1991))
  4.4 モダリティ(松木正恵(1993))
  4.5 感情形容詞文の人称制限(甘露統子(2004, 2005)、岡本真一郎・多門靖容(2014))
  4.6 敬語(益岡隆志(2009))
  4.7 空間関係を表す名詞の用法(野田尚史(1987))
 5. 視点に関する日英・日中対照研究
  5.1 日英対照研究(1)(森山新(2006))
  5.2 日英対照研究(2)(金谷武洋(2004))
  5.3 日中対照研究(1)(下地早智子(2004, 2011))
  5.4 日中対照研究(2)(彭广陆(2008b))
 6. 今後の議論に向けて

第3章 「やる/くれる」文、「行く/来る」文と視点
 1. はじめに
  1.1 問題の所在(1)―授与・移動に関与する視点の意味について
  1.2 問題の所在(2)―「やる/くれる」文、「行く/来る」文における視点の決定のされ方について
  1.3 本章の構成
 2. 「視点」の意味―「やる/くれる」文、「行く/来る」文の場合
 3. 「準一人称」の範囲
  3.1 「行く/来る」文の場合
   3.1.1 移動の到着点としての「準一人称」
   3.1.2 移動の出発点としての「準一人称」
  3.2 「やる/くれる」文の場合
  3.3 第3節のまとめ
 4. 三人称同士の授与・移動
 5. 二人称の位置付け
  5.1 考察の方法
  5.2 「やる/くれる」文の場合
  5.3 「行く/来る」文の場合
  5.4 授与と移動の相違点
  5.5 第5節のまとめ
 6. 本章のまとめ

第4章 授与補助動詞「てやる/てくれる」文と視点
 1. はじめに
  1.1 問題の所在―「てやる/てくれる」文における視点のあり方
  1.2 本章の構成
 2. 「てやる」と「てくれる」の視点
  2.1 久野(1978)の問題点と「直接・間接ベネファクティブ」
  2.2 「てやる」の視点
  2.3 「てくれる」の視点
  2.4 第2節のまとめ
 3. 三人称同士のコトの授与における視点の決定のされ方
  3.1 「新登場人物(A)→談話主題(P)」のコトの授与
  3.2 「談話主題(A)→新登場人物(P)」のコトの授与
  3.3 第3節のまとめ
 4. 「てやる/てくれる」文における二人称の位置付け
  4.1 考察方法
  4.2 「てやる」が適格になる場合、ならない場合
  4.3 「てくれる」が適格になる場合、ならない場合
  4.4 第4節のまとめ
 5. 本章のまとめ

第5章 ヴォイスと視点
 1. はじめに
  1.1 受動文の分類
  1.2 問題の所在(1)―ヴォイスに関与する視点の意味について
  1.3 問題の所在(2)―ヴォイスの選択に対する視点の関与の仕方の程度について
  1.4 本章の構成
 2. 「視点」の意味―ニ受動文の場合
 3. ニ受動文と視点(1)―視点の序列
  3.1 一人称>二・三人称
  3.2 [+特定]>[-特定]
  3.3 [+有情]>[-有情]
  3.4 第3節のまとめ
 4. ニ受動文と視点(2)―視点固定の原則
  4.1 従属節の従属度
  4.2 従属度と視点固定の原則
   4.2.1 A類従属節
   4.2.2 B類従属節
   4.2.3 C類従属節
   4.2.4 D類従属節
  4.3 第4節のまとめ
 5. 間接受動文と視点
 6. ニヨッテ受動文と視点
 7. 本章のまとめ

第6章 「視点」に関する日中対照研究 ヴォイスを中心に
 1. はじめに
  1.1 本章の目的
  1.2 本章の方針
  1.3 本章の構成
 2. 日本語のヴォイスと視点
 3. 中国語におけるヴォイスの選択と視点
  3.1 考察の対象
  3.2 ヴォイスの選択のされ方
   3.2.1 [+致使力]の動作主(N1)
   3.2.2 [+変化]の被動作主(N2)
   3.2.3 情報の新旧
  3.3 「視点」の意味―中国語のヴォイスの場合
 4. 「視点」の日中対照研究への寄与
  4.1 他動詞文/(ニ)受動文の選択の一致・不一致について
  4.2 間接受動文の発達度の差について
  4.3 ニヨッテ受動文と中国語受動文の特徴の異同について
 5. 本章のまとめ

第7章 視点研究の体系化の試み
 1. はじめに
  1.1 本章の目的
  1.2 本章の構成
 2. 日本語の三種の受動文を中心とした視点の体系
  2.1 他動詞文/ニ受動文と「行く/来る」文、「やる/くれる」文
  2.2 間接受動文と「てくれる」文
  2.3 ニヨッテ受動文と「中国語受動文」
  2.4 視点の体系
 3. 日中両語の他の項目と視点の体系
  3.1 日中両語の完成相/継続相の選択と視点
  3.2 日中両語の「左/右」の決定のされ方と視点
  3.3 完成相/継続相、「左/右」を加えた視点の体系
 4. 視点の体系から読み取れる日本語の特徴
 5. 本章のまとめ

第8章 本書のまとめ
 1. 内容の振り返り
 2. 従来の視点研究とは異なる本書の貢献
 3. 視点研究の今後に向けて

  参考文献
  あとがき
  索引



【著者紹介】

古賀悠太郎(こが ゆうたろう)
1984年生まれ。佐賀県出身。台湾・静宜大学日本語文学系助理教授。神戸市外国語大学大学院外国語学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。神戸女学院大学非常勤講師、中国・北京第二外国語大学外国籍講師などを経て、2016年8月より現職。
〈主な論文〉
「視点制約違反の他動詞文「Xが私をV」が適格となる条件―コーパス調査から」『北研学刊』第13号(2017年)、「日中対照に寄与する視点研究の方向性についての一提案―他動詞文/受動文・完成相/継続相・「左/右」を例に」『日中言語対照研究論集』第18号(2016年)。



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