未発選書23 フィクションの機構2 中村三春著 ひつじ書房
2015年2月
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未発選書23
フィクションの機構2
中村三春著
四六判上製 440頁 定価4400円+税
ISBN 978-4-89476-746-1
Mechanism of Fiction 2
Miharu Nakamura
ひつじ書房
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言語は根元的に虚構であり、文芸の虚構はその延長線上に実現される。この根元的虚構論の立場から、〈嘘と虚構のあいだ〉〈近代小説と自由間接表現〉〈第二次テクストと翻訳〉〈カルチュラル・スタディーズとの節合〉〈認知文芸学の星座的構想〉〈無限の解釈過程と映像の虚構論〉〈故郷・異郷・虚構〉など未解決の課題に答え、横光利一・太宰治・村上春樹の小説、安西冬衛・谷川俊太郎・松浦寿輝の詩、今井正の映画について論じる。
目次
序説 根元的虚構論と文学理論
1 根元的虚構論の構想
2 文学理論の現在
3 本書の構成
第一部 フィクションの諸相―根元的虚構論から―
第一章 嘘と虚構のあいだ―言語行為と根元的虚構―
1 「二重の陳述」の問題
2 形象性と構築性
3 虚構の起源としての嘘
4 嘘の基盤としての虚構
5 秘密性と操作性
6 嘘 虚構 根元的虚構
第二章 虚構論と文体論―近代小説と自由間接表現―
1 小説 虚構 文体
2 自由間接表現と小説
3 引用=話法としての自由間接表現
4 引用と根元的虚構
第三章 物語 第二次テクスト 翻訳
―村上春樹の英訳短編小説―
1 翻訳と第二次テクスト
2 Monsterと獣―「緑色の獣」読解
3 現代の昔話
4 物語の機能―「タイランド」とともに
5 本質的翻訳性
第四章 表象テクストと断片性
―カルチュラル・スタディーズとの節合―
1 全体性と断片性
2 節合 全体論 啓蒙
3 反ポストモダニズムの思想
4 啓蒙の限界
第五章 認知文芸学の星座的構想
―関連性理論からメンタルスペース理論まで―
1 文芸テクストと共約不可能性
2 アレゴリー的転倒
(1)関連性理論と物語生成論
(2)無限の解釈項
(3)アレゴリー・星座・脱構築
3 認知文芸学とパラダイム論
4 星座的ネットワークの構想
第六章 〈無限の解釈過程〉から映像の虚構論へ
―記号学と虚構―
1 可能世界虚構論とメイクビリーヴ理論
2 可能世界と不可能世界
3 虚構とウォーターゲート・モデル
4 映像の虚構論
第七章 故郷 異郷 虚構―「故郷を失つた文学」の問題―
1 故郷/異郷の発生
2 近代主義と故郷
3 故郷から日本回帰へ
4 近代世界システムとユートピア
5 故郷/異郷の無化
6 充溢する今・ここ
第二部 フィクションの展開―詩・小説・映画―
第一章 安西冬衛―『渇ける神』の可能世界―
1 〈世界図〉的なテクスト
2 『渇ける神』の成立
3 『渇ける神』の可能世界
(1)ドキュメント形式
(2)百科事典型ディスクール
(3)表意体の独立
(4)異文化的情報
4 〈外部〉から〈外部〉へ
第二章 横光利一―非構築の構築『上海』―
1 『上海』のレトリック分析
2 物象化―意味生成性(1)
3 連鎖―意味生成性(2)
4 疎隔化―意味生成性(3)
5 開かれた作品、アヴァンギャルド
6 テクスト様式論
第三章 太宰治―第二次テクスト『新ハムレツト』―
1 なぜ『新ハムレツト』か?
2 第二次テクスト性
3 対話のフラグメント
4 「愛は言葉だ」と神
5 アヴァンギャルドとデカダンス
6 『ハムレット』の衝撃
第四章 谷川俊太郎―テクストと百科事典―
1 沈黙 言葉 世界
(1)自我・実存の問題
(2)言葉による他者とのコミュニケーションの困難
(3)言葉による世界把握の不可能性
(4)発語そのものの条件
2 『定義』―百科事典のパロディ
(1)「メートル原器に関する引用」
(2)「非常に困難な物」
(3)「そのものの名を呼ばぬ事に関する記述」
(4)「道化師の朝の歌」
(5)「なんでもないものの尊厳」
3 りんごから世界の連環へ
(6)「りんごへの固執」
4 コンタクト志向の詩
第五章 村上春樹―〈危機〉の作家―
1 堀辰雄1923/村上春樹1995
2 〈傷つきやすさ〉の系譜
3 「システム」の諸様相
4 恐怖に向き合う想像力
5 震災から震災へ
第六章 松浦寿輝―詩のメタフィクション―
1 世界の「マクドナルド化」に抗して
2 『ウサギのダンス』―メタ物語とメタ詩
3 「とぎれとぎれの午睡を が浸しにやってくる*」―〈虫食い〉の詩
4 「幼年」―エクリチュールの零度
5 『女中』―関係性の白昼夢
6 『鳥の計画』―自我と拡散
第七章 今井正―『また逢う日まで』のメロドラマ原理―
1 反復とヴォイス・オーヴァー
2 愛と死のパラドックス
3 読唇術、またはkissの本質
注
初出一覧
あとがき
索引
著者紹介
中村三春 (なかむら みはる)
北海道大学大学院文学研究科教授。日本近代文学・比較文学・表象文化論専攻。
著書に、『フィクションの機構』(1994年)、『修辞的モダニズム―テクスト様式論の試み』(2006年)、『新編 言葉の意志―有島武郎と芸術史的転回』(2011年)『〈変異する〉日本現代小説』(2013年、以上ひつじ書房)、『物語の論理学―近代文芸論集』(2014年、翰林書房)など。
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