否定の博物誌 ローレンス R.ホーン著 河上誓作監訳 濱本秀樹・吉村あき子・加藤泰彦訳 否定の博物誌 ローレンス R.ホーン著 河上誓作監訳 濱本秀樹・吉村あき子・加藤泰彦訳
2018年7月刊行

言語学翻訳叢書 13

否定の博物誌

ローレンス R.ホーン著

河上誓作監訳 濱本秀樹・吉村あき子・加藤泰彦訳

装丁 大崎善治

A5判並製カバー装 860頁 定価8,800円+税

ISBN 978-4-89476-577-1

ひつじ書房
A Natural History of Negation
Laurence R. Horn

Japanese translation (The third version of NHN ) with Horn’s Postscript translated by Hideki Hamamoto, Akiko Yoshimura and Yasuhiko Kato under the supervision of Seisaku Kawakami


本書は、否定研究の第一人者Laurence R. Hornの大著A Natural History of Negation(2001, 第2版)の翻訳である。自然言語の「否定」に関する先行研究を詳細に検討の上独自の分析を提示したもので、まさに否定研究のバイブルである。Hornは今回の翻訳に際し、本書を「第3版」と見なし「第3版の終章」を新たに書き加え、最新の否定研究の解説と文献を追加している。




【目次】

訳者まえがき
表記法解説
謝辞
序論
第2版への序文
補遺 NHNの第1版への書評・書評論文・新刊紹介

第1章 古典論理学における否定と対当
1.1 否定とアリストテレスの遺産
1.1.1 アリストテレスの足跡
1.1.2 ストア派の「対当」についての考え方
1.1.3 存在仮定と対当の方形
1.1.4 否定命題とは何か
1.1.5 否定とアリストテレスの遺産:回顧と展望
1.2 否定判断のパラドックス:否定とその不一致
1.2.1 否定の排除
1.2.2 肯定の強調
1.3 否定 西・東
1.3.1 矛盾律と「東洋の精神」
1.3.2 否定と西洋の精神についての短簡

第2章 否定、前提、排中律
2.1 未来偶然性:海戦と小ぜりあい
2.2 空の単称名辞:ソクラテスからフランス王まで
2.3 範疇誤り:無意味の意味
2.4  前提論理と非前提論理における外部否定:古いジレンマに対する新しい解決法
2.4.1 多値論理における否定
2.4.2 弱い否定と強い否定
2.5 慣習的含意と矛盾否定

第3章 有標性と否定の心理
3.1 有標性と否定の獲得
3.2 有標性と否定の処理
3.2.1 否定の心理言語学における論争点と問題点
3.3 有標性と非対称性の論題
3.3.1 二元的推論モデルにおける否定の非情報性

第4章 否定と量化
4.1 尺度叙述と小反対対当Ⅰ
4.1.1 陽気な陽気な小反対ちゃん、貴方の論理はどうなるの?
4.2 否定と三極構造
4.3 輝くものすべて:全称量化子と否定の作用域
4.4 尺度叙述と小反対対当II
4.5 Oの物語:量と否定編入

第5章 反対否定と矛盾否定の語用論
5.1 接辞否定
5.1.1 反対(contrariety)と評価的否定性:iN- とun- の場合
5.1.2 その他の接辞、その他の問題
5.1.3 無意味ではない問題:二重否定の論理
5.2 否定辞繰り上げと反対関係
5.3 反対と控え目表現:修辞から規則へ
5.3.1 アイロニー・慣習化・短絡的推論

