ひつじ書房 明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究 府川源一郎著 明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究 リテラシー形成メディアの教育文化史 府川源一郎著
2014年2月刊行

明治初等国語教科書と子ども読み物に関する研究 リテラシー形成メディアの教育文化史

府川源一郎著

B5判上製 1220頁 定価19,000円+税

ISBN978-4-89476-662-4

ひつじ書房



明治期の子どもたちは、どのようにリテラシーを身につけたのか。そのかぎの一つは、明治期のベストセラーである『小学読本』にある。本書は、「読本=国語教科書」をはじめとして、子ども読み物や挿絵、少年雑誌などを「リテラシー形成メディア」と捉え、それらの相互関係を数多くの新資料を駆使して解明した画期的成果である。明治初年の子ども向け翻訳啓蒙書、小学校用の読本、修身教科書と修身読み物などが取り上げられており、教科書研究として教育史研究の進展に寄与するだけではなく、その影響は、日本語史研究、文学史研究、文化史研究にも及ぶだろう。

目次

はじめに

一、本研究の範囲と目的
二、先行研究と本研究との関わり
 (1)「国語教科書」の研究
 (2)明治期の子どもの読み物の研究
 (3)研究の方法と研究対象の現状
三、本研究の構成と各部における「問題の所在」

第一部 明治初期翻訳啓蒙書と子ども読み物

第一章 出発点としての翻訳啓蒙書
一、明治初期の「啓蒙書」の中の読み物
 (1)近代教科書の出発点
 (2)翻訳啓蒙書の文章・文体
 (3)近代日本児童文学の出発点

第二章 翻訳啓蒙書と英語教科書 その一
一、明治初期に日本に導入された英語教科書
 (1)明治初期に日本に導入された英語教科書概観
二、英語読本(リードル)と子ども読み物1 Sanders’ Union ReaderThe National Reader
 (1)Sanders’ Union Reader の翻訳書
 (2)The National Reader の翻訳書
三、英語読本(リードル)と子ども読み物2 Sargent’s Standard Reader
 (1)Sargent’s Standard Reader の翻訳書
 (2)鳥山啓の『さあぜんとものがたり』の先進性
 (3)鳥山啓の仕事とその位置

第三章 翻訳啓蒙書と英語教科書 その二
一、英語読本(リードル)と子ども読み物3 様々な英語読本から
 (1)福沢英之助の関係した翻訳啓蒙書
 (2)リーダーと関わりの深いその他の翻訳啓蒙書

第四章 翻訳啓蒙書と修身読み物
一、欧米の修身書と子ども読み物
 (1)欧米の修身書などからの翻訳啓蒙書
 (2)その他の翻訳啓蒙書

第五章 子ども向け翻訳啓蒙書の意義
一、子ども向け翻訳啓蒙書の意義とその限界
 (1)子ども向け翻訳啓蒙書の位置
 (2)子ども向け翻訳啓蒙書の意義


第二部 明治初期初等国語教科書と子ども読み物

第一章 『小学読本』に先行・併行した国語関係教科書群
一、福沢諭吉の関係した国語教科書など
 (1)福沢諭吉の「子ども向け翻訳啓蒙書」
 (2)福沢諭吉の「習字」の教科書
 (3)『文字之教』の実験性
二、古川正雄の関係した国語教科書など
 (1)古川正雄の仕事
 (2)古川正雄の『絵入 智慧ノ環』の構成
 (3)『絵入 智慧ノ環』の内容の検討
三、松川半山の関係した国語教科書など
 (1)明治期の松川半山の仕事
 (2)往来物や単語の手引き書
 (3)入門期国語教科書の解説書

第二章 『小学読本』の時代
一、文部省・師範学校による小学校用教科書の編集
 (1)師範学校教科書と『小学読本』
二、「子ども向け翻訳啓蒙書」と『小学読本』
 (1)ウィルソンリーダーの翻訳の比較検討
 (2)対話表現の意識的な導入
三、『小学読本』の冒頭教材の意味——その図像的考察
 (1)文明開化を象徴する冒頭教材
 (2)文明開化路線への反発
四、普及する種々の『小学読本』
 (1)様々な形態の『小学読本』

第三章 各地域における「小学読本」の享受の様相
一、「小学読本」享受の様相
 (1)「学制」から「自由教育令」へ
 (2)三種類の「小学読本」の特徴
二、各地の「小学教則」の中の「小学読本」

第四章 各地域における小学初等読本の作製
一、地域における言語教科書概観
 (1)各地域で作製した地域版教科書
二、在来の教科書と連続性のある教科書類
 (1)『単語篇』に類似した地域言語教科書
 (2)「往来物」の継承
三、地域で「小学読本」を組み変えた教科書
 (1)『滋賀県管内 小学読本』
四、地域の単独オリジナル「読本」
 (1)熊本県の『童蒙読本』
 (2)和歌山県の『初学入門』など
五、栃木県のオリジナル「読本」
六、明治一〇年代後半の地域作製小学読本


