講座ドイツ言語学 第1巻 岡本順治・吉田光演 編 ひつじ書房 講座ドイツ言語学 第1巻 岡本順治・吉田光演 編
2013年4月

講座ドイツ言語学 第1巻

ドイツ語の文法論


岡本順治・吉田光演 編

A5判上製 定価4,000円+税

ISBN978-4-89476-571-9

ひつじ書房



「講座ドイツ言語学」の紹介
ドイツ語に関する言語学的研究は、そのプレゼンスをわが国の言語学の風景のなかに今まであまり示してこなかったように思われる。「ドイツ語研究者よ、奮起せよ」という励ましの声が聞こえてくる。その風景のなかに、ドイツ語を対象とした言語研究の最新成果を積極的に、しかもある程度まとまった形にして発信しようというのが、今回企画した『講座ドイツ言語学』のねらいである。ドイツ語という言語の文法を共時的・通時的に分析したとき、どのような個別性と普遍性が見えてくるであろうか。また、ドイツ語は、時々刻々と変容する現代の社会・コミュニティ・メディアと言語使用者の関わりにおいてどのような相貌を示すのであろうか。さらにまた、とりわけ活版印刷というメディアの大転換期以降、ドイツ語はどのような歴史的進展を遂げてきたのであろうか。本『講座』では、このような問いかけに対する答えを、ドイツ語の知識がない読者にも理解できるように、丁寧にわかりやすく説明・論述する。したがって、本『講座』は単なる学術的論文集ではなく、学術的入門書という性格を持つものである。執筆陣には、ドイツ語学における精力的な研究で知られる言語学者たちをそろえた。

  「講座ドイツ言語学」全3巻責任編集 
   高田博行・岡本順治・渡辺学(学習院大学)


★既刊
『講座ドイツ言語学 第2巻 ドイツ語の歴史論』(高田博行・新田春夫編):2013年2月
★続刊
『講座ドイツ言語学 第3巻 ドイツ語の社会語用論』(渡辺学・山下仁編):2014年2月


第2巻の詳細
ドイツ語文法の中でも特徴的なトピックをとりあげ、それらがどのように相互に関係しあっているかを示せるように心がける。共時的観点から、他言語との比較だけでなく、意味論や語用論との関連も重視する。取りあげるトピックは、動詞の位置、スクランブリング、中間構文、結果構文、受動態と使役、時制・アスペクト・モダリティ、自由な与格、名詞句の統語論とその意味、複合動詞、情報構造、心態詞である。執筆者は、大矢俊明、岡本順治、田中愼、田中雅敏、藤縄康弘、吉田光演の6名。



【目次】

「講座ドイツ言語学」の刊行に寄せて
まえがき
略語表

第1章 ドイツ語の文法論 総論
1. 文法について
1.1 「ドイツ語の文法論」が目指すもの
1.2 文法=「メタ言語を使った仮説」
1.3 データと理論
1.4 文法の全体像
2. 本書の構成要素
2.1 ドイツ語個別文法
2.2 生成文法
2.3 機能主義、認知言語学
2.4 形式意味論
3. 押さえておきたい基本概念
3.1 カテゴリー(範疇)
3.2 有標と無標
3.3 X バー(X-bar)構造
3.4 機能範疇
3.5 外延と内包
3.6 意味役割
3.7 語彙分解
4. まとめ

第2章 動詞の位置
1. はじめに
2. 枠構造と動詞の位置
2.1 枠構造における不定詞の位置
2.2 枠構造における定動詞の位置
3. 定動詞移動の動機づけ
3.1 定動詞前置の手続き
3.2 定動詞前置と前域の活性化
4. 定動詞位置をめぐるさまざまな配語法
5. まとめ

