ひつじ書房 言語行為と調整理論 久保進著 言語行為と調整理論 久保進著
2014年2月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第110巻

言語行為と調整理論

久保進 著

A5判上製 496頁 定価8,200円+税

ISBN 978-4-89476-657-0

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

ひつじ書房

Speech Acts and The Theory of Regulation

Susumu Kubo



本書では、調整理論によって補強された新たな言語行為論を構築するとともに、会話の理論へのサールの懐疑的理由に対する反駁を通して、サールが会話の理論に対して求める「単独の発語内行為の理論と同程度の厳密さ」を備えた会話の理論を提案している。この会話の理論は、従来の言語行為論と異なり、情報伝達的会話のみならず調整的会話の構造や志向性との関係、そして、会話の流れをも説明することができる一般理論である。


目次

はじめに

第1章 序論 言語行為
1. はじめに
1.1 本書の目的と背景
1.2 本書の構成
2. オースティンの言語行為論
2.1 はじめに
2.2 事実確認的発話と遂行的発話
2.3 3 種類の言語行為
2.3.1 発語行為
2.3.2 発語内行為
2.3.3 発語媒介行為
2.4 上適切性
3. サールの理論とその発展系
3.1 はじめに
3.2 オースティン理論に対するサールの見解
3.2.1 発語行為をめぐって
3.2.2 命題行為をめぐって
3.2.3 発語内行為の分類をめぐって
3.3 構成的規則と成功条件
3.3.1 構成的規則
3.3.2 構成的規則と発話のコンテクスト
4. 非字義的発語内行為
4.1 非字義発語内行為と間接的言語行為
4.2 サールの第二義的発語内行為の取り扱いに対するダスカルの批判
4.2.1 ダスカルの批判
4.2.2 ダスカルのサール批判への筆者の反論
4.3 非字義的発語内行為と発話のコンテクスト
5. 会話の理論
5.1 はじめに
5.2 サールの見解の妥当性
5.2.1 会話の連鎖
5.2.2 会話の目的
5.3 バンダーベーケンの会話の理論
5.3.1 バンダーベーケンの会話の理論への挑戦と成功
5.3.2 バンダーベーケン理論の問題点
6. 本章のまとめ

第2章 調整と調整行為
1. はじめに
2. 調整
2.1 はじめに
2.2 調整と均衡化
2.3 自己調整
2.3.1 はじめに
2.3.2 自己調整の種類
3. 調整行為
3.1 はじめに
3.1.1 言語行為における調整行為の位置
3.1.2 自己調整行為の内在的特性
3.2 調整行為はなぜ考察されねばならないか
3.2.1  発語内行為の成功と充足条件が満たされても言語行為が充足されない場合
3.2.2  発語内行為の成功と充足条件が満たされないにもかかわらず調整行為の成功と充足の条件が満たされるために当該の言語行為が充足される場合
3.3 調整行為と発話のコンテクスト
3.3.1 はじめに
3.3.2 「逃げ口上」を求める発話のコンテクスト
3.3.3 「捨て台詞」を求める発話のコンテクスト
4. 交感的言語行為と調整
4.1 はじめに
4.2 別れの会話の事例分析
4.2.1 離縁(divorce)
4.2.2 勘当(disownment)
4.2.3 博徒の世界の勘当(renunciation)
4.3 交感的言語使用の「別れ」
4.3.1 (再会の見込みのない)惜別
4.3.2 (再会の見込みのある)惜別
4.3.3 (名残のない)自発的別れ
4.4 死別・絶体絶命・死地への旅立ち
4.4.1 死別
4.4.2 絶体絶命
4.4.3 死地への旅立ち
4.5 本節のまとめ
5. 本章のまとめ

第3章 合致と調整の方向
1. はじめに
2. 発話対
3. 合致の方向の理論
3.1 はじめに
3.2 心と世界の間の対応関係
3.2.1 はじめに
3.2.2 心から世界への合致
3.2.3 世界から心への合致
3.2.4 (心と世界の間の)二重の合致
3.2.5 (心と世界の間の)空の合致
3.3 言葉と心の間の対応関係
3.3.1 言葉から心への合致
3.3.2 心から言葉への合致
3.3.3 言葉と心の間の二重の合致
3.3.4 言葉と心の間の空の合致
3.4 言葉と世界と心の合致モデル 暗喩の分析
3.4.1 サールの暗喩観
3.4.2 バンダーベーケンの分析
3.4.3 暗喩のより一般的な説明を求めて
3.4.4 様々な暗喩行為
3.5 心と心の対応関係
4. 合致と調整の関係
4.1 複数の会話参与者が志向対象・志向状態を共有する場合
4.2 複数の会話参与者が志向対象・志向状態を共有しない場合
4.3 歩み寄る心と心
5. 対人調整
5.1 はじめに
5.2 対人調整における調整方向の基本タイプ
5.2.1 はじめに
5.2.2 先行話者から後続話者への調整方向
5.2.3 後続話者から先行話者への調整方向
5.3 発話対における隣接発話の調整方向の連鎖のタイプ
5.3.1 はじめに
5.3.2 譲歩型
5.3.3 強要型
5.3.4 融合型
5.3.5 分離型
5.4 会話の流れと会話充足の公準
6. 一般化された会話の公準と間接的調整方向
6.1 はじめに
6.2 間接的調整方向
6.3 一般化された公準の逆用と間接的調整方向
6.3.1 はじめに
6.3.2 修辞的疑問を用いた会話における間接的調整方向
6.3.3 緩叙法を用いた会話における間接的調整方向
6.3.4 誇張法を用いた会話における間接的調整方向
6.3.5 直喩を用いた会話における間接的調整方向
7. この章のまとめ

