ソシュール言語学の意味論的再検討 松中完二著 ソシュール言語学の意味論的再検討 松中完二著
2018年7月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第135巻

ソシュール言語学の意味論的再検討

松中完二著

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A5判上製函入り 552頁 定価8,800円+税

ISBN 978-4-89476-777-5

ひつじ書房
Reconsidering Semantics in Saussurean Linguistics
Kanji Matsunaka


本書は、Cours de linguistique généraleでのソシュールの意味論の問題について、1996年に発見された自筆草稿を基に解決を試みる。ソシュール学説は日本でも迅速に受け入れられたが、一方で大きな抵抗もあった。その一つが、時枝誠記の「言語過程説」を基にした論争である。本書では両者の学説を再検討するとともに、両者の主張にはむしろ共通点が多く、それが当時すでに現代の認知的視点を先取りしていたことを明らかにする。


【目次】


まえがき

序章 現代言語学とSaussure
1. 現代言語学とSaussure
2. Saussure 学説の矛盾
3. Saussure 研究の方向性
4. Saussure 学説と言語研究
5. Saussure 研究の新時代
6. 本書での問題点

第1章 言語学の潮流と意味研究
1. Saussure とヨーロッパ構造主義言語学
2. ヨーロッパ構造主義言語学における意味の研究
3. Bloomfield とアメリカ構造主義言語学
4. アメリカ構造主義言語学における意味の研究
5. Chomsky と生成文法
6. 生成文法における意味の研究
7. 今後の課題
7.1 記号の対立と意味
7.2 場面と意味伝達
7.3 科学としての言語学が目指すもの

第2章 Saussure 学説の主要点
1. Cours de linguistique généraleと『言語学原論』
2. langue、langage、parole の三分法
3. 実存体としての言語
4. 記号としての言語
5. 記号の対立と意味
6. 言語記号の恣意性

第3章 “時枝・服部論争”の勃発と言語学界での論争
1. 時枝誠記の『国語学原論』と「言語過程説」
2. 時枝・服部論争
3. 第一次論争期
3.1 佐藤喜代治との論争
3.2 三浦つとむによる擁護
3.3 風間力三・大久保忠利との論争
3.4 黒岩駒男との論争
3.5 門前真一との論争
3.6 服部四郎との論争

第4章 “時枝・服部論争”の再燃と哲学界での論争
1. 第二次論争期
1.1 杉山康彦との論争
1.2 吉本隆明による擁護
1.3 大久保忠利との論争
1.4  竹内成明、平田武靖、大久保そりや、藤井貞和、野村精一、川本茂雄との論争
1.5 山内貴美夫、三宅鴻、亀井孝、丸山静との論争
1.6 丸山圭三郎との論争
2. 論点のまとめ

第5章 フランス語原典と日本語訳の比較検証
1. 日本語との対応
1.1 Cours de linguistique généraleと『言語学原論』
1.2 Anthropologie structuraleと『構造人類学』
1.3  Questions de Poétiqueと『ロマーンヤコブソン選集3 詩学』
1.4  Le Degré Zéro de L’écritureと『零度のエクリチュール』
1.5 Éléments de Sémiologieと『記号学の原理』
1.6 Essais de stylistique structuraleと『文体論序説』
1.7 Sémiotique de la poésieと『詩の記号論』
1.8 L’archéologie du Savoirと『知の考古学』
1.9  Les Mots et Les Chosesと『言葉と物̶人文科学の考古学̶』
1.10 Alice au Pays du Langageと『言葉の国のアリス』
2. 訳語のまとめ

第6章 仏文原典と英語訳の比較検証
1. 英語との対応
1.1  Cours de linguistique généraleCourse in General Linguistics
1.2  Anthropologie structuraleStructural Anthropology
1.3 Le Degré Zéro de L’écritureWriting degree Zero
1.4 Éléments de SémiologieElements of Semiology
1.5 Sémiotique de la poésieSemiotics of Poetry
1.6  L’archéologie du SavoirThe Archaeology of Knowledge
1.7 Les Mots et Les ChosesThe Order of Things
2. 訳語のまとめ

第7章 Saussure の自筆草稿と時枝学説の相違についての考察
1. “ 時枝・服部論争” の論点の考察
2. 思想解釈の相違 
2.1 langue、langage とparole
2.2 実存体としてのlangue
2.3 記号の対立と意味
2.4 言語記号の恣意性
2.5 Saussure と時枝誠記の「主体観」
2.6 時枝誠記とSaussure の学問的類似
2.7 Saussure の真の言葉と時枝学説
2.8 時枝誠記の認知的言語観
3. 訳語の問題
3.1 langue、langage とparole
3.2 訳語の対応関係
3.3 signifié とsignifiant
3.4 翻訳の問題
4. 時枝誠記とその時代
4.1 小林英夫に対する称賛
4.2 時枝誠記によるSaussure 学説批判の真意

第8章 構造と認知の科学
1. 言語における構造とはなにか
2. 言語の科学と科学としての言語
3. 生得性としてのlangue と後天性としてのsigne
4. langue とparole の言語学
5. 記号としての言語
6. 構造と認知の接点に向けて

あとがきにかえて—なぜ今Saussureか—
初出一覧
引用・参考文献
人名索引
事項索引



【著者】
松中完二(まつなか かんじ)
〈略歴〉
久留米工業大学准教授、国際基督教大学アジア文化研究所研究員。博士(学術)。
〈主な著書・論文〉
「現代の多義語の構造」『現代日本語講座第4巻 語彙』明治書院(2002)、「語の多義的意味拡張についての認知的考察―「山」の場合を基に―」『日本語教育学の視点』東京堂出版(2004)、『現代英語語彙の多義構造―認知論的視点から―【理論編】・【実証編】』白桃書房(2005、2006)、「「ひく」の意味論―多義と認知の接点―」『日本近代語研究5』ひつじ書房(2009)、他多数。



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