第3章 ドイツ語の語順変動(かきまぜ)
1. はじめに
2. 基本語順(無標語順)とは?
2.1 主格―与格―対格語順
2.2 「主格―与格―対格」語順の例外(他の無標語順)
3. 無標語順のバリエーション? 動詞句の基底構造
3.1 Engel( 1988)の「基本語順」と語順のずれ
3.2 動詞句(VP)の基底構造
4. 語順変動の分析
4.1 機能領域への代名詞の義務的移動
4.2 随意的移動としてのかきまぜ
4.3 かきまぜの意味論的・語用論的要因
5. まとめ

第4章 中間構文と結果構文
1. はじめに
2. 中間構文
2.1 再帰代名詞の働き
2.2 総称性と動詞の制約
3. 結果構文
3.1 Kratzer( 2005)の主張
3.2 動詞の種類
4. まとめ

第5章 受動態と使役
1. はじめに
2. ドイツ語の受動態 概観
2.1 werden 受動
2.2 sein 受動
2.3 bekommen 受動
3. 格上げと非人称化
3.1 非対格仮説
3.2 人称受動と非人称受動
3.3 非人称受動とアスペクト
4. 使役
5. まとめ

第6章 アスペクト、時制、モダリティ
1. 動詞のカテゴリー
1.1 動詞のカテゴリーの機能―「出来事」の具体化
1.2 動詞のカテゴリーの普遍性
1.3 カテゴリー間の関連性
2. 時制
2.1 「過去」と「現在完了」
2.2 「未来」
3. モダリティ
3.1 法
3.2 話法の助動詞
4. アスペクト
4.1 アスペクトとAktionsart(動作様態)
4.2 アスペクト―視点を設定するカテゴリー
5. 関連性1 カテゴリー間の相互乗り入れ
5.1 時制とモダリティ
5.2 時制とアスペクト
5.3 アスペクトとモダリティ1―未来「時制」と動詞のアスペクト
5.4 アスペクトとモダリティ2―アスペクトと話法の助動詞
6. まとめ

第7章 自由な与格
1. はじめに
2. 自由な与格 概観
2.1 所有の与格
2.2 利益・不利益の与格
2.3 判断の与格
2.4 関心の与格
2.5 分類のための分類を超えて
3. 意味構造―項構造―統語構造
4. 所有関数の追加と自由な与格
5. 自由な与格vs. 間接受動
6. まとめ

第8章  ドイツ語の名詞表現の統語論と意味論
1. はじめに
2. 名詞句・限定詞句の統語構造
3. 限定詞句における冠詞の意味、名詞の意味
4. 固有名詞、不可算名詞、複数形の構造と意味
4.1 固有名詞、不可算名詞、複数名詞の構造
4.2 可算名詞、不可算名詞、複数名詞の意味
4.3 不可算名詞と複数名詞の意味
5. 作用域 数量詞句の意味解釈
6. 定冠詞の他の働き
7. まとめ

第9章 複合動詞
1. はじめに
2. 概観
2.1 動詞の拡張の意義
2.2 接頭辞動詞と不変化詞動詞の違い
2.3 不変化詞動詞と正書法
2.4 不変化詞動詞に課せられた制約
2.5 不変化詞動詞と接頭辞動詞間の揺れ
2.6 不変化詞と接頭辞が同形の場合
3. 不変化詞動詞の文法構造
3.1 複合動詞の主要部はどこか
3.2 不変化詞動詞の統語論
4. 項構造の変化
5. 不変化詞動詞の結果構文
6. まとめ

第10 章 情報構造
1. 情報を伝達するしくみ
2. 機能的文構成
2.1 焦点―背景
2.2 トピック―コメント
3. 情報構造を表示するさまざまな仕組み
3.1 語順
3.2 情報構造を表す語彙的手段
3.3 構文的手段
3.4 プロソディ(韻律)の働き
4. まとめ

第11章 心態詞
1. はじめに
2. 用語の定義
2.1 概観
2.2 同音語の存在
2.3 強勢アクセントを持たないこと
2.4 文タイプとの関連性
2.5 前域に現れないこと
3. 心態詞の表す意味
3.1 話法的意味
3.2 状況と共有知識
4. プロソディ
5. 残された問題
6. まとめ

参考文献
索引
執筆者紹介







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