「変態」という文化—近代日本の〈小さな革命〉 竹内瑞穂 著  ひつじ書房 「変態」という文化—近代日本の〈小さな革命〉 竹内瑞穂著 ひつじ書房
2014年3月

シリーズ文化研究 3

「変態」という文化—近代日本の〈小さな革命〉

竹内瑞穂 著

A5判上製 324頁 定価5600円+税

ISBN 978-4-89476-688-4

ひつじ書房

Queer Rebels: A History of HENTAI Culture in Modern Japan

TAKEUCHI Mizuho


*内容紹介*

激動する政治経済と華やかなモダン文化に彩られた日本の1920〜30年代は、奇妙にも「変態」で満ち溢れた時代でもあった。そこには「変態」を治そうと奮闘する者がいる一方で、我こそは「変態」であると声高に宣言する者もいた。本書は、当時の文学・心理学・映画・マスメディア等の多様な領域を「変態」という切り口で分析。それが日常世界を組み替える〈小さな革命〉を垣間見せるものとして〈消費〉されていたことを明らかにする。


*目次*


まえがき

序章 逸脱者と近代的権力
1 笑われる出歯亀
2 逸脱者と権力構造
3 「変態」概念を〈消費〉するということ
4 本書の構成

第I部 「変態」の生成と流動

第1章 変態性欲論と変態心理学—大正期「変態」概念の成立—
1 「変態」概念の源流と、二つの「変態」理論
2 「変態性欲」という概念
3 通俗的変態性欲論の恣意性
4 変態心理学の導入と展開
5 潜在意識論のラディカルさ
6 中村古峡の理論的矛盾
7 変態心理学と変態性欲論の帰結点

第2章 「変態」に懸ける—『変態心理』読者とそのモチベーション—
1 『変態心理』と読者たち
2 寄稿読者たちのモチベーション
3 変態心理学による「医学」への裏口的参入
4 〈霊的なもの〉と科学の共存
5 地方知識人としての寄稿読者
6 ポスト〈講義録の時代〉と変態心理学

第3章 「民衆」からの〈逸脱〉—「変態」概念および天才論の流行と文壇人—
1 アンケート「私の変態心理」
2 通俗化する「変態」概念
3 「天才」としての「変態」
4 「民衆」と対峙する「文壇人」たち
5 自己卓越化のための「変態」

第4章 「変態」の「流動」—谷崎潤一郎「鮫人」の逸脱者たち—
1 「変態」概念と谷崎潤一郎
2 「鮫人」とその逸脱者たち
3 〈本質の視覚化〉と身体のパーツ化
4 個人識別法という管理技術
5 変態性欲論からの逸脱
6 「変態」と「流動」する都市イメージ
7 「とんちんかん」への欲望

第II部 「変態」と呼ばれた者たちの生

第5章 共同体への憧憬—小山内薫の芸術観と大本教信仰—
1 「変態」としての大本教
2 小山内薫の大本教映画
3 大正期大本教のマスメディア宣教
4 小山内の反〈主流〉的大本教論
5 芸術と民衆のジレンマ
6 調和する共同体へのロマンティシズム

第6章 欲望される〈天才〉—「変態」概念による批評と有島武郎の〈偶像〉化—
1 有島の情死をめぐる言説空間 2 文学共同体の情死評価
3 地方保守層vs 青年知識人
4 「変態」理論の転倒
5 〈青年〉をめぐるヘゲモニー闘争と〈偶像〉化する有島

第7章 主体化を希求する〈逸脱者〉たち—男性同性愛者たちの雑誌投書—
1 性的マイノリティを語るために
2 変態性欲論の被害者?
3 同性愛者の〈生〉をめぐる投書
4 同性愛言説をめぐるパラダイム
5 同性愛者の連帯への希求
6 想像的共同体の可能性と限界

第III部 「変態」の〈商品〉化—エロ・グロ・ナンセンスの時代—

第8章 エログロへの〈転向〉—梅原北明の抵抗と戦術—
1 エログロの帝王・梅原北明
2 『殺人会社』の立ち位置
3 模擬実験装置としての『殺人会社』
4 「変態」の〈商品〉的価値
5 差異の商品化
6 現状のなかでの抵抗

第9章 左翼・エログロ・ジャーナリズム—『新愛知』におけるプロレタリア文学評論とモダニズム—
1 近代都市・名古屋と『新愛知』
2 『新愛知』の文芸評論欄
3 文学評論欄と左傾編集者たち
4 先端性としてのエロ・グロ・ナンセンスとプロレタリア文学評論
5 〈未完〉のモダン都市・名古屋

第10章 プロレタリア文学の〈臨界〉へ—井東憲『上海夜話』におけるプロレタリア探偵小説の試み—
1 プロレタリア作家・井東憲
2 近代民族国家システムからの逸脱者たち
3 奪還/動員すべき「大衆」
4 プロレタリア探偵小説の〈失敗〉
5 脱臼される〈大きな物語〉

終章 〈逸脱〉・共同体・アイデンティティ
1 『変態心理』の終焉
2 『変態心理』読者たちの行方
3 北明の「グロテスク」な抵抗
4 「変態」的アイデンティティと共同体
5 〈祭り〉のあと


あとがき
初出一覧
索引

*執筆者紹介*
竹内瑞穂(たけうち みずほ)
1981年静岡県生まれ。2009年名古屋大学大学院文学研究科日本文化学専攻博士後期課程満期退学。博士(文学)。現在、愛知淑徳大学文学部助教。

ご注文は、最寄りの書店さんでお願いします。
お店に在庫が無くても、お取り寄せができます。
書店が最寄りにない場合は、オンライン書店でご注文ください。

 

 



お急ぎの場合は、小社あてにご注文いただくこともできます。
郵便番号、ご住所、お名前、お電話番号をメールか、FAXでお知らせください。
新刊案内へ
ひつじ書房ホームページトップへ