第三部・第四部・第五部の前に—— 明治検定期読本の概観

第三部 明治検定前期初等国語教科書と子ども読み物

第一章 金港堂の国語教科書戦略
一、国語教科書への金港堂の進出
 (1)教科書出版における金港堂の位置
 (2)久松義典と金港堂
二、展開する金港堂の「小学読本」
 (1)『小学読本 初等科』
 (2)若林虎三郎の『小学読本』
 (3)日下部三之介の『小学読本』
三、躍進する金港堂の「小学読本」
 (1)新保磐次の『日本読本』
 (2)『日本読本』の戦略
 (3)『幼学読本』との対照

第二章 文部省作製国語教科書の展開
一、文部省編集局作製の『読書入門』の位置とその特色
 (1)「小学校令」の規定
 (2)『読書入門』の内容
 (3)『読書入門』の挿画と掛図をめぐって
二、『尋常小学読本』巻一の検討
 (1)巻一の教材の検討
 (2)巻一の子どもの生活に取材した教材
 (3)巻一のフィクション(読み物)教材
三、『尋常小学読本』巻二から巻七までの読み物教材
 (1)巻二から巻七までの読み物教材——外国の作品
 (2)巻二から巻七までの読み物教材——日本の作品
四、文部省による『尋常小学読本』普及戦略
五、文部省による二系統の言語教科書

第三章 特色ある明治検定前期民間読本と子ども読み物の展開
一、井上蘇吉の『小学読本』
二、井田秀生の『国民読本』
三、高橋熊太郎の『普通読本』
四、辻敬之・西村正三郎の『尋常小学 読本』
五、塚原苔園の『新体 読方書』
六、下田歌子の『国文 小学読本』

第四章 明治検定前期地域作製検定読本の諸相
一、教科書検定実施前後の地域作製読本
二、『富山県第二部学務課編集 小学読本』
三、山梨・三重などの地域作製読本
 (1)山梨の『尋常読本』(小松忠之輔)
 (2)三重の『改正 尋常小学読本』(山名?作)
四、大阪の尋常小学読本類
 (1)北条亮の『第一—第四読本』
 (2)島崎友輔の『初学第○読本』
 (3)曽我部信雄の『小学尋常科読本』


第四部 明治検定中期初等国語教科書と子ども読み物

第一章 明治検定中期国語読本の諸相と子ども読み物の展開
一、山縣悌三郎の『小学国文読本』
二、今泉定介・須永和三郎の『尋常小学 読書教本』
三、伊沢修二と民間読本
 (1)大矢透著・伊沢修二閲『大東読本』など
 (2)大矢透著『大日本読本 尋常小学科』

第二章 地域作製国語読本のゆくえ
一、浅尾重敏編『小学 尋常読本』
二、石川・山梨などの地域作製読本
三、『北海道用 尋常小学読本』と『沖縄県用 尋常小学読本』


第五部 明治検定後期初等国語教科書と子ども読み物

第一章 明治検定後期国語読本の諸相
一、検定後期民間読本の様相

第二章 坪内読本の構想とその継承
一、坪内読本の編纂の経緯
二、坪内読本の構成及びその内容
三、坪内読本、その享受の様相
四、坪内読本の影響

第三章 「統合主義国語教科書」の試みとその挫折
一、「教育上の統一」への動き
二、教科書編纂への模索
三、樋口勘次郎の教科書論
四、樋口勘次郎の教科書編集
五、樋口勘次郎編集の教科書の内容と特色
 (1)『小学 理科教科書』の検討
 (2)『国語教科書』の検討
 (3)修身教科書の検討


第六部 修身教育と子ども読み物

第一章 修身教育と修身教科書
一、修身教育の展開と口授法
二、口授法の可能性
三、修身教育における図像の位置

第二章 「修身読み物」の諸相
一、修身読み物の登場
二、「明治赤本」系統の修身噺
 (1)小型本(袖珍本)の検討
 (2)中型本の検討
三、「子供演説読み物」をめぐって

第三章 「修身教材集」の展開と子ども読み物
一、『修身童話』の内容とその意義
二、『修身童話』の評価と教室での取り扱い
三、佐々木吉三郎等の『修身訓話』の作製
四、国定教科書の登場と子ども読み物


研究の総括と残された課題
一、本研究の成果
二、研究の総括と残された課題
 (1)海外の言語教科書からの影響
 (2)日本語変遷史との関連
 (3)地域と中央の問題
 (4)総合伝達メディアとしての「読本」
 (5)「読むこと」から、「書くこと」へ
三、おわりに

参考図書
資料(表・年表・カラー図版)
索引



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