歴史語用論の世界   金水敏・高田博行・椎名美智編 歴史語用論の世界—文法化・待遇表現・発話行為  金水敏・高田博行・椎名美智編
2014年6月刊行


歴史語用論の世界

文法化・待遇表現・発話行為

金水敏・高田博行・椎名美智 編



Horizons of historical pragmatics

Grammaticalization, politeness and speech act

Edited by Satoshi Kinsui, Hiroyuki Takada and Michi Shiina



装丁 山本翠

A5判並製 320頁   定価3,600円+税

ISBN 978-4-89476-690-7

ひつじ書房



時代や文化の異なる社会で、人は場面に応じて言葉をどう使い分けてきたのか? その言葉の使用法は時代と共にどう変わってきたのか? この問いに答えるべく本書では、文法化と待遇表現について論じたあと、人を取り調べる、人を説得する、人に伝えるという観点から英語史・日本語史・ドイツ語史におけるトピックを掘り起こし、新たな研究へと誘う。執筆者:小野寺典子、福元広二、森山由紀子、椎名美智、高田博行、諸星美智直、片見彰夫、中安美奈子、芹澤円、森勇太、高木和子


■目次

はじめに


第1部 文法化と待遇表現

第1章 談話標識の文法化をめぐる議論と 「周辺部」という考え方
小野寺典子   
1. はじめに
2. 談話標識の通時的変化
―変化プロセスについての3つの立場
2.1 談話標識の通時的変化―文法化という立場
2.2 談話標識の通時的変化―語用論化という立場
2.3 談話標識の通時的変化―文法化のような、文法化でないような変化(境界線上の現象)という立場
3. 「文法化」の2つの立場―論争の背景
3.1 文法化の「伝統的な(狭い)」考え方
3.2 文法化の「より広い」考え方
4. 周辺部
4.1 周辺部の機能
4.2 「これから起こる話し手の行為」を知らせるLPの談話標識
5. 発話の階層構造モデル

第2章 初期近代英語期における仮定法の衰退と I thinkの文法化
福元広二   
1. はじめに
2. 先行研究
3. 初期近代英語期の演劇におけるI think
3.1 初期近代英語期の演劇におけるI thinkの補文構造
3.2 初期近代英語期の演劇におけるI thinkの従属節の仮定法
4. Shakespeareの版本におけるI think
4.1 ShakespeareにおけるI thinkの補文構造
4.2 ShakespeareにおけるI thinkの従属節の仮定法
4.3 Shakespeareの版本における仮定法
5. 結論

第3章 11世紀初頭の日本語における聞き手敬語 「―はべり」の方略的運用
―社会言語学的要因と語用論的要因をめぐって
森山由紀子   
1. はじめに
1.1 語用論と敬語
1.2 現代日本語の敬語の方略的用法
1.3 1000年前の日本語の敬語に方略的用法はあったか
2. A.D.1000年頃の「はべり」の標準的意味
2.1 通時的な位置づけ
2.2 身分や立場に基づく基本的な用法
2.3 場面に基づくフォーマルな表現
2.4 「ままごと言葉」としての用法
3. コミュニケーション方略としての「―はべり」
3.1 社会的上下関係や場面のフォーマリティーの基準に該当しない例
3.2 神妙な姿勢
3.3 慇懃無礼
3.4 皮肉・軽い対立関係の緩和・はぐらかし
4. まとめ


第2部 ひとを取り調べる

第4章 初期近代英語期の法廷言語の特徴
―「取り調べ」における「呼びかけ語」の使用と機能
椎名美智   
1. はじめに
2. 法廷言語の特徴
3. 理論的枠組みと仮説
4. データ
5. 分析結果と考察
5.1 呼びかけ語の使用頻度
5.2 呼びかけ語を使用する対話者
5.3 各呼びかけ語の使用状況
5.4 権力関係と呼びかけ語使用
5.5 その他の呼びかけ語
5.6 呼びかけ語の使用位置と語用論的役割
6. おわりに

第5章 ドイツの魔女裁判尋問調書(1649年)に 記されたことば
―裁判所書記官の言語意識をめぐって
高田博行   
1. 魔女裁判
2. マルガレーテ・ティーマンに関する尋問
2.1 裁判の経過
2.2 尋問の経過
2.3 尋問調書の構成
3. 形式化・正確化する書きことば
3.1 ラテン語の使用
3.2 冠飾句
3.3 e音の追加
3.4 主節の枠構造
3.5 従属節の枠構造
4. 臨場感をもたせる話しことば
4.1 低地ドイツ語
4.2 呼称代名詞
4.3 話しことばらしさ
4.4 間接話法における話しことばの痕跡
5. 裁判所書記官による「真実」の追求