第6章 メタ言語否定
6.1 否定の「多義性」について
6.2 メタ言語否定と語用論的多義性
6.2.1 語用論的多義性
6.2.2 真理性 対 主張性
6.2.3 その他のメタ言語演算子について
6.3 メタ言語否定と会話の含意
6.3.1 尺度含意の例
6.3.2 Qに基づく含意 対 Rに基づく含意
6.4 メタ言語否定の3つの診断法
6.4.1 編入された否定とメタ言語否定
6.4.2 判断要因としての極性
6.4.3  否定と2つのbut
6.5 メタ言語否定への他のアプローチ
6.5.1 真理値、真そして否定
6.5.2 否定単一主義者と否定多義論者再考
6.5.3 メタ言語否定と ‘négation métalinguistique’
6.5.4 ロンドンでの否定の扱い
6.6 メタ言語否定と表層構造

第7章 否定の形式と機能
7.1 否定経験の多様性:記述否定のタイポロジー
7.2  モンタギュー文法家としてのアリストテレス:拡大名辞論理学における否定
7.2.1 ソマーズと名辞論理学の限界
7.3 作用域、前提、否定の文法
7.3.1  拡大名辞論理学の否定の表示法:ギャズダー、プラム、サッグ、アリストテレスの場合
7.3.2 作用域と前提:ラッセル、モンタギュー、そして私
7.3.3 Every とSome:違うものには違う作用域を
7.3.4 作用域と表示、意味論と語用論:最終的展望

第3版(日本語版)への終章
1  余剰否定(hypernegation)と無形否定(hyponegation)に関する考察
2 メタ言語否定、非字義性、自閉症スペクトラム
3 否定と極性:新たな千年紀への文献解題

補遺1 排中律および多値論理のいわゆる不整合について
補遺2 内在的否定再考
第2版(NHN2)文献目録
第2版(NHN2)補充文献目録
日本語版(NHN3)補充文献目録
終章への補遺

人名索引
事項索引
著者紹介
監訳者・訳者紹介



【著者】
ローレンス R. ホーン(Laurence R. Horn)
1945年生まれ。イェール大学言語学部のProfessor Emeritus(名誉教授)。言語学のPh.D(UCLA 1972)。専門は語用論と意味論。特に自然言語の否定の研究や語用論における尺度含意の理論で知られる。
主要著書:A Natural History of Negation(University of Chicago Press, 1989, CSLIより2001年再版)、編著:The Expression of Negation(Mouton de Gruyter, 2010)、共編:Negation and Polarity: Syntactic and Semantic Perspectives(Yasuhiko Katoと共編。Oxford University Press, 2000)、he Handbook of Pragmatics(Gregory Wardと共編。Blackwell, 2004)、Explorations in Pragmatics: Linguistic, Cognitive, and Intercultural Aspects(Istvan Kecskesと共編。Mouton de Gruyter, 2007)他。論文多数。

【監訳者】
河上誓作(かわかみ せいさく)
大阪大学・神戸女子大学名誉教授。
モノグラフ:「文の意味に関する基礎的研究」(大阪大学文学部紀要、第24巻、1984)、編著:『認知言語学の基礎』(研究社出版、1996)、翻訳:ジェフリー・N.リーチ著『語用論』(池上嘉彦と共訳。紀伊國屋書店、1987)など。
【訳者】
濱本秀樹(はまもと ひでき)
近畿大学国際学部教授。
著書:『多文化世界の意味論』(松柏社、2001)、論文: “Investigating a Japanese Authenticity-Blurring Mechanism in Discourse” (Asian Culture and History vol.9, no.1, 2017)など。

吉村あき子(よしむら あきこ)
奈良女子大学研究院人文科学系教授。
著書:『否定極性現象』(英宝社、1999、第33回市河賞受賞)、論文:“Descriptive/ Metalinguistic Dichotomy?: Toward A New Taxonomy of Negation” (Journal of Pragmatics57, 2013)、 “A Cognitive Constraint on Negative Polarity Phenomena” (BLS 20, 1994)など。

加藤泰彦(かとう やすひこ) 上智大学名誉教授。
著書: Negative Sentences in Japanese(Sophia Linguistica 19, Monograph 1985)、編著:Negation and Polarity: Syntactic and Semantic Perspectives(Laurence Hornと共編、Oxford University Press, 2000)など。

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