第4章 会話の成功条件と充足条件と調整
1. はじめに
2. 会話の成功条件
2.1 会話の成功条件の基本問題
2.1.1 達成の様式の基本問題
2.1.2 話題条件の基本問題
2.1.3 背景条件の基本問題
2.1.4 誠実条件の基本問題
2.2 会話構造の内在的制約
2.3 発話対の成功条件への外在的制約
3. 会話における発話の充足条件
3.1 発語内行為の充足に関わる内在的制約と外在的制約
3.2 過度な充足と発話対の内在的制約
3.3 外在的制約と充足条件
3.4 会話の道筋の充足条件
4. 会話が充足されるための最小条件
4.1 発語内行為の充足条件は満たされないが対人調整行為の充足条件が満たされる場合
4.2 発語内行為の充足条件は満たされるのに対人調整行為の充足条件が満たされない場合
4.3 発語内行為と対人調整行為の両方の充足条件が満たされない場合
5. 本章のまとめ


第5章 志向性と調整
1. はじめに
2. 志向性
3. 志向性の前景化と背景化
3.1 はじめに
3.2 志向性の前景化
3.3 志向性の背景化
3.3.1 一人称を二人称で代用
3.3.2 一人称から三人称へ
3.3.3 It の代替指示と志向性
3.3.4 まとめ
4. 共有志向性とWe のパラダイム
4.1 はじめに
4.2 共有志向性
4.3 包括的We と調整
4.3.1 はじめに
4.3.2 包括的We の発話時点で共有志向性が成立しない場合
4.3.3 包括的We の使用が阻まれる場合
4.3.4 交感的言語使用における包括的We
4.3.5 包括的We と調整的志向性
4.4 排他的We と調整
4.4.1 はじめに
4.4.2 調整された排他的We
4.5 まとめ
5. (T)HERE X GOのパラダイム
5.1 HERE X GO
5.1.1 HERE WE GO
5.1.2 HERE YOU GO
5.2 THERE X GO
5.2.1 THERE WE GO
5.2.2 THERE YOU GO
6. 本章のまとめ

第6章 「世間」という会話の背景における調整行為「遠慮」
1. はじめに
1.1 会話の背景
1.2 日本人の基底感情
2. 「世間」という枠の中の人間関係
2.1 「世間」
2.2 ヨコの関係(「ミウチ」「ヨソサマ」「ヨソモノ」)
3. 作業仮説
3.1 ミウチ関係
3.2 ヨソサマ関係
3.3 ヨソモノ関係
4. 達成の様式〔対人関係〕の検証
4.1 ミウチ関係にある会話参与者間で「遠慮」が遂行されることがあるか?
4.1.1 一般化された会話の公準の逆用
4.1.2 ミウチ関係からヨソサマ関係への降格
4.1.3 上位規範に抵触する場合の「遠慮」の遂行
4.2 ヨソサマ関係にある会話参与者間で「遠慮」が遂行されないことがあるか?
4.2.1 ヨソサマ関係からミウチへの昇格
4.2.2 仲間はずれ・爪弾き
4.2.3 親疎度の変更
4.3 ヨソモノ関係にある会話参与者間で「遠慮」は遂行されないのか?
4.3.1 隣人への仲間入り
4.3.2 偶然の出会い
4.3.3 その場限りの出会い
4.4 「遠慮」が関わらない人間関係間の移行
4.4.1 はじめに
4.4.2 ミウチ関係からヨソモノ関係への移行
4.4.3 ヨソモノ関係からミウチ関係への移行
5. 本章のまとめ

第7章 まとめと展望
1. まとめ
2. 展望
2.1 会話目的の累積的充足
2.2 失調の研究

参照文献
人名索引
事項索引


著者紹介
久保進(くぼ すすむ)松山大学教授。博士(言語文化)。〈主な著書〉The Semantics/Pragmatics Interface from Different Points of View(Elsevier Science、1999、共著)、Essays in Speech Act Theory(John Benjamins、2002、共編)、『認知科学辞典』(共立出版、2002、共著)、『発語内行為の意味のネットワーク』(晃洋書房、2002、編著・共著)、『応用言語学事典』(研究社、2003、共著)。



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