第6章 近世期吟味控類における「尋問」と 「釈明」のストラテジーについて
諸星美智直   
1. はじめに
2. 寺社奉行による吟味―『真実院与智洞対決実記』
2.1 寺社奉行による尋問のストラテジー
2.2 僧俗側による釈明のストラテジー
3. 町奉行による吟味―『旧幕町奉行調写』
3.1 町奉行による尋問のストラテジー
3.2 町人側の釈明のストラテジー
4. 地方の訴訟の事例―『御白洲始末書』
4.1 寺社奉行吟味物調役による尋問のストラテジー
4.2 農民側の釈明のストラテジー
5. おわりに


第3部 ひとを説得する

第7章 中世イングランド神秘主義者の 散文における説得の技法
片見彰夫   
1. はじめに
2. 反復と変奏
2.1 反復と変奏の文体効果
2.2 反復と変奏の用例とその解釈
3. ワードペア
3.1 ワードペアの定義と論点
3.2 品詞
3.3 語源
3.4 多く現れるWP
4. 行為指示型発話行為動詞
4.1 行為指示型発話行為とは
4.2 発話行為動詞の用例と解釈
5. まとめ

第8章 シェイクスピアにおける説得の コミュニケーション
―法助動詞を中心に
中安美奈子   
1. はじめに
2. 説得とは何か
3. データ
3.1 コーパス
3.2 法助動詞(modal)
4. 説得の分析
4.1 法助動詞と説得
4.2 談話における説得
5. おわりに


第4部 ひとに伝える

第9章 ドイツ最古の週刊新聞の 「書きことば性」をめぐって
―出来事をどのように報道するのか
芹澤円   
1. はじめに
1.1 「最新報告」という印刷ビラ
1.2 ドイツ最古の週刊新聞
1.3 本章の狙いと分析対象
2. 話しことば性と書きことば性
2.1 「近い」ことばと「遠い」ことば
2.2 話しことば性(書きことば性)を測定するモデル
3. 「最新報告」と週刊新聞の話しことば性と書きことば性
3.1 ミクロレベルでの分析
3.2 マクロレベルでの分析
3.3 最終値から言えること
4. 週刊新聞の言語的特徴
4.1 受動態の頻繁な使用
4.2 複合的な名詞句の使用
4.3 数珠つなぎ複合文の使用
5. おわりに

第10章 申し出表現の歴史的変遷
―授受表現の運用史として
森勇太   
1. はじめに
2. 日本語の授受表現
2.1 本動詞の体系と類型論的特徴
2.2 補助動詞の体系とその類型論的特徴
2.3 授受表現使用の語用論的特徴
3. 与益表現の運用の歴史的変遷
3.1 “申し出表現”の定義
3.2 調査の概要
3.3 調査結果
4. 歴史的変化の要因
4.1 利益に関する原則の変化
4.2 利益の表明と謙譲語の変化―受益者を高める用法の成立
4.3 日本語の授受表現の運用史
4.4 丁寧さの原則の変異
5. まとめ

第11章 『源氏物語』に現れた手紙
―求愛の和歌の贈答を中心に
高木和子   
1. はじめに
2. 結婚に到る男女間の手紙や和歌のやり取り
2.1 求愛のプロセス―『蜻蛉日記』『落窪物語』の場合
2.2 求愛を断る意思表示―『竹取物語』の場合
3. 『源氏物語』における求愛の和歌と応じ方
3.1 当人が応じない事例(1)―紫の上の場合
3.2 身分差のある関係における代作の是非―玉鬘・明石の君の場合
3.3 当人が応じない事例(2)―末摘花の場合
4. 和歌は男から詠みかけるものか
4.1 女から詠む歌(1)―藤壺の場合
4.2 女から詠む歌(2)―六条御息所の場合
4.3 男の働きかけに応じる女の贈歌―六条御息所・夕顔の場合
4.4 手習から贈歌へ―紫の上・明石の君の場合
4.5 女の積極性と身の程意識―花散里・源典侍・朧月夜の場合
5. おわりに


執筆者紹介




■著者紹介
【編者】
金水敏 (きんすい さとし) 大阪大学大学院文学研究科教授
(主な著書、編著書)『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003年)、『シリーズ日本語史3 文法史』(共著、岩波書店、2011年)

高田博行 (たかだ ひろゆき) 学習院大学文学部教授
(主な著書、編著書)『歴史語用論入門―過去のコミュニケーションを復元する』(共編著、大修館書店、2011年)、『ヒトラー演説』(中公新書、2014年)

椎名美智  (しいな みち) 法政大学文学部英文学科教授
(主な編著書、論文)『歴史語用論入門―過去のコミュニケーションを復元する』(共編著、大修館書店、2011年)、“How Playwrights Construct their Dramatic World: A Corpus-Based Study of Vocatives in Early Modern English Comedies”, The Writer’s Craft, the Culture’s Technology(Rodopi、 2005年) など。

【執筆者】 小野寺典子、福元広二、森山由紀子、椎名美智、高田博行、諸星美智直、片見彰夫、中安美奈子、芹澤円、森勇太、高木和子



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