ひつじ書房 ナラトロジーの言語学 表現主体の多層性 福沢将樹著 ナラトロジーの言語学 表現主体の多層性 福沢将樹著
2015年10月刊行

未発選書 24

ナラトロジーの言語学

表現主体の多層性

福沢将樹著


四六判上製カバー装 360頁 定価3,200円+税

装丁 中野豪雄+川瀬亜美(株式会社中野デザイン事務所)

ISBN 978-4-89476-759-1

ひつじ書房
Narratological Linguistics: A multi-strata approach of subjects to produce expressions
Masaki Hukuzawa


言語学における語用論・統語論と文学理論におけるナラトロジー(物語論)とを融合し、「作者」「語り手」「視点」といった「表現主体」の多層性(垂直分業)の観点と「人格」の乖離という概念を組み合わせた統一的な枠組みを構築する。この枠組みに基づき、嘘・虚構・お世辞、引用、時制のそれぞれにつき、様々な微妙な区別を図式化し、それらが相違を持つにもかかわらず類似することをも説明する。



【目次】


まえがき

第一章   総論
1 表現主体の多層性
 1・1 複数の〈人格〉
 1・2 垂直分業
2 〈人物〉と〈人格〉
3 語用論と統語論
4 発信者と受信者の概念、「ラング」の存在
5 文字言語と書記言語、音声言語と口頭言語

第二章   表現主体
1 まず二層―〈言及対象〉と〈視点〉
2 〈視点〉と焦点化
3 〈語り手〉
4 〈作者〉像
5 中間まとめ(四階層)
 5・1 〈扮装性〉〈再生性〉〈認識性〉
 5・2 〈再生性〉と〈認識性〉のパターン
    〈内観〉
    〈外観〉
    〈再生内観〉
    〈再生外観〉
    〈自己韜晦〉
    五類型のまとめ
 5・3 「物語世界」の内側と外側
    〈物語世界外の語り〉
    〈解説の語り〉
    〈固定視点の語り〉
    〈実況の語り〉
    〈物語世界内の語り〉
 5・4 階層の細分化
6 〈作者〉の細分―〈作家〉と〈内在する作者〉
7 〈語り手〉の三分類
 7・1 〈演ずる語り手〉と〈文の語り手〉
 7・2 〈発話〉には一般的な「意義」は存在しないのか 93
 7・3  話し手が伝えるつもりのない「発話」の「意味」と〈談話の語り手〉
 7・4 直接話法の引用句
 7・5 「モダリティ」「陳述」との関係
8 〈視点〉の三分類
 8・1 〈隔絶性〉と〈様相性〉
 8・2 引用の諸相
 8・3 渡辺の統叙と陳述
9 まとめと物語世界の内と外(再論)
 9・1 九細分類のまとめ
 9・2 〈物語世界外の語り〉
 9・3 〈解説の語り〉
 9・4 〈筋の語り〉
 9・5 〈固定視点の語り〉
 9・6 〈直接引用の語り〉
 9・7 〈漏洩盗聴の語り〉
 9・8 〈実況の語り〉
 9・9 〈上演の語り〉
 9・10 〈古典の語り〉
 9・11 〈物語世界内の語り〉

第三章   虚構と表現主体の階層
1 「虚構」とは―日常言語と文芸言語―
2 嘘の諸類型
 2・1 知覚失敗の嘘
 2・2 発話者も嘘と認識しているもの
 2・3 気取られない嘘
 2・4 建前
 2・5 お世辞・皮肉
 2・6 受け売りの嘘
 2・7 嘘のまとめ
3 虚構の諸類型
 3・1 虚構とは
 3・2 語り手の存在
 3・3 〈仮託的〉な作者
 3・4 〈上演的〉な代読、代筆
 3・5 虚構のまとめ
4 嘘と虚構のまとめ

第四章   引用と表現主体の階層
1 直接話法と間接話法
 1・1 直接引用
 1・2 間接引用 附・自由直接話法と自由間接話法(体験話法)
2 体験話法の二つの性格
 2・1 バフチンの「擬似直接話法」
 2・2 三谷の「自由間接言説」
 2・3 再びバフチンの分析
 2・4 体験話法で語り手と登場人物の見解が一致する場合
 2・5 体験話法の二つの性格
 2・6 潜在的引用
3 引用の諸相
 3・1 あらすじ引用
 3・2 見立てとしての引用
 3・3 直接引用と部分設計図の引用
 3・4 コピーの引用
 3・5 現物の引用
 3・6 作者の引用と結社
4 引用のまとめ

第五章   時間と表現主体の階層
1 時制の階層
2 物語と時間軸
3 テンス・アスペクト
 3・1 アスペクトとパースペクティブ
 3・2 用語
 3・3 アスペクチュアリティーとパースペクチュアリティー
4 時間の各階層
 4・1 アスペクチュアリティー(完然・将然)
 4・2  アスペクチュアリティーとパースペクチュアリティー(経歴・予測)
 4・3  パースペクチュアリティーとテンポラリティー(あらすじ過去・あらすじ未来)
 4・4 固定視点
 4・5 〈語り手〉と〈視点〉
 4・6 〈作者〉
5 まとめ

第六章  結語

付録 文章を潜在的に引用する機能について
導入
1 提案
2 諸説との対応
 2・1 高橋亨の「作者」(もののけ)
 2・2 三谷邦明の「話者」
 2・3 藤井貞和の「第二の書き手(語り手)」
 2・4 ブースとチャットマンの「内在する作者」
まとめと今後の展望


あとがき

参考文献

索引



著者紹介
1969年北海道余市町生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2000年愛知県立大学専任講師、助教授・准教授を経て2015年より同教授。専門は国語学。〈主な論文〉「タリ・リと動詞のアスペクチュアリティー」(『国語学』191集、1997年)、「階層構造文法と「語り」理論素描」(『説林』51号、2003年)、「語りの諸類型」(『愛知県立大学文学部論集(国文学科編)』第52号、2004年)、「玉上〈三人の作者〉説の語用論的意義」 (『愛知県立大学文学部論集(国文学科編)』第56号、2008年)、「あらすじ過去と別人格——『法華百座聞書抄』のキ・ケリ——」(石塚晴通教授退職記念会(編)『日本学・敦煌学・漢文訓読の新展開』汲古書院、2005年)


ご注文は、最寄りの書店さんでお願いします。
お店に在庫が無くても、お取り寄せができます。
書店が最寄りにない場合は、オンライン書店でご注文ください。

 

 



お急ぎの場合は、小社あてにご注文いただくこともできます。
郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をメールか、FAXでお知らせください。
送料420円でお送りします。
新刊案内へ
ひつじ書房ホームページトップへ